最初はできないと思っていたーー小池徹平が語る、3度目の『キンキーブーツ』

#自分だけの"推し"の見つけかた

毎日生きるのに一生懸命な私たちを癒やしてくれるのは、大好きなあの芸能人。マイナビウーマン編集部・ライターが今気になる「推しメン」にスポットライトを当ててインタビュー。彼らのかっこいい姿を写真と共にお届けします。

取材・文:瑞姫
撮影:佐々木康太
編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部

子犬のような瞳の甘いルックスが印象的な小池徹平さん。15歳の時に「第14回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞し、芸能界デビューを果たして以来、音楽活動はもちろん、「ごくせん」「ドラゴン桜」「医龍-Team Medical Dragon-」など、大ヒットドラマに立て続けに出演。存在感のある演技で多くの人を魅了した。

デビュー10周年を迎える頃には活動の幅を舞台にも広げ、2016年には舞台『1789-バスティーユの恋人たち-』『キンキーブーツ』での演技力が評価され、第42回菊田一夫演劇賞・演劇賞受賞。

近年では、これまでの小池さんの可愛いらしい印象とリンクした、いわゆる“年下男子”や“お調子者キャラ”とは打って変わった「大恋愛~僕を忘れる君と」「奪い愛、夏」などでの“怪演”が注目を集めた。

そんな小池さんがこの秋、3度目の公演となる『キンキーブーツ』に挑む。2005年に公開された映画を基にした、人気ブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』。

イギリスの倒産寸前の靴製造工場の若きオーナーであるチャーリー・プライスと、ドラァグクイーンのローラがそれまで製造してきた紳士靴ではなく、ドラァグクイーン向けの特注靴の製造を計画し、共に友情を育みながら工場の経営を立て直そうと奮闘する物語。

日本では2016年に初公演が行われて以来、大きな話題となり、2019年に再演。今回は3回目の公演となり、小池さんはその全てでチャーリーを演じ続けている。

2016年、2019年に続きチャーリー・プライスを演じる小池さんは、今何を思うのかーー初演から6年経った今、小池さんに改めて『キンキーブーツ』という作品を演じた上での自身の変化、そして今回の再演への思いについて聞いたところ、素直な胸の内を揺るがない作品への思いと共に明かしてくれた。

『キンキーブーツ』再演への決意

ーー大好評を得ているブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』ですが、再々演が決まった時の気持ちを教えてください。

決まった時というより、再々演を決断するまでの気持ちの整理に、正直時間がかかりました。

初演からずっとお世話になっているプロデューサーから『キンキーブーツ』再々演のお話をいただいた時にも、「今の状態では難しいかも知れないです」というお話をしました。

ーーそこから、やることを決断するまでにはどういった気持ちの変化があったのでしょうか。

一対一で、そのプロデューサーと何度も話し合いを重ねました。それこそ、『キンキーブーツ』の話はもちろんなのですが、ざっくばらんに色々なお話をしたんです。

そうやって話していくうちに、徐々にこの作品に対する思いだったり、日本カンパニーの『キンキーブーツ』を「このまま終わりにしていいのかな」という気持ちが生まれてきたりして、少しずつ前向きに考えるようになりました。

「やるのであれば、今のこのタイミングだと思っている」という、非常に熱い思いを話し合いの中で受け取ったことも大きかったですね。

ーーなるほど。様々な葛藤があった上での決断だったんですね。

そこから、どうやって『キンキーブーツ』を再演するか色々と考えました。まずは、すごく大事なローラ役について。

ローラ役を演じる人は新たにローラ役を作り込まなければいけないのですが、それがどれだけ大変な事かを、僕は(これまでの『キンキーブーツ』でローラを演じていた三浦)春馬の姿を見てきていたから知っています。

何より春馬が作り上げたローラは本当に最高のものだったから、それだけのことを絶対にやってのけるであろうという絶対的な信頼ができる人物でなければいけないし、圧倒的な演技力、そして華が必要でした。

あとは、僕自身に必ず起こるであろう心の葛藤などを、きちんと話し合える人。そういう意味でも、絶対的に信頼できる方じゃないとローラ役として接することが難しいと思っていたので、今回ローラ役が(城田)優に決まったことは、本当に心から嬉しいです。

ーー城田さんには決まった時に何と言葉をかけたのでしょうか。

「優で良かったよ」と。まず、やろうと思ってくれたことにすごく感謝をしていますし、オーディションを受けてくれたことにも、受かってくれたことにも感謝しています。

春馬は『キンキーブーツ』をたくさんの人に観てほしいと思っていたので、ここで終わらせるわけにはいかない。そういう春馬の思いも全部背負って、「優なら表現してくれる」と思いました。

やると決まってからはすごく楽しみですし、観に来てくださった皆さんに「最高の『キンキーブーツ』だった」と思ってもらえるようにしたいという気持ちです。

ーーそうやって再演、ローラ役が決まったんですね。

ただ、今までやってきた日本カンパニーのメンバーに対して、「僕はやるから、またやろうよ」とは、自分から言えなかったです。それぞれに色々な思いがあるだろうし、再演に出るかどうかはそれぞれがこの作品と向き合って、自分自身で乗り越えて決めることだと思っていたので……。

でも、みんな同じような気持ちで集まってくれたんですよ。それがすごく嬉しかったです。

ーー同じ気持ちというのは?

メンバーチェンジも多少はもちろんありますが、スケジュールが合わなくて出られなかったメンバーも、今回から新しく加わってくれたメンバーも、全員『キンキーブーツ』が大好きだということです。

僕自身、再演を決めた一番の理由は『キンキーブーツ』が大好きだったから。絶対3回目を大成功させて、「日本中の皆さんを最高にハッピーな気持ちにしよう」「最高の『キンキーブーツ』にするしかない」という強い思いがあって、みんな気持ちは前を向いて臨んでいます。

僕自身も年齢を重ねたことでスキルアップしている部分もあると思いますし、逆にできなくなったこともあると思うのですが、そこはちゃんと自分自身と向き合って、今できるベストを尽くして挑みたいと思っています。

“前回を超える”という表現は絶対にしたくない

ーー今回座長として3回目の『キンキーブーツ』になりますが“ここを大事にしたい”という部分があれば教えてください。

色々もちろんありますが、今回3回目をやるにあたっての一番大きな変化は、やはりローラ役が城田優になること。作品は演じる人が変わると雰囲気や印象が変わることもあると思うのですが、変わらないものとしては、『キンキーブーツ』を愛する気持ち、大切にする気持ちですね。それは絶対に忘れてはいけない大切なことだと思っています。

これまでの『キンキーブーツ』を作り上げたのは、初演、再演を作った日本カンパニーの力でもあるし、春馬の力でもある。だからこそ、春馬の思いは僕らが引き継いでいきたい。

だからこそ“前回を超える”という表現は絶対にしたくないと思っていて、「新しいカンパニーの『キンキーブーツ』も最高だよね」と言われる作品にしたいと思っています。

春馬に、新しいカンパニーの『キンキーブーツ』を“いいな”って悔しがられて、僕がそれに対して「どうだい、いいカンパニーだろう!」と言えるくらいのチームでやりたいなと思っています。

ーー3度目の公演となると、作品の理解が初演と変わってくると思うのですが、『キンキーブーツ』で小池さんが今一番好きなシーンを教えてください。

王道なところではあると思うのですが、僕は最後にみんながブーツを履いて踊る『Raise You Up(レイズ・ユー・アップ)』が一番好きです。

あの瞬間が『キンキーブーツ』の最高潮というか、本当に「ここって日本なのかな?」と錯覚するくらい、(初演・再演はコロナ禍ではなかったので)客席のみなさんが立ち上がってワーッと盛り上がって、ステージと一体化するようなエネルギーをすごく感じるシーンなんです。

10年くらい僕はミュージカルをやってきているんですが、それは『キンキーブーツ』でしか感じたことのない感覚で、ここまでハッピーなパワーに包まれる舞台は今までに無いなと感じます。

『キンキーブーツ』で得た“他人を受け入れることの大切さ”

ーー今回は3度目の公演となりますが、観客の皆さんに小池さん自身が特に注目していただきたいところはありますか?

これもやっぱりローラですね。この作品は “僕よりローラを見て!”という気持ちで演じているので……。

もちろんチャーリーがストーリーを進める主人公ではあるのですが、やはりお客さんに楽しんでもらえるところは、ローラのパフォーマンスかなと。僕はこの作品を観た人が「ローラ最高だったよね」と言ってくれるのが、最高に嬉しいんです。

ーーなるほど。チャーリーとローラの友情も見所ですよね。

チャーリーとローラは育った環境も、見た目も、キャラクターも全然違うけれど、共通するのが父親関係のこと。お互い父親とのことで葛藤があって、それを乗り越えて、出会って、心を通わせているんですよね。“心の蓋を開けたら同じ形をしていた”みたいな……。

そうやってお互い分かり合えた瞬間から、一つの目的に向かって、“一緒にブーツを作っていこうよ”となった時の歌『Not My Father’s Son(ノット・マイ・ファーザーズ・サン)』は本当に好きです。

本当に心からお互いのことを分かり合えた友達のような、じわーっと心が温かくなって広がっていく家族のような感情でいっぱいになる瞬間で……。チャーリーとローラの関係はそういった友情の芽生えや、人を受け入れたときの繋がりがすごく良いなと思います。

ーー『キンキーブーツ』では今語っていただいたような“自分自身や他者との向き合い方”が描かれますが、この作品から小池さんが影響を受けたことはありますか?

この作品の根本となる“他人を受け入れることの大切さ”というのは、影響を受けている大きな部分だと思います。“他人を受け入れる”というのは、簡単なようで非常に難しいことなんですよね。自分や相手を受け入れる勇気もそうですし、優しさや器の大きさというか……。

それをぱっと気づかせてくれるようなことがこの作品にはあるので、そこは非常にすてきなメッセージだと思います。

ーー今後、挑戦したい役やお仕事、ファンの方に期待してほしいことがあれば教えてください。

一つの場に絞らず、色々なところで自分が活動している姿を見せられたらいいなと思っています。

舞台のようなお芝居を生で観てもらうような“生”に変わるすばらしいことはないのですが、映像だと残ったりもしますし、コロナ禍で始めた自分で配信できるコンテンツもある。

これから新しいコンテンツが増えることもあると思うので、今後も色々なことに挑戦して進化していきたいです。

ーーありがとうございました。

ブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』

日本中を熱狂の渦へと巻きこんだ伝説のミュージカルが帰ってくる!

誰もが不安を抱える中、大きな愛で気分を引き上げてくれる『キンキーブーツ』。圧巻の歌唱力にダンスとさまざまなエンターテインメントで魅了し、観客の世界を輝かせてくれること間違いなし。多様化の時代だからこそ、自分自身そして、他者との向き合い方を教えてくれる、ブロードウェイ・ミュージカルの最高傑作。

東京公演:2022年10月1日(土)~11月3日(木・祝)東急シアターオーブ
大阪公演:2022年11月10日(木)~11月20日(日)オリックス劇場
脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
音楽・作詞:シンディ・ローパー
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版演出協力/上演台本:岸谷五朗
訳詞:森 雪之丞
出演:小池徹平、城田 優、ソニン、玉置成実、勝矢、ひのあらた 他

※この記事は2022年10月03日に公開されたものです

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