自己憐憫の意味とは? 陥りやすい人の特徴や心理・克服法【診断付き】
「自己憐憫」という言葉を知っていますか? 読み方は「じこれんびん」で、「自分で自分をかわいそうだと思うこと」などの意味があります。今回はそんな自己憐憫について、心理カウンセラーの高見綾さんに、自己憐憫になりがちな人の特徴や対処法、克服方法などを解説してもらいます。
自分のことをかわいそうだと憐れむことを、自己憐憫(じこれんびん)といいます。
日常で嫌なことがあった時に、「なんで私だけこんな目に? 私ってかわいそう……」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。
今回は、自己憐憫になりがちな人の特徴や心理を詳しくお伝えします。また、自己憐憫の克服方法や上手な接し方についても併せて紹介します。
自己憐憫とは?
まず「自己憐憫」には、以下の意味があります。
じこれんびん【自己憐憫】
自分で自分をかわいそうだと思うこと。自分に対して憐憫の情を抱く事。
(『実用日本語表現辞典』)
また、似ている言葉として「自己嫌悪」があります。
自己嫌悪も自己憐憫も、自分を肯定できていない点では一緒ですが、自己嫌悪は自分をひどく嫌っているのに対し、自己憐憫はかわいそうな自分に酔って快感を覚えている点が大きく異なります。
自己憐憫な人は「私ほど不幸な人はいない」と思っており、そんな自分を憐れむことで、周りからの注目を集め、特別扱いしてほしいと思っているのです。
自己憐憫になりがちな人の特徴
ここでは、自己憐憫になりがちな人に共通して見られる特徴を紹介します。
(1)注目してもらいたい欲求が強い
周りから「注目してもらいたい」「構ってほしい」という気持ちを強く持っています。
そのため、「私はこんなに大変なの」とアピールすることで、周りの興味関心を引こうとするのです。
(2)かわいそうな自分が好き
ナルシスト的な要素があり、かわいそうな自分が好きだと思っているのも特徴です。
そのため、今いる不幸な場所から抜け出そうとしない傾向も。もし今いる場所から抜け出して幸せになってしまったら、周りからの同情や注目が得られなくなってしまうと思っているのです。
(3)被害者意識が強い
被害者意識が強いため、ささいなことでも傷ついてしまって、周囲を「私を傷つける人たち」として扱います。
たとえ自分に原因があることでも「あなたが悪い」と責任を転嫁し、怒りをぶつけてしまうことが多いです。
(4)特別扱いを望む
自分のことを、悲劇のヒーロー・ヒロインのように感じている面があるので、「こんなにかわいそうなんだから、周りから特別扱いしてもらってもいいはずだ」と考える傾向があります。
しかし、望み通り特別に扱ってもらったとしても、「これくらい当然だ」と受け止めるので、満足することはなく要求がエスカレートしていくことが多いです。
(5)他人の痛みに鈍感
自分の痛みに浸っている状態なので、自己中心的な発想に陥りがちです。「誰だって傷ついたことがあり、苦悩し、葛藤している」ということに想像が及びません。
「みんなは私に比べたら幸せでしょ?」と思い込んでいるので、他人の痛みに鈍感です。
自己憐憫になる原因
では、なぜ自己憐憫になるのでしょうか?
ここではその原因を紹介します。
(1)周りから「かわいそう」扱いされた
幼少期に周りの人たちが「あなたはかわいそうな子」と口にしていたり、両親が悲観的な発言ばかりしていたりすると、子ども心に「そうなんだ、親は不幸なんだ、そして私もかわいそうな子なんだ」と刷り込まれてしまうことがあります。
(2)過去に大変な出来事を経験している
自己憐憫になる人は、過去に大変な出来事を経験していることが多いです。
しかし、今は昔に比べたら状況が良くなっていても、過去の出来事を理由に、今も不幸だと思い込もうとします。
また、不幸話をしたところ、周りから優しくしてもらった経験に快感を覚えてしまい、抜けられなくなったというパターンもあります。
(3)ネガティブな出来事にばかり注目する癖がある
物事を悲観的に見る癖があります。
例えば、10個の出来事のうち、良かったこと・助けてもらったことが6個あったとしても、残りの4個がつらかったことであれば、そちらが全てのように感じてしまうのです。
そのため、周りの人に助けてもらったことがあっても、あまり気付いていないのです。
あなたや周囲の人はどう? 自己憐憫チェックリスト
ここでは、あなた自身や周囲の人が自己憐憫になっていないか、チェックリストで確かめてみましょう。
以下7個のうち、4個以上当てはまれば、自己憐憫の傾向があるかもしれません。気になる方は少し自己診断してみましょう。
・「私の気持ちなんか、どうせ誰も分かってくれない」とよく感じることがある
・「どうして自分だけがこんな目に遭うのか」と思う
・「大変だったね」と気の毒に思ってもらえるとうれしくなる
・うまくいっている人がねたましい
・他人のことはあまり信用していない
・うまくいかないと、他人のせいにしがち
・恋人や家族、親しい友達などには怒りをぶつけたくなることが多い
▶次のページでは、自己憐憫の克服方法、自己憐憫な人への対処方法を紹介します。
自己憐憫の克服方法は?
もしも自己憐憫の傾向があり、そこから抜け出したいと考えている場合、以下の克服方法を参考にしてみてください。
(1)「一番不幸な人」にならない
自分が一番不幸だと思い込んでいる時は、周りの状況が見えなくなっている時なので、「自分以上につらい思いをしている人が他にもいるかもしれない」と想像する癖をつけましょう。
自分が「一番不幸な人」という認識にならないだけでも、客観的な視点が手に入りますよ。
(2)「自分に何ができるのか」考える癖をつける
依存的な心理から抜け出すためには、周りからやってもらうことよりも、自分ができることを考える癖をつけましょう。
もしかしたら「私が何をしてもみんなは喜ばない」とか「そんなことできない」と思うかもしれませんが、目の前の人に笑顔で接するなど、ちょっとしたことでOKです。
(3)感謝できることをノートに書く
自己憐憫の人は、満たされていないもの、ネガティブなものに注目する癖があるので、バランスを整えるためにも、感謝できることをノートに書くのがおすすめ。
周りに助けてもらったことやラッキーだったことを書いていくと、案外良いことがあったと気付けると思います。
自己憐憫な人への対処法や接し方
もしも周囲に自己憐憫しがちな人がいる場合、どう接したら良いか困ってしまう場面もあると思います。
ここでは、自己憐憫の人への対処法や接し方のポイントを紹介します。
(1)話を肯定的に受け止める
相手から「私はこんなにかわいそうなの」という話があったら、「そうなんだ、大変だったんだね」と寄り添って、肯定的な態度で話を聞きましょう。
何とか解決してあげようとしたり、「そんなこと言ってても変わらないじゃん」と否定的な反応をしたりしないことが大切です。
(2)感情的な反応をしない
前段で述べた通り、寄り添って聞くことは大切ですが、「えー! そんなことがあったの?」「うんうん、それでそれで?」とオーバーな反応をすると、相手は注目してもらえたことで気持ち良くなり、「やっぱり私はかわいそうなんだ」と強く思い込みます。
話を聞く時には、あまり感情的にならず、淡々としている方が良いでしょう。
(3)負担なく関われる範囲を見極める
自己憐憫しがちな人は、構ってくれる人を見つけるのが上手です。
あなたが「かわいそうだから助けてあげなくちゃ」と思っていると、相手の要求がエスカレートしていく可能性があります。
話を聞くにしても、「今日はちょっと忙しいから、30分だけね」など、負担にならずに関われる範囲を見極めておくのがコツです。
自分を憐れむだけでは問題の解決にはならない
誰しも「なんで私だけこんな目に……」と思うことは珍しくないので、思い当たるところが少しはあったという人もいるのではないでしょうか。
とはいえ、自分を憐れんでいるだけでは問題が解決しないままになってしまいます。
問題解決をする前に、狭くなってしまった視野を広げるためにも、まずは「他にもつらい思いをしている人がいるかもしれない」と他人の痛みを想像して、「私が一番不幸なんだ」と思い込まないようにしたいものです。
(高見綾)
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※画像はイメージです
※この記事は2021年02月25日に公開されたものです