婚活女子が魅せる「女性の生きづらさ」と「不安」――共感必至の映画『傲慢と善良』を語り尽くすアラサー女子座談会
9月27日から全国の映画館で大ヒット上映中の『傲慢と善良』は、原作も100万部を超える大ヒット小説。アラサー女性を取り巻く「結婚」「将来」「両親」「自己肯定感」といったあらゆる問題を取り上げ、SNSでは「共感しすぎて胸が痛い」という感想が話題を集めています。
なぜ『傲慢と善良』はアラサー女性の胸を締め付けるのか、そして私たちは『傲慢と善良』から何を学べばいいのか――。作品を見ていても立ってもいられなくなった、マイナビウーマンのアラサー編集部員ありさ、ゆい、まさみの3人が座談会を開催。「共感必至」の映画を語り尽くします!
<座談会参加メンバー>
ありさ
年齢:29歳
出身:茨城県
婚活経験:あり
備考:友人の紹介でできた彼氏と3年付き合うもののプロボーズの予兆はナシ。
ゆい
年齢:30歳
出身:秋田県
婚活経験:なし
備考:元職場で出会った彼と数年前に結婚。現在は1児の母。
まさみ
年齢:33歳
出身:兵庫県
婚活経験:あり
備考:マッチングアプリで出会った彼と数年前に結婚。夫婦の仲は良好。
【語れるポイントその1】リアルすぎる登場人物とストーリー
©2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
――皆さんは『傲慢と善良』の小説を読んだことはありますか?
ありさ 原作小説もかなり有名だよね。職場で話題になっていて、同僚に勧められたのが手に取ったきっかけだったかな。
ゆい ありさが先に読んでて「これはヤバい」って、私たちにも勧めてくれたんだよね。で、実際読んでみたらまさにヤバかった! インスタのストーリーにアップしてる友だちも多かったよ。テーマがテーマだから、同世代の女子にはオススメしやすいよね。
まさみ 私はその時、時間がなくて読めなかったんだけど、アラサーの婚活女子が主人公って聞いて、すごく気になってたんだよね。私も婚活したことあるし、大変だったなとは思ってるから、気合入れて読まないと心が潰れるかも……と思ってたら、タイミングを失ってた(笑)。
――実際に映画を見ての、率直な感想を教えてください。
ゆい まず、登場人物のキャスティングがハマりすぎてたよね。主人公の真実を演じた奈緒さんはすごく美人でオーラがある方なんだけど、作品の中では真実の自立できていない感じとか、弱々しさすらも全身で表現していてすごかった。
©2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
まさみ 奈緒さんの演技力が凄いからなのかもしれないんだけど、私は真実の考え方や行動にすごくモヤモヤした。両親に敷かれたレールに乗りがちなところも、同世代の女性として分かる部分はあるんだけど、そのわりに気が強い一面もあるから、すごくワガママに見えちゃって。
ゆい この感覚は女性にしか分からないのかもしれないけど、真実には「女性のダメがちなところ」が詰め込まれてる感じがするよね。一歩引いてるのに「察してほしい」って思ってたり、地方育ちで世間知らずなのに、自己顕示欲は強かったり。こうはなりたくないなって、反面教師にもなった。
©2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
ありさ 架役の藤ヶ谷さんも、普段はスターのオーラを放ってるけど、作品の中ではいい意味で等身大で、原作以上に好感が持てた。
――年齢の近い真実には共感する部分も、否定したくなる部分もありますよね。ストーリーに関してはどうですか?
まさみ 心にグサグサ来るセリフが多かったのが印象的だったね。例えば、真実が通っていた結婚相談所の小野里さんの「皆さん謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです」というセリフ。私も自己肯定感が高い方じゃないから、まるで自分に言われてるみたいでキツかったけど(笑)。
ゆい 私も身の回りで婚活を頑張っている子が多いから、登場人物を身の回りの知り合いに当てはめながら見てしまったんだけど……真実の彼氏の架も、架の女友達の美奈子も、みんなリアルにいるよね。
ありさ 登場人物もストーリーもとにかくリアルすぎて、女子会で友達の話を聞いてるみたいだよね。さすがに婚活こじらせて行方不明になった友達はまだいないけど、私もこのまま迷走したら、真実みたいに思い詰めちゃうのかなって怖くなったよ。
まさみ 家族との関係も、地方出身の私からするとかなりリアルだった。お母さんの謎に結婚しろって圧力かけてくるところも、地元の大学が最強って思い込んでるところも、あまりにもあるあるだよね。
ありさ ストーリーがリアルだから、いつの間にか自分の身に起きた出来事みたいに、親身に感じるよね。たとえば私は、真実が上京してる自分と、地元に残ってる友達を比較しちゃうシーンがキツかった。この歳になると地元で次のステップに進んでる友達の方が幸せに見えたりもするから、余計に複雑な気持ちになっちゃったよ。
【語れるポイントその2】主人公と自分のそれぞれの「共通点」
――真実自身が「自分らしい幸せ」を求めて迷走している姿も描かれていますし、自分の将来や今の悩みと重ね合わせてしまいますよね。
ゆい 実際、東京で働いている私たちと、地元に残って子育てしながら家まで買ってる子じゃ、全く違う人生だもんね。
ありさ 東京じゃ家は高いし狭いし、自分に買えるのかなって思ったりもするけど、だからって地元に帰ってる自分も想像つかないしね。
まさみ 東京に何があるのかと言われたら、別に何もないなって思うんだけど……地元に戻っても疎外感がある気がするし、自分の居場所がどこなのか分からなくなっていく真実の不安には、共感したりもした。
ありさ ないものねだりなのかもしれないけど、今の自分と全然違う幸せを実現している人のことをSNSで見ると、羨ましく思ったりもしちゃうんだよね。でも、自分に置き換えるとしっくりこない……こういうのも、私たちの『傲慢さ』なのかなあ。
――作品の中では、真実の傲慢さと架の傲慢さも、また違う形で描かれていましたね。
ゆい 女性目線で語ると、正直架って最悪だよね(笑)。婚活で知り合ってるのに、1年も経っても結婚してないなんてあり得ない!
ありさ 私も今の彼とは長く交際してるから、自分の状況とも重ねて架にイライラしちゃった。
©2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
まさみ 架の傲慢さと真実の傲慢さは別物だし、男女って本当に何もかもが違うんだろうね。男女の違いが明確に描かれてて、面白かったし参考になったけど、私も地方で婚活してた経験があるから、架には真実の辛さは理解できるわけがないとも思った。
ゆい そもそも、婚活ってどこからが婚活なのかな? 架と真実も出会いはマッチングアプリでしょ。マッチングアプリでの婚活って、結婚相談所と比べるとふわふわした関係になりやすそう。
まさみ たしかに……。私もマッチングアプリで婚活してたけど、マッチングアプリって活動の目的がそれぞれ違うし、相手に対して明確に「私、婚活してるんです!」とは言ってなかったなあ。
ありさ 言った方が結婚に近い相手と交際しやすいのかもしれないけど、やっぱり言いにくいし、そもそも結婚の話は男性からしてほしいって気持ちもあるかも。これ、まさに小野里さんが言ってた自己評価は低いけど、自己愛が強いからこその「傲慢さ」だよね。
©2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
まさみ 私は婚活中の自分を思い出した時に、真実と同じ傲慢さを持ってたことに気づいてショックだった。自分の婚活市場での価値なんて意識してなかったけど、正直職業が安定していない人はちょっとないなって思ってた。無意識でも、勝手に人のスペックを自分のものさしで判断してたし、その中で取捨選択してたんだなあって。
ゆい 真実のことを否定したい気持ちもあるのに、じわじわ「実は私も真実と一緒なのでは?」って思えてくるね……。
ありさ しかも、それぞれが共感しちゃうポイントが違うんだよね。地方での話とか、家族との話とか、婚活の話とか、人によって共感する部分と、真実を否定したくなる部分が分かれそう。
――こうして話し合っていると、まさに「共感しすぎて胸が痛い」状態になってきますね。
まさみ どんどん、自分も持っている浅はかな考え方に気づいちゃうよね。婚活より恋活って言った方がハードル低い気がするとか、たしかに真実みたいに、親に言われて婚活する方が、仕方ない感じがして楽だろうなとか。
ありさ 私はどっちかというとラフに考えて行動したいタイプなんだけど、結局のところ真面目だから、恋愛でも長く付き合うほど、ひとり相撲してるような気持ちになって苦しくなる。真実も真面目だから悩んでいるんだろうし、ちゃんとしなきゃいけない気がして、頑張りすぎちゃう気持ちも分かっちゃうからね。
ゆい 自分は真実とは全然違う人間だと思いながら見始めてるのに、悩みの内容が普遍的すぎて誰でも共感できちゃうのが『傲慢と善良』のスゴイところだよね。
【語れるポイントその3】作品を超えて、自分の人生を考える
――逆に、共感できなかったポイントはありますか?
まさみ 共感できないというより分からなかった部分なんだけど、架はなんで真実のことを好きになったんだろう。
2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
ありさ 作品では「ちょうどよかった」って言われてたけど、たしかにそう聞くと、都合のいい女みたいな評価のされ方だよね。女性目線で見ると、真実って重いし面倒だし、架みたいなハイスペ男子がどうして真実と結婚しようと思ったのか、謎かも。
ゆい でも、架はもうアラフォーだよ? 男性の方が結婚を意識するのも遅いって言うけど、世代的にも元カノ思い出してジメジメしてる場合じゃなくない?
まさみ 作品の中で、小野里さんが「婚活でうまくいく人は、自分の欲しいものが分かっていてビジョンがある人」って言ってたんだけど、架にそういう軸があるようには見えなかったんだよね。
ゆい やっぱり、作品中で最も共感できなかったキャラクターは架?
ありさ いやあ、真実にも共感したくない気持ちはあるんだけどね。架を心から肯定できる女性っているのかなあ?
ゆい 悪い人じゃないけど、いい人でもない……作品に出てくる多くの登場人物がそうだったよね。例えば、架の友達の美奈子もそうじゃない?
©2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
ありさ でも、美奈子はけっこう悪い女だよ。よくSNSで見かける「彼氏の女友達にいてほしくない女子」そのものじゃない?
まさみ 美奈子って、実は架のことが好きだったんじゃないのかな? そうじゃなきゃ、真実にわざわざ意地悪する意味が分からないもん。
ゆい 絶対そうだよね。元カノと別れたタイミングで、あわよくば自分が付き合ってもいいな、なんて思ってたんじゃない?
ありさ 友達付き合いって、その人の価値観を象徴すると思う。だからやっぱり、美奈子みたいな女性と仲良くしてる架も、プライドが高くて傲慢な側面は絶対にあるんだよね。
ゆい お金や社会的地位がある男性と結婚して、美奈子みたいな子が結婚式に来るとしたらちょっと恐怖じゃない?
まさみ & ありさ 嫌すぎる!!
まさみ そういえば、真実のお姉ちゃん意外と意地悪だったよね。実の姉妹だけど、真実のことを見下しているように見えた。
©2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
ありさ でも意外と、誰しもがいい人で悪い人、なのかもね。できるだけいい人に見せたいと思って頑張ってても、実際は人間として出来上がっていないし、なんとか取り繕って生きてるだけなんだよね。
――生きていく上での落とし所を見つけるという意味では、婚活も似ていますね。
ゆい 私はたまたま婚活せずに済んだけど、たしかに婚活って、いつどこで妥協点を見つけられるかが重要なイメージがあるかも。
ありさ 趣味は合うけど外見は好みじゃないとか、見た目はどストライクなのに年収が低いとか、女子会でもよく話題に上がるよね。
ゆい これも一種の傲慢なのかもしれないけど、最初に気にかかる部分があった人とは、交際しても長続きしなかったりもするね。
まさみ でも自分では、婚活で妥協したなんて思いたくないじゃない。だから、地方で婚活してた時の真実みたいな、傲慢なミドサー女子が爆誕しちゃうのかも……。
ありさ 原作では小野里さんが「結婚相談所は最後の砦じゃなくて、最初の砦」って言ってたけど、私は未だに「結婚相談所は最後の手段だな」って思ってるから、まだ全然自分の人生に妥協できてないんだなって思う。
ゆい 最後の砦と思って入会する頃には小野里さんに「もう少し早かったら助けられたのに」って言われるのかも(笑)。
ありさ まだ、どこかで「自分は選べる立場だ」って思っちゃってるんだよ……そんな怖いこと言わないで〜!
ゆい でもきっと今は「そもそも結婚したいか分からない」って人も増えてそうじゃない? 一人でも楽しめるコンテンツがたくさんあるし、私の周りには未婚の30代女子も多いから、寂しさもそこまで感じてなさそうだよ。
まさみ 私も30代は未婚でも楽しめそうだなと思ったけど、40代になったらどうなっちゃうんだろうって、先走った不安で婚活を始めたよ。
ありさ 29歳にも壁があるっていうけど、きっと39歳にも壁はあるよね。それを考えると、やっぱり今結婚しておかないとヤバいかも。実は真実の部屋に置かれた婚約指輪を見た時も、去年のクリスマスに彼にもらった素敵な箱のプレゼントのことを思い出しちゃったんだ。指輪かなと思って開けたら、高級なバスオイルだったんだよね(笑)。
ゆい もはや、彼と一緒に映画館で『傲慢と善良』を見た方がいいんじゃない?
ありさ そうしようかな(笑)。世に言う“ゼクハラ”みたいな感じで、彼の家に原作小説を置いていくのもいいなと思ってたんだけど、一緒に映画を見に行く方がハードル低いかも。
「語る」までセットでやりたい良映画
――いつの間にか作品を離れて、自分たちの人生や結婚への価値観の話で盛り上がってしまいましたね。
ありさ あまりにも身近なストーリーだから、本当に話題が尽きないよね。本当は地方の家族関係の話とか、真実のプレ花嫁アカウントのことも語りたいもん(笑)。
ゆい 細かい部分を上げだすときりがないけど、もう1時間以上経っちゃったの⁉
――改めて、作品をご覧になった方や、逆にまだ見ていない人に伝えたいことはありますか?
まさみ 登場人物とストーリーのリアルさは見どころの一つだと思うんだけど、マッチングアプリで出会った真実と架が、ちょっとしたことからすれ違っていってしまったことこそが、自分も今後気をつけるべきポイントだと思った。相手に気を遣ったり、楽しい雰囲気でいたいと思う気持ちが強かったりすると、なかなか話し合いの機会が持てないじゃない。安心できる間柄だったとしても、お互いにきちんと気持ちを伝えていきたいよね。
ゆい 今の時点で恋愛に悩んではいなくても、自分の将来になんとなくモヤモヤを感じる人にも見てほしいかも。真実の辿った道は、アラサーの女性としては一つの参考になるし、彼女が最後にどうなるかを見たら、きっと何か行動してみたくなるはずだよね。
ありさ 真実というキャラクターの行動原理は、女性には分かっても男性には難解なんだと思う。だからこそ、カップルで見に行ったらいい話し合いの機会になるはずだよね。私も彼氏と見に行きたいと思ったけど、未婚の友だちとも鑑賞してみたい。普段は話し合えない価値観が見えそうだし、いろんな人と何度か映画館に行くのも楽しいと思う!
ゆい たしかに今日は、2人にも今まで話したことがなかったことまで自然に喋っちゃったな(笑)。
まさみ 共感できると嬉しいし、反対意見も映画を通してだったら、新鮮に聞けそうだよね。
ありさ 一人で見るだけじゃもったいないから、ぜひ鑑賞後の座談会時間を確保して見に行ってほしいね!
まだまだ語り足りない様子のマイナビウーマン編集部員たちでしたが、座談会は最後まで大盛りあがり。真実という女性が映し出す、現代を生きる女性の「生きづらさ」や、マッチングアプリやSNSが台頭する世の中で浮かび上がる「人間関係の希薄さ」など、どんな人にも関わりのある主題がてんこもりの『傲慢と善良』。ぜひ身近な人と一緒に鑑賞して、映画の感想や登場人物に感じたこと、お互いの価値観を語り合ってみてください。
(ミクニシオリ)
『傲慢と善良』
婚約者・坂庭真実が突然姿を消した。過去もうそもすべて隠したまま――。
仕事も恋愛も順調だった架だったが長年付き合った彼女にフラれてしまい、マッチングアプリで婚活を始める。そこで出会った控えめで気の利く真実と付き合い始めるも1年たっても結婚まで踏み切れずにいたある日、彼女からストーカーの存在を告白される。
そんな矢先「架くん、助けて!」と恐怖に怯えた真実からの着信が。彼女を守らなければとようやく婚約した直後、真実が突然消えた――。居場所を探すうち明らかになっていく<知りたくなかった過去と嘘>、すべてをさらけ出した2人の“一生に一度の選択”とは?
全国の映画館にて大ヒット上映中
©2024 映画「傲慢と善良」製作委員会
※この記事は2024年10月08日に公開されたものです