スイス・ジュネーブの国際展示場「パレクスポ」で4月1日から7日まで開催された世界最大&唯一無二の時計フェア、「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2025(WWG2025)」。出展した60ブランドの新作の中でいちばん注目を集め、「スゴイ」と評判になったのは、やはりロレックス。その新作「ランドドゥエラー」だった。なぜ注目を集めたのか。その理由を説明しよう。
最大の話題と魅力は、10振動の新型ムーブメント
ランドドゥエラーは、2012年の「スカイドゥエラー」以来、なんとロレックスでは13年ぶりの“完全な”新作モデル。ただスカイドゥエラーのようなコンプリケーションモデルではなく、時計としての機能はシンプルだ。では、そのどこが注目を集めたのか?
ケースとブレスレットが一体化した薄型のデザイン? ハニカムパターンの文字盤? いえ、何よりも注目を集めたのは、搭載されている新型の機械式ムーブメント「キャリバー 7135」だった。
製品写真を見て「なんだ、もうこの時計ならネットで見たよ」という人がいると思う。なぜならロレックスのアンバサダーを務めるテニス界のレジェンド、あのロジャー・フェデラーが発表前に着用している映像が広くネット上に出回り、外観については事実上解禁状態だったから。
だが“その中身”のムーブメントについての情報はなかった。そして正式発表されてそのムーブメントのスゴさに、だれよりも世界中の時計ジャーナリストや時計関係者が驚いたというわけだ。
ランドドゥエラーでまず何よりも注目したい点。それは「ムーブメントの振動数が10振動」ということ。新型ムーブメント「キャリバー7135」は、100年を超えるロレックスの歴史の中で、製品として初めて「10振動」を採用している。しかもこのムーブメント、16件の特許を取得または申請中というだけに、これまでより約30%もエネルギーの伝達効率が高いという新型脱進機「ダイナパルス エスケープメント(脱進機)」を筆頭に、新技術の塊。
シースルーのケースバックから鑑賞できるこのムーブメントのどこがスゴイのか?
まずは「ムーブメントの振動数」に話を絞ろう。ロレックスはこれまで機械式ムーブメントの振動数の上限を8振動にしてきた。現行の「コスモグラフ デイトナ」も8振動の完全自社製ムーブメントを搭載している。だがそれ以前のデイトナは、他社製の10振動ムーブメントがベースだった。でも、それをわざわざ振動数を8振動にして使っていた。
ロレックスがこれまで8振動にこだわってきた理由は、間違いなく信頼性と耐久性の問題。10振動にすると、ロレックスが保証したいレベルの耐久性が実現できない、と判断してきたからだろう。だがロレックスはこの「8振動の壁」を、社内で開発した新技術「ダイナパルス エスケープメント」で乗り越えたのだ。
従来モデルに採用されている「クロナジー エスケープメント」は、「スイスレバー式」と呼ばれる一般的な脱進機より約15%もエネルギーの伝達効率が高い優れモノ。だが構造的にはその改良版に過ぎない。どちらも基本的には、人工ルビーで作られたアンクルの「ツメ石」とガンギ車が接触し、滑りながら天輪(中央にひげぜんまいをセットしたてんぷ)動力を伝達する仕組みだ。
新しい「ダイナパルス エスケープメント」は、滑りではなく、回転運動で効率良く天輪に動力を伝達する。香箱に接続された変速車が、2個のディストリビューションホイールを動かし、これらが交互にテンワの振動を維持するインパルスロッカーを駆動する。
ロレックスはこの構造を「シーケンシャル ディストリビューションエスケープメント」と呼んでいる。これでエネルギーの伝達効率はクロナジー エスケープメントよりも大きく向上したし、部品同士の「当たり」もソフトになった。だから、10振動と動くスピードが速くなっても、エネルギー効率が良いからゼンマイの持続時間も延びるし、優れた信頼性、耐久性も実現できる。
しかも主要部品は金属のように磁化しないので磁気の影響を受けず、軽量で精密なシリコン製の部品などで構成されているので、ゼンマイの持続時間をさらに延ばすことができる。時計業界の大きな問題である、スマートフォンやタブレットPC、バッグの留め具のネオジム磁石などによる、ケースやムーブメントの磁化(帯磁)というトラブルが起きる心配もない。
この新しいムーブメントについてロレックスは、「最先端のイノベーションと独自の設計によるキャリバーを搭載したランドドゥエラーは、ロレックス ウォッチの歴史における真のマイルストーンだ」と述べている。
そしてこれ以外にも、このムーブメントには優れた点が数多くある。ただあまりに専門的すぎるので、このあたりに留めて置きたい。とりあえず「ダイナパルスという優れた新型脱進機」の採用と、「10振動のハイビート(高速振動)」であることが画期的だと理解できれば十分だろう。
薄型で一体型のケースとブレス、新文字盤にも注目!
外観上で目を惹くのは、薄型のケースとブレスレットが一体化したデザイン、そしてハニカムパターンの文字盤だ。薄型で一体型のケースとブレスレットは、1969年のクォーツモデルから発展し1974年に登場したデイトジャストモデルのデザインを継承・発展させたもの。ロレックスの製品の中でも、もっともラグジュアリー・スポーツ的なフォルムになっている。これもランドドゥエラーの画期的なところであり、大きな魅力だ。
さらにハニカムパターンの文字盤の製造には、レーザーエングレービングの技術が使われている。この最新技術を活用した文字盤の立体的な作り込みも、ランドドゥエラーの画期的なところのひとつだ。
クラシックなスタイルで薄型の「パーペチュアル1908」とは対極の、現代的なスタイルとテイストも、これまでのロレックスの製品ラインナップにはなかったもの。とにかく、このランドドゥエラーはロレックスの新時代を、また機械式時計の新しい時代の到来を告げる画期的なモデルであることは間違いない。
ケースサイズは40mmと36mmの2サイズで、ケース&ブレスレット素材はオイスタースチール&ホワイトゴールド(ホワイトロレゾール)、エバーローズゴールド、プラチナの3種類。
- ランドドゥエラー 40
- Ref.127334
- 225万5,000円(予価、今春発売予定)
- 自動巻き、ケース径40mm、オイスタースチールケース&ブレスレット、ホワイトゴールド製フルーテッドベゼル、100m防水
- ランドドゥエラー 36
- Ref.127285TBR
- 1,334万6,300円(予価、今春発売予定)
- 自動巻き、ケース径36mm、エバーローズゴールドケース&ブレスレット、100m防水
- ランドドゥエラー 40
- Ref.127336
- 942万7,000円(予価、今夏発売予定)
- 自動巻き、ケース径40mm、プラチナケース&ブレスレット、100m防水