PDFファイルの高度な編集や変換を行いたい方におすすめなのが、ソースネクスト社の「いきなりPDF」です。
PDF編集ソフトとしてはAdobeのAcrobatが有名ですが、サブスク制のため月額料金がかかり続けるのが難点です。その点、いきなりPDFは買い切り型のため、ランニングコストはかかりません。
本記事では、いきなりPDFの主要機能の内容と使い方、そして実際の使用感まで、Adobe Acrobatとの比較も交えながら詳しく解説します。パスワード保護、データロック、逆変換機能など、PDFを本格的に活用したい方はぜひ参考にしてください。

買い切り価格9,900円で、月額制のAcrobatに対抗できるのか? 実際に使ってみた感想とともに、その答えをお伝えします。
いきなりPDFの主要機能一覧
ソースネクストの「いきなりPDF」は、PDFの詳細設定や変換に特化したツールです。主な機能を、下記の表にまとめました。
機能 | 内容 |
---|---|
作成 | 各種文書データからPDFファイルを作成 – フォーマット変換 – パスワード保護 – 書き換えのロック – データ抽出のロック |
ページ編集 | 既存のPDFファイルの修正 – テキストデータの追加・修正・削除 – テキスト修飾の追加・削除 |
書き込み | PDFデータの新規作成 – 既存PDFをテンプレートにして追記 – PDFデータの完全新規作成 |
変換 | PDFファイルから各種文書フォーマットへの逆変換 |
直接編集 | PDFデータのページの各種編集・調整、マージ |
上記5項目がいきなりPDFの機能分類に対応しており、ランチャーから各機能に直接アクセスできます。
PDFデータにまつわる様々な処理、セットアップを一通りまかなえる機能を備えている点が、いきなりPDFの特長です。

PDFは単純な文書フォーマットに見えますが、実際には公的文書の電子公開に必要な多くの仕組みが組み込まれています。いきなりPDFは、これらの機能をフル活用できるよう設計されているということですね。
業界標準ソフト(Adobe Acrobat)との機能比較
PDFはAdobe社が策定したフォーマットであり、PDFデータに対する様々な操作をフルサポートするアプリとして、同社は「Acrobat」というソフトを販売しています。

そのため、現在もこのソフトがPDFハンドリングに関するベンチマークとなっています。
上記を踏まえ、いきなりPDFとAdobe社のAcrobatの機能を比較してみましょう。
いきなりPDF (COMPLETE) |
Acrobat (Pro) |
|
---|---|---|
各種文書データのPDF化 | ○ | ○ |
OCR機能からのPDF出力 | ○ | ○ |
文書内データの編集 | ○ | ○ |
PDFに注釈を追加 | ○ | ○ |
PDFの容量を圧縮 | ○ | ○ |
PDFのページ編集、統合、分割 | ○ | ○ |
PDFに署名 | ○ | ○ |
PDFファイルを各種文書に変換 | ○ | ○ |
2つのPDFの違いを確認 | ○ | ○ |
入力フォームのあるPDF作成 | ○ | ○ |
PDFのパスワード保護 | ○ | ○ |
PDFの変更ロック | ○ | ○ |
その他付加機能 | ガイドムービー | クラウドサポートによる共有 PDFのワークフローサポート |
価格 | 9,900円/1台(買い切り) | 1,980円/月(サブスク) |
機能面に関しては、両製品にほとんど差はありません。 純粋にPDF操作が目的なら、どちらを選んでも機能的な問題は発生しないと言って良いでしょう。
現在のAcrobatは、PDF操作以外の付加機能で差別化を図っています。例えば、PDFをコアとしたグループウェアによるワークフローサポートや、月額680円追加で利用可能なAIアシスタントなどです。

そういった付加機能を含めた総合機能ではAcrobatが上回りますが、サブスクリプション型のためトータルコストは大幅に高くなります。
一方いきなりPDFは、買い切り型で十分なPDFハンドリング機能を備えているのが特徴です。必要な機能とコストを比較して製品を選択してください。

ちなみに、いきなりPDFには一部の機能を制限した「STANDARD」版も用意されています。STANDARD版の料金は、同じく買い切りで3,980円。機能の詳細は、公式HPをご確認ください。

いきなりPDFが必要な理由
現在、Microsoft Officeなどのオフィスソフトでも、PDFファイル出力は可能です。それでも、いきなりPDFのような専用ソフトが存在する理由があります。
それは、「PDFの電子文書の公開に必要なセキュリティ面の規格に、ほとんどのオフィスソフトが対応できていない」ためです。
具体的には、以下のような機能です。
- パスワードによる文書ロック:特定の人だけが閲覧可能
- 内容の書き換え防止機能:PDFデータの改ざんを防止
- 電子署名機能:文書の正当性を保証
このような用途でPDFを扱うには、Adobe社の「Acrobat」(Acrobat Readerではない)や、いきなりPDFのような専用ソフトが必要です。
ワープロソフトで出力するPDFファイルにはパスワードをかけることができず、書き換え可能なPDFデータの更新機能を持つソフトも限られています。
さらに、いきなりPDFには「逆変換」機能があります。これは「PDFファイルからMicrosoft WordやExcelのデータに変換する機能」ですが、文書の編集作業は扱いやすいWord文書などに変換した方が効率的ですので、利用頻度は高いのではないでしょうか。

いきなりPDFは、このような高度なPDF活用が必要なユーザーにとって必要不可欠なソフトウェアといって良いでしょう。
【図解】いきなりPDFの機能と使い方
前述したように、いきなりPDFには以下の5つの機能があります。
- 作成
- ページ編集
- 変換
- 書き込み
- 直接編集
標準設定でインストールすると、各機能の直接ショートカットがデスクトップに作成されます。また、5つの機能を呼び出すランチャーのショートカットも作成されます。

通常はランチャー経由でアクセスするのが便利です。
以下、各機能の基本的な使い方を解説します。
「作成」
「作成」機能で行えるのは、WordやExcelなどのデータからPDFデータへの変換です。
現在のWordやExcelは直接PDF出力に対応していますが、PDF文書のパスワードロックや内部データの変更・抽出ロックなどの付加機能は使用できません。例えば、e-Taxで生成した確定申告用PDFファイルなどは書き換えができないようロックがかけられていますが、このような公的文書を電子作成するには、PDFデータのロック機能が必要不可欠です。

こういった付加機能を補いながらPDFデータへの変換を行うのが、いきなりPDFのようなソフトとなります。
また、変換時にPDFファイルの各種付加機能も設定可能です。PDFの付加機能の設定は、「PDFの設定」の「詳細」ボタンから呼び出しましょう。
例えば、PDFファイル自体のパスワードロック、PDFファイル内のデータのロックなどを行いたい場合は、「セキュリティ」タブから設定してください。
「ページ編集」
「ページ編集」は、ファイル内のページ構成の編集を行う機能です。

ページ内データの編集ではありませんので、注意してください。
こちらの機能も、編集したいPDFファイルをウィンドウにドラッグ&ドロップすることで利用できます。
ページの入れ替えや削除だけでなく、指定ページの回転や見開き形状のページ構成への変更も可能です。
「変換」
「変換」は、PDFファイルから様々な文書形式ファイルへの「逆変換」を担う機能です。
この機能もほぼ単機能で、ウィンドウにPDFファイルをドラッグ&ドロップして「実行」するだけで操作が完了します

変換先として選べるファイル形式は、以下の通り。
- Word
- Excel
- リッチテキスト(RTF)
- CSV
- PowerPoint
- JPEG
- BMP
- プレーンテキスト
テキストデータなどへのアクセスがブロックされているPDFに対しては、OCR機能での文字起こしも行います。
「書き込み」
「書き込み」機能を利用すれば、ゼロからPDF形式で文書を作成することも可能です。ただし、文書構造の作り込みや細かな書式設定については、専門のワープロソフトに劣ります。
この機能を有効に活用するなら、既に書式が完成している文書の「テンプレート」を「背景」として読み込み、その入力箇所にテキストボックスを作成して空欄を埋める使い方がおすすめです。

例えば、空欄がある表が組み込まれた文書のPDFデータを読み込むと、「書き込み」アプリが入力フィールドを自動判別し、入力用のテキストボックスを自動設置します。そこに必要な情報を入力すれば、電子データで文書を完成させられます。
一般的な表形式ならば、高確率で適切なテキストボックスを作ってくれます。キャプチャ画像のうち、水色部分がテキストボックスとして設定されたエリア、赤枠がその時点で入力対象になっているテキストボックスとなります。
設置されたテキストボックスに必要な値を入力したら、背景として使っているPDFデータと合成し、新たなPDFファイルとして出力してください。
「直接編集」
「直接編集」はPDFファイルの中のデータを編集する機能ですが、起動するプログラムは「ページ編集」機能で立ち上がるものと同一のようです。そのため、PDFの中のテキストデータなどだけではなく、ページ構成の編集を一緒に行うことも可能です。
データの編集を行う際は、「編集」タブを選んで編集対象の項目の種別を選びます。「テキスト」を選ぶと文字のあるフィールドが自動選択されキャレットを持っていけばすぐに編集できます。

注意点は、行送りなどの自動調整が働かないこと。 改行を追加すると次の行と文字が重なるなど表示が崩れる場合がありますので、改行の追加は控えめにしたほうが良いでしょう。
いきなりPDFは「買い」なのか?使用した感想まとめ
続いては、実際に私がいきなりPDFを使ってみた感想をまとめます。
まず、全体的な概要として、いきなりPDFには独自の「クセ」が存在します。
具体的には、呼び出す機能ごとに立ち上がるプログラムまたは動作モードが切り替わるため、近い内容の設定や似た機能でも、それぞれのプログラムでルックアンドフィールや使い勝手に違いがあるのです。

そのため、使いこなすにはある程度の「慣れ」が必要です。
とはいえ、少し異なるUIも他のソフトとの大きな乖離はなく、機能的にも比較的シンプルなソフトです。すぐに操作に慣れることができるでしょう。
機能と費用のバランスを考えるとかなりお値打ち
機能面では、一般的なPDF編集ツールとして必要なものは全て揃っています。 実際の作業において、このソフトがあればPDFのハンドリングを全てカバーできるはずです。
そして、いきなりPDFの最大の強みはコスト面です。
PDFハンドリングツールの本家Adobe社のAcrobatは、維持費が高額。その理由は、Adobe社は現在、ほぼ全てのソフトのライセンス形態を「サブスクリプション型」に変更しているからです。
▼▼Acrobatの料金▼▼
サブスク型ライセンスには常に最新バージョンを使い続けられるメリットがありますが、使用期間が長いほどトータルコストは買い切り型よりも高額になります。
その点、いきなりPDFは従来からの「買い切り型」ライセンスです。

さらに、買い切り型でありながら価格はAdobe Acrobatの年会費よりも低く設定されています。
コスト面で圧倒的なアドバンテージがありますので、 Acrobatでなければならない特別な理由がない限り、いきなりPDFを選ぶ価値があると言えるのではないでしょうか。
各機能の使用感
各機能の細かい使用感についても、下記にまとめました。
「作成」機能の使用感
「作成」機能にてファイル形式の変換を実行する操作は、とても簡単です。いきなりPDFの作成アプリのウィンドウに変換元ファイルをドラッグ&ドロップし、実行ボタンをクリックするだけでそうさが完了します。
文書フォーマットの変換精度に関しても全く問題なく、 手元での確認ではフォーマット崩れの問題は一切発生しませんでした。よほどシビアな設定でない限り、安心して使用できるでしょう。
また、この機能は、各種文書フォーマットからPDFへの変換に特化したUIになっており、PDF関連の付加機能追加設定程度しか行わない設計です。結果として、UIと実操作が非常にシンプルで分かりやすく、最も早く使いこなせる機能でした。
「ページ編集」機能の使用感
ページの入れ替え、向きの回転、削除、複数PDFデータのマージなどを行う「ページ編集」を行なう機会はさほど多くはないと思われますが、操作性も良好ですし、このタイプの編集が必要必要なユーザーには非常に有用な機能と言えるでしょう。
ページ編集の基本操作を網羅しており、PDFデータを見開き構成に変更するのも簡単な操作で行えます。
起動するプログラム自体は後述する「直接編集」機能と同じもののため、PDFデータの中身のテキストやオブジェクトの修正も可能です。
「変換」機能の使用感
「変換」機能を使用してPDFファイルからWord・Exceファイルへのいわゆる「逆変換」を行うと、文書データの編集作業などは間違いなく楽になるので、活躍の機会は多そうです。

ただし、文書フォーマット自体の変換精度は完璧ではありません。 完全には反映されない書式や対応できない書式があることは、あらかじめ理解しておいてください。
具体的には、データのロックがかけられているPDFは、この機能で直接Word文書などにすることができません。変換自体は可能ですが、PDFデータを「画像」として扱い、「OCR」機能で画像から文字起こしをします。そのため、変換精度が低下してしまうのです。
とはいえ、このあたりはPDFの仕様上やむを得ないと言えるでしょう。

補足として、 テキストデータの抽出をロックしても、視覚障害のある方のための読み上げ機能「スクリーンリーダー」がきちんとテキストデータを読めるようにする許可も、PDFの規格には準備されています。こういったアクセシビリティへの配慮はさすがです。
「書き込み」機能の使用感
「書き込み」機能を使用すればPDFファイルを一から作成することもできますが、本命は「テンプレートのPDFデータを背景として扱い、その上にテキストを上書きする」という使い方でしょう。

完全に白紙状態からこの機能で文書全体を組み上げるのは現実的ではありません。より細かなフォーマット設定が行えるワープロソフトで文書を作り込んでPDF変換する方が精度の高い文章が作成できます。
実際の使用感ですが、背景のテンプレートから文字の入力箇所を自動判別する精度も高く、一般的な表組み程度なら完璧なテキストボックス配置を自動で行ってくれました。処理には多少時間がかかりますが、十分実用的です。
提出用文書を電子作成する機会が多いユーザーなら、活躍の場所はかなりありそうです。
「直接編集」機能の使用感
「直接編集」は、既存PDFのテキストや各種オブジェクトの修正を行うための機能です。既存のPDFデータを読み込ませた後、「編集」機能を呼び出し、修正するオブジェクトの種別を選ぶことで、そのタイプのオブジェクト全部が修正対象になります。
最初にここに行き着くまでは他にはない使い勝手で迷いがありましたが、一度使い方が分かってしまえば理にかなった使いやすいインターフェースです。

注意点としては、この機能は文章の文言の部分的な修正など細かな修正向きの機能であり、細かなフォーマット設定はできません。
大幅に書式を変更するならPDFからWordなどに逆変換してワープロソフト側で修正を行った方が良いと感じます。
まとめ
いきなりPDFは、Adobe Acrobat対抗のソフトというポジションそのままに、PDFデータのハンドリングのみに機能を絞った製品です。現状の機能範囲で見ると、本家Acrobatよりも純粋にPDF操作に特化した製品とすら感じます。

PDF編集の利用が必須となるユーザーにとっては、替えが効かない重要な1本になるでしょう。
使い勝手に関しては、UIなどに改善の余地がある部分も事実です。 ただし、その部分が使い勝手を大きく阻害するほどの影響はなく、操作の慣れで十分対応可能なレベルと言えます。
コスト面において対抗製品に対する大きなアドバンテージがありますので、PDFデータの詳細設定が必要なユーザーは、導入を検討してみてはいかがでしょうか。