オンラインストレージとファイルサーバーは、どちらも「ファイルを格納・共有する」という点では同じ役割を果たしています。しかし、両者にはそれぞれ特徴があり、利用シーンによっては使い分けが必要です。本稿では、オンラインストレージとファイルサーバーの違いと、オンラインストレージを導入するメリットについて解説します。
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オンラインストレージとは
オンラインストレージとは、インターネット上にファイルを格納・共有できる「保管庫」を提供するクラウド型のサービスです。「クラウド型ファイルサーバー」という呼称が使われる場合もあります。
クラウドサービスなので、社内にサーバーマシンを設置する必要はありません。契約プラン分の容量内で自由に利用でき、プランを変更して利用容量を増やす場合も環境設定など不要で簡単です。
インターネットを介してアクセスできるため、社外とのやり取りにも使えます。メールでzip付きファイルとパスワードを別々に送信する「PPAP」がセキュリティ上問題となっていますが、オンラインストレージを代替手段とすることも可能です。
ファイルサーバーとは
ファイルサーバーとは、自社ネットワーク内に配置するファイル置き場用のサーバーを指す言葉です。
インターネット回線を介する必要がないため、一般的には性能が安定しており、社内や部署内でのファイル共有には便利です。社外からは直接見えない状態であり、オンラインストレージと比較するとサイバー攻撃にさらされる危険は少ないと言えます。
オンラインストレージとファイルサーバーの違いとは
オンラインストレージとファイルサーバーのもっとも大きな違いは、サーバーの置き場が社内かクラウド環境内(社外)か、という点です。ただ、この違いによって、オンラインストレージの優れている点とファイルサーバーの優れている点に違いが出ます。
以降では、両者を比較してそれぞれの優れている点について詳しく解説します。
1 オンラインストレージがファイルサーバーより優れている点4つ
社外のクラウドサービスとして提供されるオンラインストレージは、ファイルサーバーよりどの部分が優れているでしょうか。
1 データの共同編集・一元管理が可能
オンラインストレージは、基本的にデータを一元管理し、共同で編集できる機能を備えています。データを一元管理すると、さまざまなバージョンがあちこちに散在するケースは少なくなります。基本的にはファイルサーバー上の1ファイルを全員が見て、同じファイルを修正するという制御が可能です。
ファイル共有の場面では、複数人がひとつのファイルに対して編集するケースが少なくありません。ファイルサーバーでは同時に編集してしまい、誰かの編集内容を消してしまう事故はよく見られます。
オンラインストレージは、複数人が編集しても他人の編集内容を書きつぶすことなく、データの安全性を保ちます。
2 バックアップやメンテナンスが簡単
オンラインストレージはクラウドサービスなので、データのバックアップや容量追加・ハードウェアトラブル時の対応はすべてサービス提供者が行います。データをどのような頻度でバックアップするか、どのようなバックアップ方法かは、契約プランによって異なる場合もあり、導入時には検討が必要です。
自社でサーバーの運用を気にしなくていい点は、オンラインストレージを利用する大きなメリットのひとつと言えます。
3 社外からも手軽にアクセス可能
オンラインストレージは、社外からも手軽にアクセス可能です。ファイルサーバーは、社外からアクセスするにはそれなりの設備・環境設定が必要となります。
オンラインストレージは、自社設備や環境構築は一切不要。ユーザー登録を行うかゲストユーザーとしてアクセスできる設定にするなど多少の設定は必要ですが、手軽に社外からのアクセスを実現できます。
4 BCP対策になる
オンラインストレージを使っていると、自社とは別環境でファイルを保管しているため、BCP対策にもなります。BCPとは日本語で「事業継続計画」と言い、天災やシステム障害などが発生した場合でも、事業が継続できるようにするための計画のことです。
オンラインストレージサービス自身のBCP対策については、サービスによって異なるため、実際にサービスを比較検討する際は要確認です。
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2 ファイルサーバーがオンラインストレージより優れている点2つ
ファイルサーバーがオンラインストレージより優れている点は、インターネット上に公開していないためセキュリティが高いという点と、インターネット回線がなくても利用できる点です。
1 セキュリティが高い
ファイルサーバーは、社内ネットワーク内に設置し、インターネット上に公開しません。そのため、外部の攻撃にはさらされにくく、ネットワークセキュリティを保護する各種セキュリティツールなどにも守られているため、セキュリティは高いと言えます。
ただ、サイバー攻撃の手口も年々巧妙化しているため、社内ネットワークのセキュリティ対策が手薄だと、安全とは言い切れません。また、内部からの不正アクセスを防ぐために、適切なアクセス制御や操作ログ監視などの対策も必要です。
2 インターネット回線がなくても利用できる
ファイルサーバーは、社内ネットワークにつながっているため、インターネット回線がなくても利用できる点も大きなメリットのひとつです。インターネット回線は通信の混雑状況などで通信品質が不安定になる場合もありますが、ファイルサーバーは社内回線のみを使うため通信品質は安定しています。
オンラインストレージ導入時の注意点3つ
これまで運用していたファイルサーバーはそのまま活かし、社外とのやり取りなどの目的でオンラインストレージを新たに導入する場合もあるでしょう。これからオンラインストレージの導入を検討するという場合は、注意点が3点あるためご確認ください。
1 オフライン対策を検討しておく
オンラインストレージは、インターネットが利用できないと使えなくなります。もし何らかのトラブルでオフラインの状態が続く場合、業務を続けるためにはどうするかの対策を検討しておきましょう。
2 セキュリティ管理に注意する
インターネット上にファイルを保存する関係上、セキュリティ管理には注意が必要です。オンラインストレージサービスの中には、有料プランまたは法人プランでセキュリティを高める機能を提供しているケースも多く見られます。
製品選定の際は、各製品のセキュリティ関連機能をしっかりと調査し、自社の求めるセキュリティレベルに合った機能を持つ製品・プランを選択しましょう。
3 バックアップやメンテナンスの仕組みを確認する
オンラインストレージの運用は、すべてサービス提供者任せです。逆に言えば、運用は利用者側から見るとブラックボックスだと言えます。
サービスの契約前には、データセンターの位置やバックアップの方法、メンテナンスの対応時間(24時間365日監視体制か、時間が限られているか)なども確認しましょう。無料ツールよりは、有料ツールで法人向けプランを契約する方が、運用面でも手厚いケースが多く見られます。
データのバックアップに関しては、同じデータセンターだけでなく、多エリアのデータセンターでもバックアップを取っているかを確認しましょう。バックアップの体制が心もとない場合、オンラインストレージ以外に、社内にもバックアップサーバーを置くなどの対策が必要です。
オンラインストレージのメリットデメリットを確認して導入を
オンラインストレージは、インターネットを介してファイルの共有ができる、利便性の高いツールです。ファイルサーバーは社内ネットワークで利用するという点が大きな相違点です。
オンラインストレージは便利ですが、インターネットを利用するからこそ、通信障害時の対策やセキュリティ面など、デメリットとなる部分もあります。法人向けのオンラインストレージサービスは、これらのデメリットに対して何らかの対策を行っているケースが多いので、製品検討や機能調査の際、忘れずに確認しましょう。
オンラインストレージサービスの導入を検討している場合は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
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