運送業の労務管理は、従業員の多くがドライバーとして外出している状況があり、業界特有の問題を抱えた状態です。本稿では、運送業の労務管理の現状や課題を整理した後、労務管理を効率化するポイントと労務管理システム導入のメリットを解説します。最後におすすめの製品を紹介しているのでぜひ参考にしてください。
運送業の労務管理の現状や課題
運送業の労務管理の現状はどうなっているのでしょうか。まずは現状の把握と業界が抱える課題について把握しましょう。
1 人の出入りが激しく入退社処理が多い
国土交通省の資料によると、トラックドライバーの有効求人倍率は、平成30年4月の時点で2.68。全職種は1.35なので、2倍近く高い数字で、深刻な人手不足が伺えます。
労働環境を見てみると、トラックドライバーは全体の平均と比べて低賃金・長時間労働です。このような事情もあり、人が入ってきても労働環境によって辞めていく人も多く、入退社処理が大変であることが推察されます。
2 ドライバーは会社にいないことが多く労務処理が進まない
運送業の従業員は、多くがドライバーです。ドライバーは基本的に外回りの仕事なので、会社にいないことが多く、労務処理があってもなかなか進みません。毎年必要な年末調整の時期になると、紙書類の配布・記入・提出に多くの時間と労力がかかります。
これまでは、役所へ書類を提出する際は紙書類が求められていたため、紙運用を完全に廃止できない、という背景もありました。しかし、「e-Gov電子申請」による電子申請が可能となり、労務管理システムも電子申請への対応が進み、労務処理のペーパーレス化は加速している状況です。
運送業の労務管理を効率化するポイント2つ
運送業の労務管理を効率化するポイントは、各種労務手続きの効率化と、在社していない従業員への対応の2点です。
1 各種労務手続きの効率化
各種労務手続きを紙ベースで行っていると、書類の配布・記入・回収などさまざまな作業に多くの人が関係します。人が多くかかわる分、業務を終わらせるまでにどうしても時間がかかる点がネックとなります。また、手書きは記載ミスや字が読み取りにくく処理に時間がかかる点も問題です。
これらの問題に対処するためには、労務手続き自体をペーパーレス化し、電子申請まで行える仕組みを整えることが必要です。
2 社外からも労務手続きが進められること
従業員があまり在社していないという現状の改善は難しいでしょう。方向性としては、従業員が社外にいても、労務手続きを進められる仕組み作りが重要です。
運送業が労務管理システムを導入するメリット2つ
運送業の労務管理を効率化する解決方法のひとつが、労務管理システムの導入です。システム化により得られる2つのメリットについて解説します。
1 各種労務手続きの自動化による業務効率化
労務手続きは、労務管理システムによって大幅な業務効率化が可能です。労務手続きが必要な従業員に通知を流した後、従業員が手続きを済ませると「回収」の手間なく自動的に上司・管理者へ連絡。チェックが済んだ書類は、必要に応じて電子申請を行います。
2 モバイル対応で社外からも労務手続きが進められる
現在多くの企業が採用しているクラウド型の労務管理サービスなら、導入するだけで社外接続ができるため、従業員の労務手続きを大幅に改善できます。外出している従業員は、待ち時間があればすぐにでもスマホやタブレットなどのモバイル端末を使った労務手続きが可能です。
運送業におすすめの労務管理システム5選
ここまで解説してきた内容を踏まえて、運送業におすすめの労務管理システムを5製品紹介します。いずれの製品も、各種労務手続きを自動化し、モバイル対応でドライバーが社外から労務手続きを進められます。
すでに導入している他の人事系システムとの相性や、その他の機能、価格などを比較して導入製品を検討してください。
1 ジョブカン労務管理
「ジョブカン労務管理」は、書類の配布・提出のすべてをなくし、オンラインで処理できるようにしたクラウドサービスです。
年末調整や各種手続き・マイナンバー管理もすべてシステム上で操作するだけ。従業員側は、インターネットに繋がる環境なら、いつでもどこでもスマホなどから年末調整など労務上の手続きを進められます。
管理部門にとっても、本ツール導入により大幅な業務改善効果が期待できます。従業員とのやり取りにかかるコストを削減でき、電子申請を利用することで役所に出向く必要もありません。
労務管理機能のみをシステム化したい場合、本ツールがおすすめです。また、ジョブカンシリーズには勤怠管理と給与計算もあるため、自社の人事系業務全体のシステム化を検討する場合は、シリーズでの導入もご検討ください。
2 人事労務freee
「人事労務freee」は、労務管理だけでなく、給与計算、勤怠管理などの人事労務関連業務をすべてシステム化できるクラウドサービスです。人事系データを一元管理するため、無駄なくデータを共有し、何度も同じ情報を集める必要がありません。結果、人事労務関連業務全体の効率化が進みます。
労務管理は、年末調整を始めとしてすべてペーパーレス。従業員は、会社に戻らなくてもスマホからデータ入力するだけで年末調整を済ませられます。クラウドサービスなので、最新の法令や税制対応もすべてサービス提供者側が実施。常に最新の状態で利用できる点も、管理部門にとって見逃せないポイントです。
労務管理機能をフルスペックで利用する場合は、ベーシックプラン以上の有料プランを選びましょう。
3 マネーフォワード クラウド社会保険
「マネーフォワード クラウド社会保険」は、社会保険手続きのオンライン化が可能なクラウドサービスです。マネーフォワードのHRソリューションでは、労務管理機能を以下のように細かく分けて提供しています。(2021年3月23日時点)
- クラウド勤怠
- クラウド給与
- クラウド人事管理(2021年春リリース予定)
- クラウド社会保険
- クラウド年末調整(2021年夏リリース予定)
- クラウドマイナンバー
労務管理関連業務をすべてオンライン化する場合は、人事管理・社会保険・年末調整・マイナンバーの4サービスを組み合わせます。
クラウド社会保険は、手続き業務の電子化、対応状況を管理できる画面、電子申請など、運送業に求められる機能をすべて完備しています。料金体系は基本料金+利用人数による従量課金+オプション料金となっているため、総コストを計算し、他の製品と比較しましょう。
4 オフィスステーション 労務
「オフィスステーション 労務」は、労務管理全般をオンライン化し、ペーパーレスで電子申請までを一気通貫で行えるクラウドサービスです。年末調整とマイナンバー管理は別サービスなので、必要に応じて組み合わせて利用します。
本製品の大きな特報は、対応帳票類が116種類と多い点です。また、通信経路・データの暗号化やWAFによる不正アクセスの防止、自動データバックアップなどセキュリティ面の機能もしっかりしています。
価格体系もシンプルで、初期費用と保守費用は不要で月額料金のみと分かりやすい点も魅力。他の製品で対応している帳票の種類に不満がある場合は、本製品を検討してはいかがでしょうか。
5 SmartHR
「SmartHR」は、人事・労務関連の業務をオールインワンで提供するタイプのクラウド労務管理サービス。機能が充実している労務管理サービスを導入したい場合は、ぜひ選択肢のひとつとして検討したい製品です。
各種労務手続きのオンライン化、マイナンバーや年末調整なども本サービスですべて対応可能。運送業の労務管理で必要となるマルチデバイス対応やオンラインでの手続きももちろん行えます。
人事関連機能では、人事情報を一元管理して組織図や従業員リストを在職・休職・退職等のステータス別に表示できるなど、管理面で便利な機能もあります。権限管理やメール・ToDoなどのテンプレートは、自社用にカスタマイズ可能です。
また、外部サービス連携も充実。「マネーフォワードクラウド給与」などの外部サービスと従業員データ同期、ChatWorkなどのビジネスチャットへの通知も可能です。社内の連絡手段にビジネスチャットを導入している場合は、通知をチャットに流すことで従業員が通知に気づきやすくなります。
運送業の労務管理改善にシステム化の検討を
運送業の労務管理は、現場に出ているドライバーがなかなか本社に戻ってこられないという特性上、システム化による改善が可能です。
現在主流となってきているクラウド型の労務管理サービスなら、導入も簡単でスマホから手軽にアクセス。役所に出向かず電子申請まで、従業員だけでなく管理部門の業務すべてをオンライン化・効率化します。