知ってる? 「冥利に尽きる」の意味
「冥利に尽きる」という言葉を耳にしたことはありませんか? 「この上ない恩恵を受けてありがたく感じる」という意味です。今回はそんな「冥利に尽きる」の使い方について、ライティングコーチの前田めぐるさんに教えてもらいました。
「教師冥利に尽きる」「役者冥利に尽きる」という言葉を耳にしたことはありませんか?
「冥利に尽きる」とはどういう意味なのか、理解できていないという人も少なくないのではないでしょうか。
今回は「冥利に尽きる」の意味や使い方を紹介します。
「冥利に尽きる」の意味
まず「冥利に尽きる」の「冥利」には、以下の意味があります。
みょうり【冥利】
(1)[仏]明瞭でない利益(りやく)。
(2)神仏が知らず知らずのうちに与える恩恵。冥加の利益。
(3)ある立場・境遇で自然に受ける恩恵や幸福。
(4)(境遇や職業に表す語につけて)反すればその冥利を失うのも差し支えない意の誓いの詞。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
このように、「冥利」とは仏教語で、「知らず知らずのうちに神仏から受けているご利益のこと」を表す言葉です。
そして「冥利に尽きる」という言葉は、以下のような意味です。
冥利に尽きる
(1)この上ない恩恵を受けてありがたく感じること。
(2)神仏から見放される。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
両者は真逆の意味ですが、現在ではほぼ(1)の意味で使われています。
つまり、「冥利に尽きる」とは、「知らないうちに受け取っているご利益がこの上ないほどに極まり、ありがたいこと」という意味を表しています。
例えば「○○冥利に尽きる」という使い方をした場合には、「○○の立場で受け取っているご利益がこの上なく極まり、ありがたい」という意味を表します。
一方で、使われているのをめったに見聞きしないものの、(2)のように「神仏から見放される」というネガティブな意味で「冥利に尽きる」と使う場合もあります。
このように、ほとんどは「この上ない恩恵を受けていて、ありがたい」というポジティブな意味で使われますが、ごくまれに「神仏に見放された」という意味でも使われるのが「冥利に尽きる」という慣用句です。
「冥利に尽きる」はどんな時に使えるのか?(例文付き)
前段でも触れた通り、「冥利に尽きる」という言葉は、ポジティブな意味で使われることがほとんどです。
基本的に「冥利に尽きる」は、「○○冥利に尽きる」「○○として冥利に尽きる」という使い方をします。
ここでは、「冥利に尽きる」を用いる場面ごとに、使い方と例文を紹介します。
ある立場にいることで、最高に恩恵を感じている時
その立場の恩恵を有り余るほど受けていて幸せを感じている時、その立場にある本人が「○○冥利に尽きる」という使い方をします。
その恩恵を与えてくれている人に対して使うこともあれば、第三者に対して使うこともあります。
例文
・卒業した生徒が、就職、結婚などのうれしい報告をくれる時、いつも「教師冥利に尽きるなあ」と思います。
周囲に対して感謝の気持ちを表したい時
良いことが起きたり成功したりして、これ以上ないほどに周りからの恩恵を受けていると感じた時に、周囲への感謝の表現として使います。
例文
・創業5年で株式上場したのは、ひとえに社員の皆さん、そしてお取引先の皆さまのおかげです。創業者として冥利に尽きます。
人から褒められたり、感謝されたりした時
「冥利に尽きる」とはこの上なくありがたいという意味なので、例えば、誰かから褒められた時に、最上の恩恵であるというニュアンスで「冥利に尽きます」と使うことができます。
例文
・多くの皆さまからお褒めの言葉をいただき、最高の気持ちです。作者冥利に尽きます。
「冥利に尽きる」の言い換え表現
最後に、「冥利に尽きる」と似たような意味を持つ言葉を紹介します。
「恩恵にあずかる」
「恩恵」とは、「利益や幸福をもたらすもの」を意味する言葉です。「恩恵にあずかる」とは、「利益や幸福を浴びるほど受けている」という意味です。
例文
・彼は、もうけ話を持ち掛けられた途端、「そんな恩恵にあずかるために政治家になったんじゃない」と怒り、速やかにその場を後にした。
「天恵に浴する」
「天恵」とは、「てんけい」と読み、「天から賜(たまわ)る恵み」のこと。
「天恵に浴(よく)する」とは、文字通り、「天からいただいた恵みを浴びるほど受けている」という意味です。
例文
・これほどやりがいのある仕事に就いていることは、まさに天恵に浴したものと思っております。
「甲斐がある」
「ある行為に値するだけの効果がある」という意味です。
「冥利に尽きる」と少し似ていますが、「冥利」のようにその立場にあるだけで無条件に得られたわけではなく、「自分で努力したことや何かしらの行為に値する効果」という意味で使います。
例文
・そんなに喜んでいただけるとは、スタッフ一同張り切って準備した甲斐があるというものです。
効果的な使い方ができる「冥利に尽きる」
「冥利に尽きる」という言葉は、その立場での恩恵をたっぷりと受けている時に使う言葉であるだけに、伝えた相手にも好意的に受け止められるでしょう。
その効果を知っておくと、相手が後悔している時、申し訳ないと感じている時に返す言葉としても使うことができます。
私たちは、人からどんなに苦労を掛けられたりしても、その一言やささいな行動で報われることがあります。
例えば、退職する部下が「迷惑ばかり掛けてしまいましたけど、○○さんの下で働けて本当に良かったです。ありがとうございました」と言った場合、「上司冥利に尽きるよ。ありがとう」と返せば、部下の気持ちもスーッと楽になるでしょう。
言葉の引き出しに加えておくと便利なフレーズでもありますので、ぜひ今回のコラムを参考にしてみてください。
(前田めぐる)
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※この記事は2021年03月27日に公開されたものです