物価の高騰で高級時計もここ数年でずいぶんと値上がりしてしまい、手が届きにくいものになってしまいました。でも、品質には妥協せず、なるべくなら安価に時計を楽しみたい。そんな願いを叶えてくれるのが10万円台で買えるティソの「PRX」です。10万円台と侮るなかれ、その品質はスイスの高級時計メーカーにも引けを取りません。発売以来、大人気となっているモデルです。
スイス国民に浸透している「ティソ」
ティソ(TISSOT)は1853年にスイスのル・ロックルで創業した歴史ある老舗時計メーカーです。スイスの国旗をブランドロゴに使用できる数少ない時計メーカーでもあり、スイス国内の駅で電車を降りると、看板や路線バスの車体などいたるところにティソの広告を見ることができます。山の上にある観光地の売店でも時計を売っているほど国民生活に浸透していて、日本でいえば「セイコー」のような存在なのかもしれません。年間生産本数は約400万本を超えており(ちなみにロレックスは約100万本、オメガは約70万本)、世界一腕時計を作っているメーカーともいわれています。
そんなティソの中でも特に人気なのが、2021年9月に登場した機械式腕時計「PRX」です。モデル名は「P」がPrecise(正確な)、「R」がRobust(堅牢な)、「X」が10気圧防水(ローマ数字の10)に由来しています。
PRXの元となったのは、1978年に登場したケースとブレスレットを一体化させたクォーツモデルです。それを2021年2月に再びクォーツ(電池式)で、同年9月には初めてオートマティック(機械式)で復活させたという経緯があります。今回取り上げるのは機械式モデルの「PRX パワーマティック80」です。
PRXが登場したときに驚いたのは、そのコスパの高さです。35mmと40mmの2サイズあり、いずれもケース径が異なるだけで性能は変わらず、価格は10万7,800円という安さです。機械式腕時計だとパワーリザーブが30~40時間というモデルも多い中、80時間という長時間駆動を実現しています。さらに、モデル名が示す通り10気圧防水(100m/330ft)なので、汗や雨、手洗いなどで水がかかっても、まず心配はいらないでしょう。特許取得済みのニヴァクロン社製ひげゼンマイを採用することで、耐磁性能も高めています。
ブレスレットの質感は価格以上
非常に高性能でありながら、価格に対してブレスレットの質が非常に高いことも発売当初から話題となりました。正直、10万円台の機械式腕時計のブレスレットは、見た目も質感も安っぽいものが多い印象です。しかしPRXのブレスレットはコマひとつひとつが滑らかで、質感も装着感もとても良好です。数百万円の腕時計を所有している目の肥えたコレクターでさえ、PRXのブレスレットはよくできていると称賛します。10万円台の腕時計とは思えない完成度が魅力なのです。
ダイヤルカラーが豊富なところも見逃せません。定番のブラックやブルーはもちろん、淡いブルーやグラデーションがかった文字盤のモデルもあります。さらにはブレスレットもダイヤルもイエローゴールドに輝くモデル(こちらは12万5,400円)やケースにカーボンを使用したモデル(こちらは15万4,000円)もありますので、好みのモデルが見つかるでしょう。ステンレス製のブレスレットを工具なしで簡単にラバーやレザーのベルトに交換できる点も魅力です。
ちゃんとした機械式腕時計を買おうと思ったら、少なくても50万円以上は出さないと難しいなどといわれる昨今ですが、ティソなら安価で質の高いモデルがそろっています。PRXでその魅力を味わえば、高級時計への第一歩となるのは間違いないでしょう。