トランプ米政権がハーバード大学の留学生受け入れ資格取り消しを発表したのは、記憶に新しいニュースだ。報道によれば、海外への留学を視野に入れた学生がアメリカ以外を模索する動きも出てきているというが、富裕層の教育においては、"留学先は英米以外"も選択肢の一つになっているとのこと。
この新しいトレンドについて、ボーディングスクールをはじめとしたスイス留学の支援をしている田山貴子氏が解説する。
海外留学の新たな選択肢「ボーディングスクール」
近年、子どもの進路選択において、海外を選択肢に入れるご家庭が増えました。また、海外留学の低年齢化も進んでいます。背景にはグローバル化が進み、これまで以上に語学力や国際感覚を養うことの重要性が理解されていることなどがあるでしょう。
このような状況の中、小中高生の新たな選択肢となっているのが、海外のボーディングスクールです。いわゆる全寮制の学校で、留学生は親元を離れて「ハウス」とよばれる寮で生活しながら通学します。
ボーディングスクールは発祥の地であるイギリスから欧米に広がりました。長らく欧米にしかありませんでしたが、現在ではそれらの分校がアジアをはじめ世界各国に進出。日本にも数校があり、英語を公用語にしていることをはじめ、日本の一般的な学校とは違った教育で注目を集めています。
このようにボーディングスクールという選択肢が広がる中、日本の富裕層から注目を集めているのが、スイスのボーディングスクールです。
なぜ、彼らは英語圏ではないスイスで学ばせようと考えるのか。治安の良さや世界的に定評がある教育レベルの高さへの期待はもちろんですが、大きな理由として「英米のボーディングスクールとの違い」があります。
スイスのボーディングスクールの特長を見ていくと、富裕層がスイス留学に期待すること、ひいてはわが子に身につけさせたい3つのことが見えてきます。
スイス留学だからこそ築ける世界規模のコネクション
その1つは「机上では得られない学び」です。スイスのボーディングスクールでは、自然豊かなロケーションを活かした教育を実践しています。周囲が山や森、川という学校も多く、自然の中で生態系を学んだり、アクティビティなどを通して体を鍛えたりすることができます。特にゲームやスマートフォン、インターネット中心になりがちな今の子どもたちにとって、五感をフル稼働して自然の中で過ごす時間は貴重なものです。
2つ目は「世界規模のつながり」です。イギリスやアメリカのボーディングスクールでは、留学生の割合が多くても4分の1ほどなのに対して、多くのスイスのボーディングスクールはほぼ全員が留学生です。しかも少なくても20カ国、多い学校では120カ国から集まっています。親の職業も一流企業の経営者をはじめ、王族や貴族であることが珍しくありません。
こうした様々なルーツを持つ仲間と寝食を共にして学ぶことで築かれた絆、利害関係のない友情はかけがえのないものであり、多くの方が卒業後もSNS上で同級生、卒業生とつながりを持ち続けています。つまり将来、国際的に影響力のある人たちとのコネクションが世界中に広がることとなり、それは何にも変え難い大きな財産となります。
3つ目は「真の国際化」です。スイスのボーディングスクールのほとんどで校内のメイン言語は英語となっていますが、スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、そしてロマンシュ語の4つです。学校の外ではこの4つのうち、地域のメイン言語でコミュニケーションをとるため、英語以外の言語も日常的に使うことで自然と習得していくことができます。
また、先述したように生徒のほとんどは数十カ国から集まっているため、同級生の出身国に関連したニュースも自然に意識するなど、世界情勢にも広く興味を持つようになります。こうやってさまざまな国や言語にも対等な立場で向き合えることこそ、真のインターナショナルな環境と言えるでしょう。
このようなスイスのボーディングスクール独自ともいえる魅力が、日本のみならず各国の富裕層を惹きつけている所以です。私がスイス留学の支援をしている中には5~10歳のお子様も多く、学校によっては3歳からでも入学が可能となっています。
但し、就学前や義務教育期間の留学の場合、心のケアや日本語習得などの面でご家族のサポートが非常に重要となります。それでも富裕層がスイス留学を選択するのは、わが子の大きな成長が期待できるからでしょう。