「先般」の意味は? いつまで使える? 301人に調査
「先般」は、過去のある時点を意味します。では、先般はいつまで使えるのでしょう? 301人に聞きました。また、使い方や「先日・過日・今般・昨今」など類語との違いを、ビジネスコミュニケーション指導に従事する大部美知子さんが例文と共に解説します。
ビジネスメールなどで使われる「先般」という言葉の正しい使い方を知っていますか?
同じような意味でよく使われる「先日」との違いを理解し、自信を持って使い分けられるように、意味と使い方のポイントを紹介します。
「先般」の意味とは
「先般」は「せんぱん」と読みます。辞書で調べると、下記のような記載があります。
せんぱん【先般】
さきごろ。せんだって
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
「先」には「今より前」「現在からそう遠くない過去」、「般」には「ある場面、回」という意味があります。
「先般」という熟語の漢字からも「現在に近い過去のある時点」を指していることが分かります。
「先般」を使えるシーンは?
「先般」はどのような時に使えるのでしょうか。
(1)ビジネスメールを送る時
「先般」は改まった表現のため、日常会話で使われることはほとんどありません。書き言葉として、ビジネスメールで使われることが多いでしょう。
ビジネスメールで使える例文については、後ほど紹介します。
(2)目上の人へ手紙を書く時
ビジネスメール以外では、目上の人へ改まった手紙を書く時も「先般」が使えます。
この場合、プライベートの場面でも「先般」が使われることがあります。
「先般」はいつまで使える? 301人に調査
「先般」には「さきごろ。せんだって」という意味があると述べました。では、具体的にどれくらい前のことを指す時に使えるのでしょうか。
今回、マイナビウーマンでは「先般」がいつまで使えるかアンケート調査(※)を実施しました。その結果を見てみましょう。
※有効回答数301件
「数日前まで」と回答した人が最多で39.9%、次いで多かったのが「数週間前まで」で36.2%でした。
この結果を見ると、数日~数週間前までのことに対して「先般」を使うのが、多くの人にとって違和感のない使い方といえそうです。
「先般」と「先日」「過日」との違い
さて、「先般」と似た意味で使われる言葉として「先日」「過日」などがあります。これらの言葉と「先般」の違いはどこにあるのでしょうか。
ちなみに、「先日」「過日」は辞書では以下のように解説されています。
せんじつ【先日】
近い過去の或る日。この間。過日。かじつ【過日】
過ぎた日。先日。(『広辞苑 第七版』岩波書店)
やはり具体的にどれくらい前までのことを指すのかははっきりしません。
そこで「先日」「過日」についてもどれくらい前のことに使えるかアンケート調査(※)を行ったので、結果と共に「先般」とのニュアンスの違いを解説します。
「先日」は「先般」より近い過去を指す
※有効回答数301件
「先般」では「数日前まで」という回答の割合が39.9%だったのに対し、「先日」では65.4%を占めています。
この結果から考えると、「先日」は「先般」より近い過去を指すのが一般的といえるでしょう。
以下に、アンケートへ回答した人の声を紹介します。
- 「先日のほうが近いイメージ」(29歳/男性/営業関連)
- 「『先日』は『日』という字が使われており、流石に数カ月前のことは意味しないと考えるため」(35歳/男性/公共サービス関連)
- 「『先日』には『日』が入っているから数日を表すと思う」(37歳/男性/営業関連)
「過日」は「先般」より遠い過去を指す
※有効回答数301件
「過日」がどれくらい前までのことを指すかは意見が割れました。
特筆すべきは「数カ月前まで」の割合でしょう。「先般」では16.3%でしたが、「過日」では24.6%となっています。
そのため、「過日」は「先般」と同じか少し遠い過去を指すと思っていて良さそうです。
以下に、アンケートへ回答した人の声を紹介します。
- 「過日のほうが先般よりもっと前な気がする。『過去』の『過』という字は数カ月前や数年前という遠いイメージが強いから」(23歳/女性/その他・専業主婦等)
- 「『過ぎ去った日』は数日前も数年前も同じ『過ぎ去った日』で、先般は何年も前のことまでは指さないのではないかと思う」(33歳/女性/事務・企画・経営関連)
「先般」と「昨今」「今般」との違い
では、「先般」と「昨今」「今般」には違いがあるのでしょうか。まずは「昨今」「今般」の意味を確認しましょう。
さっこん【昨今】
きのうきょう。この頃。こんぱん【今般】
このたび。こんど。今回。(『広辞苑 第七版』岩波書店)
「昨今」は「少し前から現在までの継続した期間」を表し、「今般」は「最近のある期間や現在進行形の期間」を指します。
つまり、どちらも「継続している一定の期間」を意味し、過去の一時点を指す「先般」とは異なるのです。
次のページでは、ビジネスメールで使える「先般」の例文を紹介します。
ビジネスメールで使える! 「先般」の例文
ここでは、ビジネスメールで使える「先般」の例文を紹介します。
例文
・先般はご多忙の中、ご足労いただきましてありがとうございました。
・先般よりご検討を依頼している件、その後進展はいかがでしょうか?
・先般お送りした企画書の件、ご検討いただけましたでしょうか?
・先般お問い合わせをいただきました件につきまして、ご回答いたします。
「先般」を使う上での注意点
「先般」を使う際の注意点として、以下があります。
(1)日時を明確にすべき場合は使わない
「先般」は日時を特定しない曖昧な表現のため、正確な日時が分からない場合に便利です。
しかし、ビジネスでは日時を明確にした方が良い場合もあります。その際は「○日にはお世話になりました」などと具体的な日時を明記すると良いでしょう。
(2)身近な人には使わない
前述の通り、「先般」は改まった表現であるためビジネスシーンで目上の人に対して使われることが多いです。同僚や友人など、身近な人にはあまり使いません。
次のページでは、「先般」の類語や言い換え表現を紹介します。
「先般」の類語・言い換え表現(例文つき)
最後に、「先般」の類語・言い換え表現を紹介します。
「先日」
「先日」は近い過去のある日を意味します。
また、ビジネスシーンの文書だけでなく口頭でのコミュニケーションやプライベートなシーンでも幅広く使うことができます。
例文
・先日は急な予定変更をお聞き届けいただき、ありがとうございました。
・偶然ですね。つい先日、私もそのお店に行きました。
「過日」
意味は「過ぎ去った日」で、過去の日々の全てを含みます。近日だけでなく、遠い過去のことにも使えます。
その意味では、「先日」も「過日」に含まれますが、数日前のことは「先日」、さらに時間が経過したことには「過日」と使い分けると良いでしょう。
また「先般」と同様に改まった表現なので、主に文書やメールなどのビジネスシーンで書き言葉として用いられます。
例文
・過日はご多忙にもかかわらず、○○にご参列くださいまして、お礼を申し上げます。
・過日は行き届いたご配慮をいただきまして、ありがとうございました。
「先ほど」
「少し前」「さっき」という意味です。「先般」「先日」「過日」が日付を超えた場合に使うのに対し、「先ほど」はその日の出来事に対して使います。
例文
・大変申し訳ございません。先ほどお送りしたメールの日程に誤りがございました。
・先ほどごあいさつした○○が、今後この件を担当いたします。
「先般」と類語との違いを理解して適切な使い分けを
「先般」「先日」「昨今」「今般」などの違いについて、ご理解いただけましたか?
今まで何気なく使っていた表現でも、それぞれ意味を知ると状況に合わせて的確に使い分けることができます。
これを機に、ぜひ意識してこれらの言葉を使い分けてみてください。
(大部美知子)
※画像はイメージです
※マイナビウーマン調べ
調査日:2023/4/19
調査対象:20~39歳の男女
調査人数:301人
※この記事は2021年11月30日に公開されたものです