住宅ローンの手続きを進めるなかで、「担保提供者」という言葉を初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。担保提供者は「物上保証人」とも呼ばれ、親の土地に家を建てるケースや共有名義の不動産を担保にするケースなどで求められます。
この記事では、担保提供者の基本的な意味から、連帯保証人との違い、メリット・デメリット、手続きの流れ、知っておくべき法的知識、トラブル事例と対策までをわかりやすく解説します。
- 担保提供者(物上保証人)の定義と役割
- 連帯保証人との責任範囲の違い【比較表付き】
- 担保提供者のメリット・デメリット
- 担保提供者になる際の手続きと必要書類
- 知っておきたい法的知識(民法351条・求償権)
- 離婚時・相続時のリスクとトラブル事例
- 担保提供者に関するよくある質問
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担保提供者(物上保証人)とは?わかりやすく解説
担保提供者の定義と役割
担保提供者とは、住宅ローンの借り手(債務者)の代わりに、自分が所有する不動産を担保として提供する人のことです。法律用語では「物上保証人」と呼ばれます。
担保提供者の不動産には金融機関によって抵当権が設定されます。万が一、債務者がローンを返済できなくなった場合、担保提供者の不動産が競売にかけられる可能性があります。ただし、担保提供者自身にはローンの返済義務はありません。責任はあくまで担保として提供した不動産の範囲内に限定されるのが大きな特徴です。
担保提供者が必要になる3つのケース
担保提供者が求められるのは、主に以下の3つのケースです。
| ケース | 具体例 |
| 親の土地に子が家を建てる | 最も多いパターン。土地の所有者である親が担保提供者となり、抵当権の設定に同意する |
| 共有名義の不動産でローンを組む | 夫がローンを組み、妻が土地の持分を持っている場合、妻は担保提供者として抵当権設定に同意する |
| 配偶者・親族の土地を利用 | 配偶者や兄弟姉妹が所有する土地の上に家を建てるケース |

担保提供者と連帯保証人の違い【比較表付き】
担保提供者と連帯保証人は混同されやすいですが、責任の範囲や性質が大きく異なります。
| 比較項目 | 担保提供者(物上保証人) | 連帯保証人 |
| 返済義務 | なし | あり(債務者と同等の義務) |
| 責任の範囲 | 担保不動産の価値が上限 | 借入金額の全額 |
| リスクの上限 | 担保物件を失う可能性 | 全財産で弁済する義務 |
| 求償権 | あり(民法351条・372条) | あり(民法459条〜462条) |
| 催告の抗弁権 | なし | なし(連帯保証の場合) |
| 住宅ローン控除 | 対象外 | 対象外 |
責任範囲の違いを具体例で解説
責任範囲の違いを具体的な金額で見てみましょう。
例:住宅ローン残高5,000万円、親の土地(評価額1,500万円)を担保提供した場合
・担保提供者(親):最大で土地(1,500万円相当)を失う可能性がある。それ以上の金額を請求されることはない
・連帯保証人:ローン残高5,000万円全額の返済義務を負う。自宅や預貯金などすべての財産が対象になりうる
求償権の違い
担保提供者(物上保証人)の求償権は民法第351条(民法第372条により抵当権に準用)に基づきます。担保提供した不動産が競売にかけられた場合、物上保証人は債務者に対して弁済した分の返還を求めることができます。
ただし実際には、債務者がローンを返済できなくなったために競売に至ったケースが多く、求償権を行使しても回収が困難なケースが少なくありません。
保証人・連帯保証人・連帯債務者・担保提供者の4者整理
住宅ローンに関わる立場を混同しないよう、4つの違いを簡潔に整理します。
| 立場 | 返済義務 | 催告・検索の抗弁権 | 責任範囲 |
| 保証人 | あり(補充的) | あり | 借入金全額 |
| 連帯保証人 | あり(債務者と同等) | なし | 借入金全額 |
| 連帯債務者 | あり(主たる債務者の一人) | なし | 借入金全額 |
| 担保提供者 | なし | なし | 担保物件の価値まで |
担保提供者のメリット・デメリット
メリット
- リスクが担保物件の価値に限定される:連帯保証人と違い返済義務を負わない。万が一の場合でも、失うのは担保として提供した不動産に限られる
- 家族に依頼しやすい:責任範囲が明確で限定的なため、連帯保証人よりも比較的了承を得やすい傾向がある
- 自己資金がなくても住宅購入の道が開ける:親の土地を活用すれば、土地購入費用をかけずに住宅を建てることが可能
デメリット
- 担保物件を失うリスクがある:債務者が返済不能になった場合、担保提供した不動産が競売にかけられる
- 担保物件の売却や活用が制限される:抵当権が設定されると、金融機関の承諾なしに担保物件を売却することが難しくなる
- 人間関係に影響する可能性:「万が一のリスク」を引き受けることで、精神的な負担が生じることがある
- 相続時にトラブルの種になる:担保提供者が亡くなると、抵当権が設定された不動産を相続する人が物上保証人の立場を引き継ぐ
担保提供者が知っておくべき法的知識

民法第351条(物上保証人の求償権)
民法第351条は、物上保証人が弁済した場合や抵当権の実行により不動産の所有権を失った場合に、債務者に対して求償権を有することを定めています。民法第372条の規定により、この条文は抵当権にも準用されます。
つまり、担保提供者の不動産が競売にかけられた場合、担保提供者は債務者に対して「競売によって失った金額を返してほしい」と請求する権利があります。
注意:実務上は債務者が返済不能だからこそ競売に至っているため、求償権の回収は容易ではありません。担保提供者になる前にこの点を十分に理解しておくことが大切です。
抵当権消滅請求制度について
抵当権消滅請求(民法第379条〜第386条)は、抵当不動産の「第三取得者」が金融機関に対して一定の金額を提示し、抵当権の消滅を求められる制度です。
ただし、物上保証人自身はこの制度を利用できません(物上保証人はもともと担保不動産の所有者であり、「第三取得者」に該当しないため)。物上保証人から不動産を取得した第三者が利用できる制度である点に注意しましょう。
担保提供者になる際の手続きと必要書類
手続きの流れ
担保提供者になる手続きは、おおむね以下の4つのステップで進みます。
| ステップ | 内容 |
| 1. 金融機関からの説明・審査 | 担保提供の内容やリスクについて説明を受ける。本人確認・意思確認も実施 |
| 2. 同意書への署名・押印 | 担保提供に同意する旨の書類に実印で署名・押印する。内容をしっかり確認してから署名を |
| 3. 抵当権設定登記 | 住宅ローン契約と同時に、担保提供する不動産に抵当権が設定される。登記手続きは司法書士が担当 |
| 4. 住宅ローン実行 | すべての手続きが完了すると、住宅ローンが実行される |
必要書類チェックリスト
担保提供者が準備する主な書類は以下のとおりです。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 実印
- 印鑑登録証明書(発行後3か月以内 ※金融機関により異なる)
- 住民票(発行後3か月以内)
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 固定資産税評価証明書(または納税通知書)
担保提供者は「債務者」ではないため、源泉徴収票などの収入証明書の提出は原則不要です。あくまで担保物件の提供に関する書類が中心となります。
金融機関ごとの担保提供者の条件
担保提供者になれる人の範囲は金融機関によって異なります。
| 金融機関 | 担保提供者の対象範囲 | 事実婚・同性パートナー |
| ソニー銀行 | 配偶者、親、子、兄弟姉妹、婚約者 | 2023年5月より事実婚・全パートナーに拡大 |
| PayPay銀行 | 物件共有者(配偶者・親子等) | 同性パートナー・事実婚に対応 |
| 住信SBIネット銀行 | 配偶者、子、親(義父母含む)、兄弟 | 同性パートナーに対応 |
| みずほ銀行 | 配偶者・親子等 | 2017年7月より邦銀初の同性パートナー対応 |
| フラット35 | 配偶者・親族等 | 2023年1月より同性パートナーに対応 |
近年は事実婚や同性パートナーを担保提供者やペアローンの対象に含める金融機関が増えています。対象となるかどうかは事前に金融機関に確認しましょう。
担保提供者のリスクとトラブル事例

離婚・別居時のリスク
配偶者が担保提供者になっているケースでは、離婚しても担保提供者の立場は自動的に解消されません。離婚後もローンが完済されるまで、元配偶者の不動産には抵当権が設定されたままとなります。
離婚時の対策としては、住宅ローンの借り換え(新たなローンで抵当権を解除)や、住宅の売却によるローン完済などが考えられます。

相続時の注意点(物上保証人の地位の承継)
担保提供者が亡くなった場合、物上保証人の地位そのものが直接相続されるわけではなく、「抵当権が設定された不動産」が相続財産として承継されます。その不動産を相続した人が、結果として物上保証人の立場を引き継ぐことになります。
連帯保証人との違いとして、連帯保証人が亡くなると保証債務が相続人全員に法定相続分に応じて分割承継されます。一方、物上保証人の場合は担保不動産を相続した人だけがリスクを負います。
トラブル防止のポイント
・遺産分割協議で、抵当権付き不動産を誰が相続するか事前に話し合う
・遺言書に担保提供している不動産の扱いを明記する
・相続放棄をすれば物上保証人の地位も承継しない(ただし全遺産を放棄することになる)
債務者が返済不能になった場合
債務者がローンを返済できなくなると、金融機関は担保不動産の競売手続きを進めます。競売が実行されると、担保提供者は不動産を失います。
この場合、物上保証人は民法第351条に基づく求償権を債務者に行使できますが、すでに返済不能の状態であるため、実際に弁済額を回収できる可能性は低い点を理解しておきましょう。


担保提供者に関するよくある質問(FAQ)
まとめ
担保提供者(物上保証人)は、自分の不動産を他人のローンの担保として提供する立場です。最後に重要なポイントを整理します。
- 返済義務はないが、担保物件を失うリスクがある(連帯保証人との最大の違い)
- 責任は担保不動産の価値の範囲内に限定される(有限責任)
- 離婚しても担保提供者の立場は解消されない(ローン完済まで継続)
- 担保提供者が亡くなると、不動産を相続した人が立場を引き継ぐ
- 住宅ローン控除は担保提供者には適用されない
担保提供者になることを検討している方は、リスクと責任の範囲を正確に理解したうえで判断しましょう。不安な点がある場合は、金融機関の窓口や不動産の専門家に相談することをおすすめします。




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