ファイル暗号化ソフトの導入は、万が一情報漏洩をした場合でも、ファイルを悪用されないためのセキュリティ対策です。今回は、ファイル暗号化ソフトの無料版と有料版のおすすめソフトを紹介し、それぞれの特徴を比較します。ファイル暗号化ソフト導入を検討されている場合は、ぜひご一読ください。
ファイル暗号化ソフトとは
ファイル暗号化ソフトとは、企業の機密データ(個人情報・新製品情報など)に対して暗号化処理を行い、解読できない状態にして保護するためのソフトウェアです。ファイルを暗号化すると、サイバー攻撃などによってデータが流出してもデータの悪用を防止できます。
暗号化したファイルを使用するにはデータを元に戻す「復号化」が必要です。ファイル暗号化ソフトの中には、暗号化・復号化を自動的に行うものもあります。
ファイル暗号化ソフトは無料版と有料版があるので、それぞれのおすすめソフトを順番に紹介します。
無料で使えるファイル暗号化ソフト2選【比較】
「ED」
Type74.org
- 提供形態:パッケージソフト
- 暗号化技術:TwoFish共通鍵暗号、Rijndael共通鍵暗号、GOST 28147-89共通鍵暗号
- 対象機能:暴露ウイルス対策、元ファイル消去、紛失時の隠匿、パスワード省略
ドラッグアンドドロップでファイル暗号化ができる使いやすいフリーソフト。3種類の暗号化技術を選べる とともに、元ファイルの消去機能や、ファイルの拡張子を偽装する機能も備わっています。とりあえず無料のファイルの暗号化ソフトを利用したい場合は、このソフトでも十分役立ちます。
「ToraTora」
株式会社 iCanal
- 提供形態:パッケージソフト
- 暗号化技術:AES 256bitのCBCモード
- 対象機能:暴露ウイルス対策、紛失時の隠匿
「ToraTora」も、ドラッグアンドドロップでファイル暗号化ができる、シンプルで使い勝手のいいフリーソフトです。
ICカードとパスワードを組み合わせて暗号化できる 点が大きな特徴で、PCなどを紛失してもICカードがなければ復号化できません。紛失時の隠匿機能を利用できる無料版のファイル暗号化ソフトをお探しの場合に適しています。
ファイル暗号化ソフトのおすすめ3選徹底比較【大企業向け】
無料版では機能的に不足していたり、サポートが必要な場合には有料版のファイル暗号化ソフトがおすすめです。ここからは、有料版のおすすめファイル暗号化ソフトを紹介します。
「DataClasys」
株式会社DataClasys
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:パッケージソフト
- 従業員規模:全ての規模に対応
- 暗号化技術:公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式のハイブリット(公開鍵・RSA2048bit暗号、共通鍵・AES256bit暗号)
- 対象機能:暴露ウイルス対策、元ファイル消去、紛失時の隠匿、パスワード省略
- 無料トライアル:あり
「DataClasys」は、サーバー・クライアント方式のファイル暗号化ソフトで、ファイルは暗号化したままで作業できる 点が特徴です。ファイルにアクセスがあると、メモリ上に復号化したデータを展開して渡す仕組みなので、物理ディスク上には常に暗号化ファイルが保存された状態を保てます。
機能も豊富で、共有フォルダの自動暗号化や端末制限によるなりすまし防止 、USBドングルによる2要素認証も可能です。
「ProtectFile」
タレスDIS CPLジャパン株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:パッケージソフト
- 従業員規模:1,000名以上
- 暗号化技術 AES
- 対象機能:暴露ウイルス対策、元ファイル消去、紛失時の隠匿、パスワード省略
- 無料トライアル:別途問い合わせ
「ProtectFile」は、ファイルの暗号化や復号化をユーザーに意識させることなく自動で行う ファイル暗号化ソフトです。ファイルの暗号化・復号化作業が不要になるため、従業員の業務を妨げることなくセキュリティを強化できます。
また、同じ会社の「DataSecure」と併用することで、鍵とアクセスポリシーはDataSecureで管理 でき、アクセス制御も可能になります。
「SafeNet KeySecure」
タレスDIS CPLジャパン株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:オンプレミス、クラウド、ハードウェア、アプライアンス
- 従業員規模:500名以上
- 暗号化技術:ー
- 対象機能:ー
- 無料トライアル:別途問い合わせ
ファイルの暗号化や復号化で利用する鍵を集中管理できる エンタープライズ暗号鍵管理(EKM)ソリューション。アプライアンス製品の形で、サーバーマシンに負荷をかけることなく統合的な鍵管理を実現します。
本製品自身にファイル暗号化ソフトに相当する機能はありません。ただ、ファイル暗号化ソフトや他の暗号化技術を使っているシステムとの連携によって、より効率的なセキュリティ環境を実現します。
ファイル暗号化ソフトのおすすめ3選徹底比較【中小企業向け】
次に、中小企業向けのファイル暗号化ソフトを3製品紹介します。
「NonCopy2」
サイエンスパーク株式会社
- 参考価格:【NonCopy2 サーバー】700,000円、年間保守105,000円【セキュリティスイート(全機能版)】1ライセンス20,000円、年間
- 保守3,000円(最小構成:サーバー1ライセンス、クライアント30ライセンス)~
- 提供形態:パッケージソフト
- 従業員規模:30人以上
- 暗号化技術:別途問い合わせ
- 対象機能:暴露ウイルス対策、元ファイル消去、紛失時の隠匿、パスワード省略
- 無料トライアル:あり
クライアントサーバー構成のパッケージソフトで提供される、ファイル暗号化ソフト。ファイルの暗号化と 指定フォルダからのファイル持ち出し禁止、ワークフロー機能などでファイルの情報漏洩対応を行えます。
保護対象フォルダは、クライアントソフトをインストールした端末からのみ閲覧・編集可能で、外部への持ち出しを防止。 保護対象フォルダにファイルを格納し自動的に暗号化・復号化が行われる ため、ユーザーはパスワードを意識せずファイル操作可能です。
「Confidential Posting」
富士通Japan株式会社
- 参考価格:SaaS版25ID20,000円~、パッケージ版100ID500,000円~
- 提供形態:パッケージソフト、SaaS
- 従業員規模:全ての規模に対応
- 暗号化技術:AES256
- 対象機能:暴露ウイルス対策、元ファイル消去、紛失時の隠匿、パスワード省略
- 無料トライアル:あり
「Confidential Posting」は、 ファイルを電子メールで送受信する際のセキュリティに的を絞った暗号化ファイル伝送ツールです。
メールにファイルを添付する時点で自動的にファイルの暗号化と圧縮を行い 、相手がデータを受信してローカルにダウンロードする際ファイルを復元します。中小企業でも導入しやすい価格設定 で、ファイル送受信時のセキュリティを高めたい場合に適した製品です。
「NISMAIL」
NECソリューションイノベータ株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:オンプレミス、クラウド
- 従業員規模:全ての規模に対応
- 暗号化技術:AES/TWINE
- 対象機能:暴露ウイルス対策、元ファイル消去、パスワード省略
- 無料トライアル:別途問い合わせ
オンプレミス・クラウド間のシステム間連携で必要となるファイル転送をセキュアに行えるデータ集配信ソフトウェア 。SSL転送および転送前のデータ暗号化・伝送後の復号化を自動で行うことにより、セキュアなデータ送受信を実現します。
オンプレミス・クラウド双方に本ソフトをインストール。簡単な環境設定 で、システム間連携におけるファイル送受信のセキュリティを高められます。
ファイル暗号化ソフトの基本的な5機能
ファイル暗号化ソフトを比較検討する上で知っておきたい基本的な5機能を紹介します。
1、ファイルの暗号化
ファイル暗号化ソフトのメイン機能です。暗号化アルゴリズムと鍵を利用してファイルの暗号化・復号化を行います。
2、暴露ウイルス対策
暗号化を解くための身代金要求に加え、盗んだ情報を公開すると二重に脅迫する手口のウイルスを「暴露ウイルス」と呼びます。ファイル暗号化ソフトによってデータを暗号化していれば、盗んだ情報を公開されてもダメージはないため暴露ウイルス対策になります。
暴露ウイルス対策のためには、復号化したファイルを物理ディスクに置かず、常に暗号化したファイルのみを保管する仕組みになっているかを確認しましょう。
3、元ファイル消去
ファイルの暗号化を行っても、元ファイルがそのまま残っていては、情報漏洩のリスクは残ったままになります。そのためファイルを暗号化した後は元ファイルを削除しなければなりません。元ファイル消去は、ファイルの暗号化を行った後、元のファイルを自動的に消去する機能です。
4、紛失時の隠匿
PCやUSBなどを紛失しても、内部データを情報漏洩しないようにする機能です。例えば、PC内部の暗号化や、自律的な消去機能などは紛失時の隠匿に相当します。
5、パスワード省略
ファイルの暗号化・復号化のたびにパスワードの入力を求められると、日常業務の生産性が著しく低下します。パスワードの入力を省略し、自動的にファイルの暗号化と復号化を行えるかどうか確認してください。
ファイル暗号化ソフトの導入メリット3つ
ファイル暗号化ソフトを利用することにより得られるメリットは以下の通りです。
1、安全にデータを扱える
ファイル暗号化ソフトによって、ファイルデータをメール添付したりノートPCなどに入れて持ち運んだりといったことをより安全に行えるようになります。万が一ファイルが流出しても、ファイルの中身は解読できず、機密は守られます。
2、情報漏洩のリスク軽減
さまざまなセキュリティ対策によって、ファイルの流出を防止するようにしていても、100%情報流出はない、とは言い切れません。最悪ファイルが流出しても、最後の防衛線としてファイルを暗号化していると、データを解読できないため悪用される危険性が低くなります。
3、会社の社会的信用を守れる
個人情報の流出など、情報漏洩が発生すると、会社の社会的な信用が失墜しかねません。取引先や顧客への賠償金も発生する可能性があります。このような信用リスクを低減するには、ファイルの暗号化も有効です。
ファイル暗号化ソフトを使用するデメリット2つ
ファイル暗号化ソフトは有効なセキュリティ施策ですが、導入することでデメリットが生じる場合もあります。どのような問題が生じやすいのかも確認しましょう。
1、マシンのパフォーマンス低下の恐れ
ファイル暗号化は、どうしてもハードディスクの処理が増えるためマシンのパフォーマンス低下を招く恐れがあります。有料版のファイル暗号化ソフトは性能面でも優秀なケースが多いのですが、製品を比較する際は注意したいポイントです。
2、パスワードを忘れると使えなくなる
パスワードを忘れると使えなくなる点も、ファイル暗号化ソフトのデメリットです。この問題を回避するには、ファイルの暗号化・復号化を自動化して、ユーザーはパスワードを入力しないタイプの製品を検討しましょう。
ファイル暗号化ソフトの選び方3つ
ファイルの暗号化ソフトを選ぶ際に確認するべきポイントは以下の3点です。
1、暗号化のスピードが速いかどうか
暗号化のスピードが速いかどうかを確認しましょう。サイズの大きなファイルを暗号化・復号化することで、各製品の暗号化スピードが分かります。可能な限り無料トライアルで確認できればいいのですが、確認できない場合はサポートに問い合わせて確認しましょう。
2、操作ミスが起こりにくいか
ファイルの暗号化ソフトは、従業員自身が操作することの多いソフトです。日常的に利用するため、操作はシンプルで分かりやすい製品を選びましょう。操作性も無料トライアルで確認することをおすすめします。
3、サポート体制がしっかりしているか
ファイルの暗号化ソフトは日常的に利用するため、特に導入直後は操作の問い合わせが増加すると考えられます。何かあった場合のサポート体制が充実しているかどうかを確認してください。
まとめ
ファイル暗号化ソフトの導入は、社内の機密情報を守るための重要なセキュリティ施策の1つです。従業員に負担のかからない暗号化・復号化の自動化機能があれば便利ですが、従業員規模や費用との兼ね合いで製品を選んでください。
ご紹介したファイル暗号化ソフトの中で気になる製品があれば、資料を入手して導入を検討してみてはいかがでしょうか。