あなたは親御さんから相続したアパートでお困りではないですか?資産運用としてアパート経営をしていて、それを子供が相続するということはよくあることです。しかし、具体的に相続する手続きや流れを知らなければ、いざという時にどう対応してよいかわからなくて慌ててしまうこともあるでしょう。
そこでこの記事ではアパート経営の相続を控えている方に向けて、全体的な相続への流れをご紹介します。また、実際にアパート経営を受け継ぐメリットやデメリット、アパート経営をしない場合の対処法についても合わせて解説しますので、これらの情報で理解を深めて親御さんの大切な資産を損のないように相続しましょう。
親のアパート経営を相続する手続きの流れ
親のアパート経営を相続するには確認、登録、申告という3つがキーになります。具体的に言えば、アパートの状況を把握するためにローンの残債を調べたり、遺産分割協議や相続での展開を考えていくことになるでしょう。その後、相続するためには所有者の登録や入居者への申告、相続後は確定申告なども必要になります。
相続手続きにはある程度の工程が必要になるため、流れを把握しておくことが重要です。まずはこの章で手続きの流れを見ていきましょう。
住宅ローンの残債がないかを確認する
じつはアパートを相続するとなると住宅ローンの残債が残っていた場合、その返済も引き継がなければなりません。そのため、住宅ローンの残債の有無を必ず確認する必要があります。もし残債があった場合は、純粋な相続分を左右することになるため、遺産分割の有無に関わらず知っておくことが重要です。
また、もし遺産分割する場合には協議の方向性にも関わってきます。相続した時点で支払い終わっていれば問題はありませんが、今後の展開や費用に影響することなので、まずは最初に確認すると良いでしょう。
アパートの所有者を決める
相続するアパートは相続人同士で協議し、所有者を決めます。今回の親のアパート相続というケースとなるとその子供が相続人となるため、もし兄弟がいる場合にはその兄弟同士で遺産分割協議をして所有者を決めることが一般的です。
また、相続人が複数いる場合には不動産を共通名義にするという選択肢もあります。この場合、アパート経営の権利の細分化によって手間や時間が掛かったりと、非常に動かしづらいものとなってしまいます。そのため、基本的にはアパートの所有者は1人の相続人に決めることがおすすめです。
相続登記を行う
アパートの所有者が決まったら、相続登記を行って被相続人から相続をするという公的な申し立てをすることをおすすめします。何故なら相続登記はアパートの名義を被相続人から相続人へ変えるという事実証明を公式に行うことができるからです。
しかし、あくまでも相続登記自体は義務ではありません。とはいえ所有者の権利をはっきりとさせることで今後相続する権利を主張してくる人が出た場合など、相続トラブルを防ぐことができるでしょう。そのため、相続登記は行っておいて損はないと言えます。
アパートの入居者に連絡する
親のアパートを受け継いで、もしすでに入居者がいる物件であった場合には連絡をして経営者に変更があったことを知らせましょう。これは入居者への礼儀としてはもちろんですが、家賃の支払い先が変わってしまうことも理由です。
基本的に被相続人の銀行口座は亡くなってしまった時点で凍結されてしまうため、家賃の振込先の変更が必要となります。そのため、所有者が変わることの挨拶、そして口座変更等の知らせを入居者に必ず行いましょう。今後経営していくためにも入居者への連絡はこまめに行っておくことが大切です。
準確定申告を行う
正式に親が収益を得ていたアパートを相続したら、準確定申告をして税を納める必要があります。この準確定申告とは、1年の始まり(1月1日)から相続が行われた時までにあった被相続人の不動産所得を相続人が代理で確定申告をすることです。申告の際には被相続人と相続人の連名での申告となります。
また、準確定申告をする際には期限があり、基本的に家賃収入がある不動産を相続した瞬間から4ヶ月以内に不動産所得を申告しなければいけません。そのため、相続を進める中で収入などの情報をまとめておくとよいでしょう。
親のアパート経営を相続する3つのメリット
親のアパート経営を相続するメリットは主に以下の3つです。
- 相続税対策になる
- 利益を得ることができる
- 親の意思を引き継ぐことができる
アパート経営においては収益化さえできば永続的に利益を得ることができ、相続税も軽減されるためメリットは大きいと言えます。そして、何よりアパート経営を受け継いで欲しいという親の意思を尊重することもできるのです。アパート経営を相続するにあたって、これらのメリットを詳しく見ていきましょう。
相続税対策になる
基本的に基礎控除額などがあっても、資産や預金などを相続する場合は評価額が大きいために課税額も大きくなってしまいます。しかし、住宅や土地、もしくは収益化した不動産の場合には評価の仕方や適用される控除が違うために、相続税対策になるという大きなメリットがあるのです。
実際に相続税対策となる理由は以下の3つです。
- 現金と比べて土地と建物の相続は評価額が低い
- 小規模住宅用地の減額の特例が使える
- 債務控除の適用が可能
現金と比べて土地と建物の相続は評価額が低い
現金相続の場合の評価額が100%だとすると、土地や建物の場合には現金と比べ評価額が低くなっています。何故ならば土地の評価は路線価を元にしており、その値は地価公示価格8割と定められているからです。つまり土地は2割マイナスした評価額となるということになります。
また、建物の場合も固定資産税評価額が適用され、建築に掛かった費用の6~7割と定められているため評価額は3~4割ほど抑えられるでしょう。つまり、相続人にとっては価値が高い資産でも、土地や建物は評価額が低いために相続税の負担が軽くなるというわけです。
小規模住宅用地の減額の特例が使える
土地や建物、もしくは収益化していた不動産なら小規模住宅用地の減額特例が使えます。この特例は亡くなった親が住んでいた土地、または事業に使っていた土地が一定条件の下、適用されます。
特例を使うには生計を共にしていた親族である、土地に建物がある等の条件があるので事前に確認する必要があるでしょう。適用する場合には居住用であるか事業であるかで面積や割合が変わりますが、評価額が減額されるメリットは大きいです。
また、小規模住宅用地については東京都主税局の小規模非住宅用地減免Q&Aでわかりやすい条件が確認できます。
債務控除の適用が可能
不動産の相続では債務控除が適用されるため、プラス分の財産からマイナス財産分を差し引くことができます。マイナス財産分とは、例えばアパートを建てる際に掛かった費用などを金融機関で借入したお金のことです。この費用に関しては債務控除の対象となるため、その分相続税を減らすことができるでしょう。
債務控除について詳しく知りたい方は国税庁公式サイトのこちらのページから法令と条件を確認できます。
利益を得ることができる
アパート経営は負債の支払いや修繕費などのランニングコストが必要となる可能性がありますが、利益を得ることができる資産運用でもあります。もし、安定的にアパート経営ができるようになれば不労所得を得られるようになるので、その点は大きなメリットとして考えられるでしょう。相続後の経営次第で利益を上げられる可能性は十分秘めています。
アパート経営について、詳細に知りたい人はこちらをご覧ください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/9422
親の意思を引き継ぐことができる
アパート経営を相続することは親の意思を引き継ぐことができるという精神的なメリットも少なからずあるでしょう。どのような考えでアパートを経営していたのかは様々なケースがあります。
しかし、もし相続人が経営を相続する事を望んでいたなら、故人の意思を尊重することができます。
親のアパート経営を相続する3つのデメリット
メリットがあるということはデメリットもあるということも忘れてはいけません。親のアパート経営を相続することによるデメリットは以下のものが挙げられます。
- 共有名義にするとトラブルが起こりやすい
- 負債を放棄することができない
- 古いアパートの場合は修繕費用がかかる
アパート経営の相続では大きな利益がある半面、不動産の負債や修繕費用を支払う義務も受け継がれます。そのため、長期的に資金を捻出する必要があることは無視できないデメリットです。また、不動産の権利を共通名義にすることで扱いが難しくなるという点もあります。ここからはそのようなアパート経営の相続によって、どんなデメリットが出てくるのか詳しく見ていきましょう。
共有名義にするとトラブルが起こりやすい
兄弟などがいる場合は相続したアパートを共通名義にして所有することは多いでしょう。しかし、アパートを共通名義にしてしまった場合、収益の分割や修繕費の対応など多岐にわたる理由で将来的にトラブルが起きるリスクがあります。
具体的な理由は以下の通りです。
- トラブルや修繕費についての対応や費用負担の取り決めがまとまらない
- 相続人が都度集まって協議が必要になる
- 名義人が亡くなったなどで新たに相続が発生した場合に権利が複雑になる
- 一度共通名義で相続してしまうと相続放棄するには贈与税が発生する
- 相続人全ての承諾を得なければ売却することができない
このように共通名義のアパートを所有、経営することになると将来的に様々な面で扱いにくくなる可能性が考えられるでしょう。
負債を放棄することができない
もし被相続人が借金をし、その保証人となっていた場合にはその負債は放棄することができないということもデメリットとして理解しておく必要があります。アパート経営のために借金をしていた場合には所有者が相続人に変わっても、返済する義務は避けられません。そのため、相続人はアパートの相続と同時に返済義務を負うということになります。
古いアパートの場合は修繕費用がかかる
相続したアパートが仮に築年数が経過している場合には修繕費用が掛かるということもデメリットになりえます。古いアパートの場合はどうしても経年劣化などで外観や設備に不具合が出てきてしまうからです。
費用を掛けたくないと考えても、入居者を維持したり、募集するには修繕は必須となるので避けられません。受け継ぐアパートが築年数が長いものなら修繕費用が必要になることを見越しておく必要があるでしょう。
親のアパート経営の相続放棄について
もし親のアパート経営の相続を放棄したい場合には期限までに必要書類をそろえて、家庭裁判所へ申し立てをしなければなりません。そもそもアパート経営の相続があるといっても、近くに住んでいないために経営していくのが困難な場合などもあるでしょう。
経営するのにはメリットだけではなく、様々な問題やデメリットもあるため相続放棄も1つの選択肢です。親の意思があったとしても、現実的に考えて可能であるか判断しなければいけません。そこでここからは、アパート経営の相続を放棄する展開を選択した場合の対応についてご紹介します。
相続放棄とは
相続放棄では被相続人の資産をプラス財産とマイナス財産含め、相続を放棄するというです。つまりは一切の遺産相続をしないということになるため、負債を支払う必要がないことはもちろん、その資産により得られる利益にも全く手をつけることができなくなります。
今回のアパート相続の場合においては、相続放棄することで他の相続人に委ねることになるでしょう。どうしてもアパート経営に不安があったり、収益が見込めない場合には相続放棄も選択肢の1つです。
相続放棄の期限
もし相続放棄する場合には相続をする事実が発覚してから3か月以内に行わなければいけません。基本的にはこの期間を過ぎてしまうと順当に遺産相続を受けることになります。
また、万が一何か重大な理由があった場合には期間の延長も可能ですが、それが認められる場合に限るため注意が必要です。相続放棄を検討しているなら、基本的にこの3か月の期限があることは念頭に置いておきましょう。
相続放棄の方法
具体的に相続放棄を行うには必要書類をまとめ、家庭裁判所へ申し立てをすることになります。その際の書類の作成や取寄せには時間も掛かるため早急に進めることが懸命といえます。
詳しい相続放棄の手順は以下の通りです。
相続放棄の手順と取寄せ・申請先 | ||
順番 | 手順 | 取寄せ・申請先 |
1 | 申述人の戸籍謄本を取寄せる | 申請する本人の住所地がある行政 |
2 | 被相続人の死亡が記載済みの戸籍謄本を取寄せる | 被相続人の住所地がある行政 |
3 | 被相続人の住民票除票(または戸籍附票)を取寄せる | |
4 | 収入印紙を買う(800円) | 郵便局またはコンビニ等で購入 |
5 | 郵便切手を買う(82円切手5枚) | |
6 | 相続放棄申述書を作成する | 裁判所の公式サイトからダウンロードして作成 |
7 | 書類をまとめて家庭裁判所へ送付する | 被相続人の住所地にある裁判所 |
家庭裁判所からの返答を待つ(数日~2週間程度) | ||
8 | 家庭裁判所から来た照会書を記入して返送 | 被相続人の住所地にある裁判所 |
9 | 相続放棄申述受理通知書が送付される | |
10 | 相続放棄が認められる | |
特記事項 |
|
正式に相続放棄をするには上記の工程が必要となります。記入や確認、取寄せなど多くの手間がかかるため弁護士や行政書士に依頼することも検討すると良いでしょう。
親のアパート経営の相続に関するQ&A
親のアパートを相続し、経営していくには様々な側面があります。相続することになって始めて経営について考える方も多いでしょう。経営に自信がない、相続税は支払っていけるのかという不安もあるはずです。
ここではそんな不安を払拭するためにアパート経営の相続に関するQ&Aをご紹介します。記事の最後によくある疑問や不安点を確認して、ぜひ自身のアパートの相続をする場合に役立ててください。
アパートを相続したけど経営の自信がない場合は?
経営に自信がなく、続けるのは無理だと感じたらアパートの売却も検討しましょう。アパート経営における利益は多くありますが、その半面様々なリスクもはらんでいます。親が良かれと思って残した資産だとしても、その子供の首が回らなくなるのは望まないはずです。
また、不動産売却をするなら、良い条件を選択するためにも様々な会社で査定を受けることをおすすめします。不動産一括査定を利用すれば簡単に査定結果を見比べることができます。もし経営が難しいと思ったなら、アパートを売却をした場合にどの程度の利益になるのか調べてみましょう。
おすすめの一括査定サイトは「すまいステップ」
- 初めてで不安だから実績のあるエース級の担当者に出会いたい
- 厳選された優良不動産会社のみに査定を依頼したい
- 悪徳業者が徹底的に排除された査定サイトを使いたい
不動産一括査定について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/9915
公務員がアパート経営を相続することはできるのか?
公務員がアパート経営を相続する場合、一定の条件下でのみ相続が可能です。元々公務員は副業が原則として禁止されていました。しかし、法改正によって所轄庁などへ許可申請をし、条件を守っていれば副業が可能となりました。不動産経営についても一定の条件をクリアしなければいけないため、公務員の方がアパート経営をする場合にはその条件を十分に確認することが必要です。
アパート経営の場合の具体的な条件は人事院で以下のように定められています。
独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。
引用:人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について(第1項2号・二・ロの項目)
要約すると公務員のアパート経営は10室未満の不動産なら可能であるということです。つまり、親からアパート経営を相続できるか否かはその部屋数次第ということになるでしょう。
相続税はいくらかかる?
具体的な相続税の金額は相続人の人数によって変動するため、それぞれのケースで照らし合わせて計算する必要があります。アパートはもちろん相続にあたっては相続税は少なからず負担となってくるものなので、必ず推算をして自身が支払う金額目安を知っておくことが大切です。
相続税を割り出す計算式は以下を参考にしてください。
アパートの相続でもめないための対策は?
アパート相続でもめないためには被相続人になる親に遺言書を作成してもらっておくことです。もし生前に遺言書で具体的に遺産相続の割合を定めておけば、それが有効とされればその遺言通りに分割することになります。そのため、相続人同士の長期的な協議や不要な争いも避けることができるはずです。
また、遺言書を適切なものとして作成するには記載項目や条件などが定まっています。作成するのが困難だと感じたら弁護士や司法書士などと連携して対策を打ちましょう。
遺言書の種類や方法については相続税を専門としている、相続サポートセンターでまとめられたこちらの記事が確認しやすいのでよろしければチェックしてください。
まとめ
もし親のアパート経営を相続する場合には物件の状態や負債を確認して、誰が相続するか決める必要があります。その際には不動産経営の不労収益を得られるメリットと経営にはリソースが必要になるというデメリットも検討し、よく考えて展開を選択することが大切です。
また、順当に相続する場合でも相続放棄する選択にしても、手続きの流れをよく把握しておくことで対応に手間取ることがなくなります。それぞれに手続きする期限もあるため、今回ご紹介した流れを元に書類作成や手続きを進めるようにしましょう。
被相続人の気持ちを尊重し、より良い選択を選んでくださいね。
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