「35歳以下のクルマ好き」が集まるイベント「YOKOHAMA Car Session 2~若者たちのカーライフ~」でトヨタ自動車の「クレスタ」を見つけた。「若者」が乗るにはシブすぎるチョイスだが、選んだ理由は? オーナーに話を聞いた。
ハイソカー人気の一翼を担った「クレスタ」
「ハイソカー」という言葉を知っているだろうか。「ハイソサエティ」(上流社会)と「カー」(自動車)を掛け合わせた造語で、バブル景気で盛り上がっていた1980年代に、ちょっと背伸びしたカーライフを送りたい若者たちが上級のセダンやクーペに注目し、こう呼ぶようになった。
そんなブームの中心にいたのが、トヨタ自動車の「マークⅡ」「チェイサー」「クレスタ」の3兄弟だった。
もともとマークⅡは、1968年に「クラウン」と「コロナ」の間を埋める車種として誕生。当初は「コロナマークⅡ」と呼ばれていた。3代目マークⅡのときに、日産自動車「スカイライン」の対抗馬としてスポーティーな「チェイサー」が加わった。
クレスタが登場したのは、次の世代交代のタイミングだった1980年。3兄弟となった理由のひとつは販売チャンネルで、クレスタは現在の「ネッツ店」の前身のひとつである「ビスタ店」での取り扱いになった。
フロントに1.8~3リッターの直列4/6気筒エンジンを縦置きし、後輪を駆動するというメカニズム(4代目で4WDも追加)、3ボックス4ドアというパッケージングは3車種に共通していたが、スタイリングは専用だった。
クレスタはマークⅡよりスタイリッシュでありながら、チェイサーより落ち着いた雰囲気のデザインで、2001年まで5世代21年にわたりラインアップされた。
想像するほどお金は掛からない?
川崎市に住み、自動車部品サプライヤーの会社に勤める武守さん(30歳)が所有するクレスタは、最終型の5代目。テレビドラマにもなった漫画『GTO』の原作で、教頭先生の愛車だったことを覚えている人もいるだろう。
「中古車の仕事をしていたときに、下取りで入ってきたクルマです。車検も切れるし、手放そうと思っていますという話だったので、『それだったら僕、乗ります!』と手を挙げて、オーナーさんと直接話をしたところ、『大切に乗ってくれるんだったらいいよ』と言われたので、譲っていただきました」
気になる価格は、業者買取くらいのレベルだったとのこと。「今では、ちょっと言えないくらいの数字」だったと語ってくれた。
クレスタの前は、同じトヨタの「アルテッツァ」のワゴンやセダンに乗っていたという。トラディショナルなフォルムの日本車がお気に入りのようだ。
今回のようなイベントのほか、川崎市内の買い物にもクレスタで出かけているという武守さん。走行距離はまだ6万kmくらいと少なく、自動車関係の仕事に就いていることもあり、それほど維持には苦労していないようだ。
「この前の車検でラジエーター関係のホースを換えたぐらいで、ほとんどお金はかかっていません。ガソリン代と自動車税、保険代ぐらいですね。これから大きな出費があるかもしれませんが……。多くの部品は、まだ出るようです」
レースのシートカバーは欠かせない
武守さんの愛車は2リッターで、クレスタが登場した当初から積んでいる1G型直列6気筒を搭載しているが、クレスタの販売終了後もしばらくは製造されていたこともあり、パーツはまだ出るとのこと。さすがトヨタ車という感じだ。セダンとしての使いやすさも評価していて、パッケージングの完成度は高いと話していた。
クレスタの現役時代を知る筆者が、実車を拝見してとりわけ懐かしい気持ちになったのが、レースのシートカバーだ。
「このカバーは前のオーナーの方が付けていたもので、そのままにしています。この年代のトヨタ車が集まるミーティングに行くと、マークⅡ3兄弟などはほとんどこのタイプのシートカバーが付いていて、不可欠なアイテムであることを教えられました」
エアコンは「めちゃくちゃ効く」とのこと。この点もトヨタ車ならではだ。オーディオについてはBluetoothのアダプターを組み込み、スマートフォンに入れた音楽を聴けるようにしているという。
最近のクルマも好きだが価格が高くなっているので、「このあたりのクルマが僕らの世代でも買えて、かつ注目もされて良い」と話す武守さん。程度の良い個体を選んで大事に乗ったほうが、お金が掛からないことを発見したそうだ。
昔のクルマはカッコいいけれど、乗ると維持費が高くつきそう……。そう考える人は多いと思うが、しっかり選べば敷居はそれほど高くないことを知ることができた。