離職防止ツールを比較検討する場合、そもそも離職防止対策には何が必要で、ツールを導入するとどのようなメリットがあるかを知る必要があります。本稿では、おすすめの離職防止ツールの特徴を紹介・比較するとともに、ツールの基本機能や導入メリット、ツールの選び方についても解説します。
離職防止ツールとは
離職防止ツールとは、従業員の離職を防止するための施策を支援する機能を提供するツールです。離職防止対策を進めるために、必要となる情報の収集と分析およびコンディションケアやモチベーション向上をサポートする機能を提供します。
離職防止ツールの導入目的は、エンゲージメントの可視化とモチベーション向上、コミュニケーションの活性化の3つです。離職防止ツールのタイプと、ツールでできることには何があるかをもう少し詳しく説明します。
1、離職防止ツールのタイプ
離職防止ツールには、主に3種類のタイプがあります。自社の状況によって、何を優先するかを考えて選びましょう。
1:コンディションケアタイプ
従業員の心身のコンディションをケアすることに主眼を置いたタイプです。従業員のストレスチェックを通してコンディションをモニタリング。コンディションの悪い従業員を抽出し、心身のケアをサポートするための機能が充実しています。
2:モチベーション向上タイプ
従業員のモチベーション向上を促す機能が充実しているタイプです。社員同士でのコミュニケーションが取りにくい職場や、風通しの悪い職場を活性化させたい場合に役立ちます。従業員同士で感謝を伝え合う機能はその一例です。
3:採用ミスマッチ防止タイプ
採用ミスマッチを防止するという、入社前に行う離職防止対策に役立つタイプの離職防止ツールです。コンディションケアやモチベーション向上とは別方向から離職を防止するツールなので、他のタイプと合わせて導入することで、さらに手厚い離職防止対策が可能となります。
2、離職防止ツールでできること
離職防止ツールでできることは、主に以下の通りです。
- 従業員のモチベーションの調査:エンゲージメントの可視化
- 社内コミュニケーションの改善:コミュニケーションの活性化
- ピアボーナスを使ったインセンティブ:モチベーションの向上
コミュニケーションの活性化やピアボーナスを使ったインセンティブなどがどれだけ有効かを確認するには、エンゲージメントの可視化が必要です。従業員の状態を継続的にモニタリングすることで、離職防止対策の効果を測定し、対策を改善できるようになります。
離職防止ツール20選徹底比較
ここからは離職防止ツール20製品の特徴を徹底比較します。自社に向いている製品はどれかを探してみてください。
「タレントパレット」
株式会社プラスアルファ・コンサルティング
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド、SaaS、ASP
- 対象従業員規模:250名以上
- タイプ:コンディションケア モチベーション向上
「タレントパレット」は、人材の能力を総合的に管理するタレントマネジメントシステムで、離職防止ツールとしての機能も提供しています。
コンディションケアの機能としては、離職者の傾向分析・離職の予兆検知・モチベーションの可視化を提供。特に従業員の離職予兆をAIでスコア化して検知する機能により、 離職予備軍への早期フォローが可能です。
モチベーション向上の機能としては、エンゲージメントの測定に使える各種アンケートと結果分析機能を提供。コミュニケーションの活性化につなげられる サンクスポイント機能もあります。
「Motify HR」
株式会社アックスコンサルティング
- 参考価格:【初期費用】 330,000~円、スタンダードプラン:440円、エンゲージメントプラン:440円、オンボーディングプラン:440円、OKR・1on1プラン:440円、プレミアムプラン:1,100円(各プランの月額料金はすべて1ユーザー当たり)
- 提供形態:クラウド
- 対象従業員規模:100名以上 1,000名未満
- タイプ:コンディションケア モチベーション向上
「Motify HR」は、離職防止機能や人材育成機能を備えた人事システムです。特に新入や中途入社の社員に対する オンボーディング機能に特徴があり、新入社員が早期離職に至らないようサポート します。オンボーディングとは、新入社員が早く会社に馴染めるようサポートする取り組みのことです。
定期的なエンゲージメントサーベイにより従業員の状態をモニタリングし、毎日出勤時に今の気持ちをワンクリックで入力する仕組みなどを提供。 従業員の状態をリアルタイムに可視化できます。
コミュニケーション活性化の機能としては、会社からの連絡を掲示するカンパニーボードやチームトーク機能を用意。 コメント欄や「いいね」機能などにより、従業員同士のコミュニケーション活性化を図れます。
「Internal Risk Intelligence」
株式会社エルテス
- 参考価格:【初期費用】月額費用の1ヶ月分【月額料金】別途お問い合わせ
- 提供形態:サービス
- 対象従業員規模:50名以上
- タイプ:コンディションケア
社内環境で採取できるさまざまなログを分析する内部脅威検知ツール「Internal Risk Intelligence」。ログの分析内容から従業員の勤怠状況を確認できるため、労務リスクを把握する、コンディションケアタイプの離職防止ツールとして利用できます。
労務リスク把握に活用できるログは、勤怠データ・パソコンの操作ログ・Webサイトの閲覧履歴など。パソコンの利用状況から、作業工数を可視化します。10,000以上のリスクシナリオから高精度な分析を実施し、翌営業日には結果をWebポータルに反映できるスピードも魅力です。
分析結果から従業員のストレスや労働環境の問題を検出し、問題を抱える従業員や職場へのフォローを行うことで、より早い段階で離職防止対策が可能です。また、社員が退職する際の情報持ち出しなどのセキュリティリスクも同時に対策できます。
「CUBIC適正検査」は、内定辞退と早期離職の防止どちらにも活用できる適性検査システムです。診断内容は入社前のミスマッチを防ぐことを目的とした採用用と、従業員の性格傾向を測定し早期離職防止に役立てることを目的とした現有社員用の2つに分かれています。
採用用では、性格や興味などを測定できる「個人特性分析」と5科目32種類から選べる「能力検査」の2種類。現有社員用では、個人特性分析に加え、会社への満足度を測る「組織活力測定」や「環境適合測定」など5種類の診断が用意されています。 また、専任担当者が事前設計から受検後の活用まで手厚くフォローしてくれるのも嬉しいポイント。初めて導入する場合でも安心して進めることができるでしょう。 「Goalous」は業務を可視化し、組織力の向上を目指すフィードバック活性化ツールです。目標の進捗を可視化する目標管理ツールと、社員同士の情報共有を活性化させる社内SNSとして機能を持ち、活動共有するとともに目標の進捗確認も行うことが可能です。そうすることで、社員同士のフィードバックや協力が生まれやすくなり、生産性やモチベーションの向上が期待できます。 また、データはマルチリージョンによる分散保管や定期的なバックアップを行っているほか、暗号通信や2要素認証などの不正アクセス対策も実施。さらに運用上のセキュリティとしてプライバシーマークの取得、IPアドレス制限、24時間365日有人監視なども行っています。デリケートな人事情報を扱う上で心配になるセキュリティ面も安心できそうです。 「Compass」は、採用時に実施することで、ストレス耐性や職業適性、個々の能力などを計ることができるWEB適性検査ツールです。 ストレス耐性の項目では、認知スタイル(物事の捉え方)と高ストレス状態からの回復傾向によって、ストレス耐性の度合いを判定します。職業適性では、「職業内容」と「職業イメージ」の2種類が用意されており、適性の高い順から表示されるようになっています。 148問からなる診断内容の結果は、受検後即時に表示することが可能。
採用判定レポート・面接サポートシート・パーソナリティーレポート・フィードバックレポートの4種類に分けられ、見やすい状態で確認できます。面接と合せて実施することで、採用ミスマッチによる離職の減少が期待できるでしょう。 「ラフールサーベイ」は、約3,000社の社員18万人以上のメンタルヘルスに関するデータを活用した、コンディションケアタイプの離職防止ツールです。先述のデータを基に、大学や臨床心理士の知見を取り入れた独自の調査項目を使ったサーベイで、従業員のコンディションを把握できます。 サーベイは、月1回の実施で定点観測に役立つショートサーベイ(19項目)と、年数回の実施で細かな状況把握に役立つディープサーベイ(141項目)の2種類を用意。調査データは数値やグラフを用いて分かりやすく表示されます。また、従業員個人の情報はもちろん、部署やテレワーク有無といったセグメント別での集計も可能です。 心身の健康状態やエンゲージメント、ハラスメント離職リスクが可視化されることで、社員が安心して働ける職場環境をつくり、人材の定着と組織改善に繋げることができます。 「HRRing」は、人材コンサルティングとして豊富な実績をもつ株式会社カケハシ スカイソリューションズが開発した離職防止ツールです。 今日のコンディションを自動で問いかける「パルス機能」と、多岐にわたる質問項目を備えた「アンケート機能」で、従業員のコンディションをリアルタイムで把握することが可能。くわえて、賞賛文化を作るピアボーナス機能「ポジポ機能」も搭載しています。従業員のモチベーションアップも期待できます。 また、ダイレクトメッセージで個人やグループを作って会話できるチャットツールのような「トーク機能」も搭載。テレワーク下でのコミュニケーション活性化に役立ちます。
「HR OnBoard」は、悩みを抱える社員がひと目でわかる、社員定着・活躍支援ツールです。テレワークで見えづらい社員の状況も毎月の自動配信アンケートによりコンディションの見える化が可能。心境変化やモチベーション変化の定点観測により、離職予兆を素早くキャッチします。
さらに、人材大手であるエン・ジャパンの独自メソッド「GRC分析」を通して、離職リスクの分析・対策まで支援。自社に潜む人材課題の発見により定着率向上に繋がります。
「Geppo」は、従業員が毎月わずか3問の設問に回答するだけでコンディション変化の見える化を実現する組織サーベイ・組織診断ツールです。
Geppoはサイバーエージェントで3年間運用された組織診断ツールをベースに、人材大手のリクルートが持つノウハウを結集。オンライン上のわずかな操作だけで、社員のあらゆる本音を引き出します。さらにダッシュボード画面では分析・レポート化も容易に。人事や現場の負担を増やさず、組織の人材課題解決を支援します。
「Wevox」は、社員のエンゲージメント向上をサポートするエンゲージメント解析ツールです。サーベイ実施からデータ集計・分析・アクションプラン設計に至るまで、データとAIによる改善サイクルをワンストップで実施。従来の勘や経験に頼ったマネジメントから脱却し、定量データにもとづいた適切なアクションの検討が可能です。
さらに、サーベイのやりっぱなしを防ぐために、プロジェクト設計や社内メンバー向けトレーニング実施など、システム活用を徹底的にサポート。組織のエンゲージメントに向き合ったサービスを提供します。
クラウド型のタレントマネジメントシステム「カオナビ」。パフォーマンスプラン以上から利用できる社員アンケートや、有料オプションのパルスサーベイにより、離職防止ツールとしても利用できます。
機能は主にコンディションケアに関するもので、パルスサーベイやアンケートで社員のコンディションを定期的に調査
して、心身の状態に悪化が見られる従業員への早期フォローをサポートします。
また、アンケートと退職面談で離職者の分析や 残業時間などの情報から、離職予兆のある従業員を抽出する分析機能
「適性検査CUBIC」
株式会社トライアンフ
「Goalous
」
株式会社Colorkrew
「Compass」
株式会社イング
「ラフールサーベイ」
株式会社ラフール
「HRRing」
株式会社カケハシ スカイソリューションズ
「HR OnBoard」
エン・ジャパン株式会社
「Geppo(ゲッポウ)」
株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー
「Wevox」
株式会社アトラエ
「カオナビ」
株式会社カオナビ
「ミキワメ」
株式会社リーディングマーク
- 参考価格:【導入支援料】 300,000円、【月額料金】ベーシックプラン:500円/1ユーザー
- 提供形態:クラウド、SaaS
- 従業員規模:全ての規模に対応
- 売上規模:全ての規模に対応
- タイプ:採用ミスマッチ防止
「ミキワメ」は、クラウド型の適正調査サービスで、採用候補者の選考過程で自社への適正を確認して、採用ミスマッチを防止 するツールです。あらかじめ従業員にも性格アンケートを実施し、採用候補者の性格アンケート結果との比較で自社にマッチした人材かどうかの判断をサポートします。
採用候補者の自社での活躍度をパーセンテージで表す機能 や、応募者が自社の従業員の中では誰に似ているかなどの分析を実施。採用候補者の性格をより理解しやすくします。
「THANKS GIFT」
株式会社Take Action
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド、SaaS
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- タイプ:モチベーション向上
「THANKS GIFT」は、従業員のモチベーション向上に関する機能を豊富に提供する離職防止ツールです。
本製品の主な機能は、上司・部下など従業員同士で贈り合う「サンクスカード 」機能です。この機能は、受け取ったサンクスカードを可視化し、感謝されることの多い従業員が誰かを確認できる仕組みです。感謝を贈り合うだけなのでネガティブな反応はなく、従業員のモチベーション向上に繋がります。
他にも、ランキング機能やMVP表彰機能などのレコグニション機能 (表彰・称賛する仕組み)は、従業員のモチベーション向上に役立つ機能です。経営理念を伝える機能や社内コミュニケーションのための掲示板・チャット、エンゲージメント診断なども用意。従業員のやる気を引き出す施策を支援します。
「1on1 Talk」
株式会社サイダス
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:サービス、クラウド、SaaS
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- タイプ:モチベーション向上
「1on1 Talk」は、1on1の計画から振り返りまでをサポートする、モチベーション向上タイプ の離職防止ツールです。1on1とは、上司が部下を育成するために行う対面形式での面談を意味します。
本製品は、面談のテーマ選択や現在のコンディションなどを事前に入力し、効率的な面談実施をサポート 。さらに、独自の診断機能によって関係性のレベルを診断して、部下だけでなく上司の成長も促す点が特徴です。
本製品は、テレワークなどで上司と部下のコミュニケーション不足が深刻化し、何らかの対策を行いたい場合に適しています。
「HR-PROG」
株式会社さかえ経営
- 参考価格:【初期費用】 無料 【月額料金】 別途問い合わせ
- 提供形態:サービス、クラウド、SaaS、ASP
- 対象従業員規模:100名以上
- タイプ:採用ミスマッチ防止 コンディションケア
「HR-PROG」は、採用前と採用後の両方で利用でき、 人事判断機能により優秀な人材を採用・定着化するための施策までをサポートする離職防止ツールです。
企業の組織・職種単位で求めるべき人材の特性を分析し、採用基準を明確化 。採用のミスマッチを防止して優秀な人材を採用できるようサポートします。社内では従業員の状態を把握して、 従業員の活用方針や対策方法を100種類の中から選択・提案します。
採用前後で適切な採用と適材適所の組織編成をサポート。さらに従業員1人ひとりに合った施策を進めることで、離職の防止が期待できます。
「thanks!」
株式会社アルト
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド、SaaS
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- タイプ:モチベーション向上
「thanks!」は、感謝を伝え合う ことで組織力を上げつつ、各従業員のモチベーション向上も目的とする離職防止ツールです。
感謝や称賛をポイントとして登録し、メッセージはポジティブなスタンプも活用 することで社内のコミュニケーションを活性化します。会話には掲示板やDMを活用。メッセージ数や獲得ポイント数を集計・分析して 組織のコンディションを可視化することも可能です。
貯まったポイントは報酬と交換可能。ランキングや表彰サポートも、従業員のモチベーション向上に役立つ機能です。
「BEST TEAM」
株式会社Take Action
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド、SaaS
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- タイプ:モチベーション向上
「BEST TEAM」は、自分の会社に愛着が持てるような社内報作成をサポート することで、従業員のモチベーション向上を目的とするツールです。社長や活躍している社員へのインタビュー記事などで、経営理念から同僚が今どのように働いているかを伝えることもできます。
自社の感動ストーリーや社員の表彰式を公開することで、自社への愛着心を醸成。社内イベントの様子を動画で紹介、さらにスタッフ紹介・検索機能などで従業員の相互理解を深めます。また、 社内報とサンクスコスト機能とを連動することで、賞賛を伝え合う社風も育てます。
「Visual」
株式会社QuickWork
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド、SaaS
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- タイプ:コンディションケア
「Visual」は、コンディションケアタイプの離職防止ツールです。従業員リストを登録すると、アンケートを一括送信。回答結果から エンゲージメント・eNPS(従業員ロイヤルティ指標)・離職率予測を算出・可視化 します。従業員個人だけでなく組織単位でも課題を抽出でき、課題の改善を進めることができます。
本製品は、コンディションチェックだけでなく、具体的な改善提案まで行える点も特徴の1つです。150パターンもの改善案から最適なプランを自動的に提示し、離職防止のアクションをサポートします。 アンケート実施と改善を繰り返すことで、従業員のコンディションケアを進め、離職率低下を実現します。
「レキシルシリーズ」
株式会社ビットミックス
- 参考価格:【初期費用】11万円 、レキシル:15,400円/1人、レキシル+:66,000円/1人
- 提供形態:クラウド
- 対象従業員規模:50名以上
- タイプ:採用ミスマッチ防止
「レキシルシリーズ」は、インターネット上に存在する情報から応募者の情報を収集し、 採用に適した人物かどうかを評価する採用リスク回避ツール です。離職防止対策ツールとしては、採用ミスマッチ防止タイプとして利用できます。
収集する情報は、SNS情報、インターネットの掲示板、マスメディア情報など。 さまざまなデータから応募者の情報を収集し、採用後にトラブルを起こす可能性があるかどうかを評価 したレポートを受け取ります。
そもそも離職防止対策とは
離職防止対策とは、端的に言えば従業員の離職を防止するための対策です。離職防止対策は、以下の2パターンがあります。
- 従業員の離職を防止するための対策
- 自社とミスマッチな人材の採用を避ける対策
離職防止対策を進める前に知っておきたい、離職理由の把握と離職を放置するリスク、具体的な離職防止対策について、以降で詳しく解説します。
1、離職につながる3大理由は人間関係・給与・労働条件
厚生労働省の「令和2年上半期雇用動向調査結果の概況 」によると、転職・入職者が前職を辞めた理由として「その他の理由(出向等を含む)」「定年・契約期間の満了」を除くと、男性・女性で以下の理由が上位に挙がっています。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
1 | 給料等収入が少なかった(9.7%) | 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(12.5%) |
2 | 職場の人間関係が好ましくなかった(9.0%) | 職場の人間関係が好ましくなかった(12.5%) |
3 | 会社の将来が不安だった(8.1%) | 給料等収入が少なかった(9.4 %) |
男性の3番目に「会社の将来が不安だった」がランクインしていますが、その他は基本的に人間関係・給与・労働条件に集約されます。従業員がこれらの不満を抱えた状態のまま放置していると離職につながることが分かる数字です。
引用:「令和2年上半期雇用動向調査結果の概況 ―」厚生労働省ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-1/dl/gaikyou.pdf
2、離職防止対策を怠ることで起こり得る3つのリスク
離職防止対策を怠ると、離職する従業員が増えて、さまざまなリスクが表面化します。中でも注意したい3つのリスクについて解説します。
1:今いる従業員の業務負担増加
従業員が離職すると、職場に残された他の従業員の業務負担が増加します。離職した従業員が職場のキーマンだと大きな負荷が他の従業員にかかり、次の離職者が出る、という悪循環も十分あり得ることです。
2:欠員補充のための費用と時間
離職した従業員の補充として新しい人材を採用する場合は、採用活動や育成が必要です。これらには多大な費用や時間がかかります。離職者が多くなると欠員補充にかかる費用も膨れ上がり、業績にも影響を与えかねません。
3:優秀な人材の流出
離職率の高さを放置していると、社内にはあまり優秀ではない人材ばかりが残っている、という状態になる危険性があります。離職者を放置すると従業員への負荷が増えますが、均一に負荷が増えるとは限りません。優秀な従業員ほど負荷が多く離職してしまう、という光景はどの現場でもよく見られます。
3、具体的な離職防止対策6つ
それでは、離職防止対策としては、具体的に何をすればいいでしょうか。ここでは、6つの対策を紹介します。
1:適正な労務管理の推進
離職防止対策の第一歩は、従業員の適正な労務管理です。労働条件が悪いと、離職の大きな原因となるため、従業員が心身ともに健康で働けるような労働環境を整えることが重要です。勤怠管理システムなどで勤怠状況を可視化して、長時間労働にならないような対策や、休暇取得の励行などを促します。
2:離職防止ツールなどによる社内コミュニケーション活性化
離職の原因となる人間関係の問題への対策として、社内コミュニケーションの活性化も重要視したい対策です。社内コミュニケーション活性化により働きやすい環境となり、組織力も高まります。経営層から従業員へのメッセージ、上司と部下・部門を超えたコミュニケーションの円滑化がはかれる施策を進めましょう。
離職防止ツールの中には、チャットや掲示板、感謝を伝え合う機能など、社内コミュニケーションを活性化できる機能を提供している製品もあります。
3:テレワークや時短勤務など多様な働き方ができる環境整備
労働の意欲はあるのに、育児や介護などの理由があり、働くことをあきらめている労働者もいます。そういった人たちも働けるよう、柔軟な働き方(テレワーク・フレックスや時短勤務など)ができる環境整備も、離職防止対策として有効です。
4:健康やスキルアップなどをサポートする福利厚生の充実
労働条件の改善策として、福利厚生を充実させることも離職防止対策になります。余暇支援や健康支援、自己啓発支援などはおすすめの福利厚生です。余暇支援や健康支援は従業員の健康増進に役立ち、自己啓発は昇給昇進による給料アップをサポートできます。
5:人事部や管理職のマネジメントスキル向上
会社の人間関係に問題がある場合、人事部や管理職のマネジメントスキルを磨くことで問題解決が期待できます。人事部や管理職向けのマネジメントスキルを学ぶ研修やセミナー受講を勧めるなどの対策も検討しましょう。
6:離職防止ツールによる定期的なサーベイ
従業員に対して定期的にコンディション調査(サーベイ)を行うことも重要です。離職防止対策が順調に進んでいるかどうかを確認するためには、定期的なモニタリングが欠かせません。また、離職の可能性が高まっている従業員の発見にも利用できます。
離職防止ツールの基本的な5機能
離職防止ツールが提供する機能は、主に5種類です。ツールによっては全て対応していない製品もあります。自社の利用目的に合った機能が提供されているかどうかを確認するためにも、どのような機能があるかを把握しておきましょう。
1、調査の作成
従業員のコンディションやエンゲージメントを調査するためのアンケート項目作成機能です。標準的な項目を準備している製品もあれば、アンケート項目を自社に合わせて変更できる製品もあります。
2、調査の展開
従業員にアンケートを募集する連絡を一斉送信する機能です。通知方法としては、メールや社内で利用しているSlackなどのビジネスチャット、スマートフォンのプッシュ通知などがあります。
3、調査分析
従業員が回答したアンケートの内容や、調査対象のログなどを収集して分析する機能です。離職予測ができる製品もあります。分析結果を見やすく表示できるか、従業員・部署・性別など複数の切り口で分析できるかといった点は、比較検討するポイントです。
4、ゲーミフィケーション
ゲーミフィケーションとは、ゲーム的な要素を別の分野で取り入れることです。日常業務にゲーム的な要素を取り入れることで、従業員のモチベーションを高めるような仕組みを提供します。
感謝を贈り合うサンクスポイント制度やランキング制度は、ゲーミフィケーションを取り入れることで従業員のモチベーションをアップできる機能です。
5、レポートとダッシュボード
従業員のアンケート結果などを分析した結果をレポートに出力し、管理画面のダッシュボードとして表示する機能です。見やすく分かりやすいレポートや画面構成かどうかが比較するポイントとなります。
離職防止ツールの導入メリット5つ
離職防止ツールを導入することでもたらされるメリットは以下の5つです。
1、社内環境や従業員の内面を可視化・改善
従業員のコンディションやエンゲージメント調査により社内の労働環境や従業員の内面を可視化できる点は、離職防止ツール導入の大きなメリットです。問題点が判明すれば、改善の糸口がつかめます。
2、個別フォローが可能
離職防止ツールにより、なかなか表面化しなかった突然の離職も事前に検知可能になるため、問題を抱える従業員への個別フォローができるようになります。離職の意思をなかなか示さない従業員に対しても、スピーディーな対策が可能です。
3、離職者データの蓄積および分析
離職者に対するアンケート機能を活用することで、離職者のデータを蓄積・分析できます。自社の離職者がどのような理由で辞めていったのかが明確になり、企業として対応するべき課題の発見と対策が可能です。また、従業員の傾向分析と比較することで、離職しやすそうな状況にある従業員を発見するのにも役立ちます。
4、従業員満足度の向上
社内コミュニケーションの活性化やモチベーション向上に関する機能を活用することで、企業に対する従業員の満足度向上も期待できます。社内の風通しが悪い、人間関係に問題がある、といった問題を抱えている企業にとって、これらの機能は離職防止の大きな力となります。
5、外部からの評価の改善
離職防止ツールによって離職率が低下すると、働きやすい企業として外部からの評価も改善します。就職活動を行っている学生や求職者の評価も高まるため、採用活動にも良い影響が出ます。
離職防止ツールのデメリット2つ
離職防止ツールには多くのメリットがありますが、一部デメリットもあるため確認しておきましょう。
1、コストがかかる
離職防止ツールの導入にはコストがかかります。初期費用や月額料金だけでなく、離職防止対策を推進する人件費も必要です。離職防止ツールにより、労務管理の効率化が行えますが、ツール導入・運用の総コストは確認しましょう。
2、効果が分かりづらい場合も
離職防止ツールを導入してすぐに離職率の低下に繋がるとは限りません。社内の労働環境を把握するため定期的にアンケートを取り、継続的に離職を防止する施策を進めていく必要があります。そのため効果が出るまでには少し時間がかかり、すぐには効果が分かりにくい点も留意しましょう。
離職防止ツールの比較ポイント6点
離職防止ツールの製品を比較検討する際に確認したいポイントを紹介します。自社に合った製品を選ぶために、忘れずチェックしましょう。
1、現場への浸透のしやすさ・使いやすさ
従業員防止ツールは、全従業員が頻繁に利用することが想定されます。定期的に従業員のエンゲージメントや心身のコンディションを確認するアンケートに答えやすい、使いやすいツールでないと、運用が回らず効果も上がりません。
操作性の良さはもちろん、従業員に負担をかけず答えられるアンケートにするなど、運用も工夫できる製品を選びましょう。
2、フォローや研修のサービスの有無
離職防止ツールで成果を上げるポイントは、離職の可能性がある社員を抽出した後のフォロー体制整備にあります。産業医や保健師が在籍していない企業の場合は、フォロー体制の整備が必要です。
フォロー体制整備が必要な起業は、フォロー代行サービスや、フォロー担当者を育成するフォロースキル研修サービスを用意している製品がおすすめです。
3、他社事例(できれば同業他社)
各製品とも、公式サイトに導入事例を紹介しています。導入事例によって、自社で導入する際どういう点に注意し、どの機能を活用すればいいのかといったことを具体的にイメージできます。同業他社の導入実績が多い製品なら、導入や運用面でもスムーズに進みやすくおすすめです。
4、組織の可視化がしやすいかどうか
離職防止ツールは、どの製品も組織を独自の見せ方で可視化する機能があります。ただ、その見せ方は製品ごとに特徴があるため、比較検討する際は必ず確認したいポイントです。
無料プランやトライアル版などで、従業員のエンゲージメントや心身のコンディションがどうなっているかを分かりやすく表示できているかを確認しましょう。
5、料金体系
料金体系は、初期費用と月額料金がメインで、その他オプション機能やサービスメニューの料金がかかります。月額料金は1ユーザーあたりの料金設定が多い傾向です。別途見積もりの製品もいくつかあるため、気になる製品があれば見積依頼を出し、1年間あたりの総コストを比較しましょう。
6、自社の従業員規模に合っているか
離職防止ツールは、従業員規模50名以上を対象としているものも多く見られます。これは、ストレスチェックを義務付けられている事業場の基準と同じです。50名未満の組織にも導入できる製品もあるため、自社の従業員規模が50名未満の場合は、特に注意して選びましょう。
離職防止ツールを導入して業務効率化を!
離職防止ツールは、従業員の労働環境を改善し、働きやすい職場を実現するサポートツールです。定期的にアンケートを実施して従業員の心身の状態やエンゲージメントの状態をモニタリング、必要な対策を決めて継続的に改善することで、離職率の低下を目指せます。
離職防止ツールを導入する場合は、どのような目的があるかを明確にして、必要な機能を提供している製品を選ぶことが重要です。複数の製品を比較して自社に最適のツールを選びましょう。