スイスの時計ブランド「オメガ」といえば、月に行ったことでも有名な「スピードマスター」を思い浮かべる方が多いと思います。高い人気を誇り、オメガのみならず時計界を代表するモデルです。2019年には初代スピードマスター(1940年代に登場)を忠実に復刻した「キャリバー321」が話題となりましたが、このモデル、いまだに入手困難な状況が続いているといいます。なぜなのでしょうか?
スピードマスターとは?
オメガは1848年にスイスのラ・ショー・ド・フォンで創業し、今年で176年を迎える老舗時計メーカーです。オリンピックの公式計時を長年担当しているので、時計に詳しくなくても「OMEGA」というロゴを見たことがある人は多いはずです。
そんなオメガの代表モデルのひとつである「スピードマスター」は、1957年にドライバーやエンジニア向けとして登場しました。1965年にはアメリカ航空宇宙局「NASA」が公式装備品として認定。1969年のアポロ計画では、人類初の月面着陸という偉業達成の瞬間にスピードマスターが現地で時を刻んでいました。
このときのスピードマスターに採用されていたムーブメント(時計を動かす機械)が「キャリバー321」だったのです。そのキャリバー321を忠実に再現し、2020年に登場したのが「スピードマスター キャリバー321 ステンレススチール」です。
10年待ちのモデルも!?
スピードマスターには世界中に多くの熱狂的なファンやコレクターがいます。そうした人たちにとって、キャリバー321復刻モデルは垂涎の一品となっています。
キャリバー321はオメガの他のモデルよりも生産される本数が少なく、日本に入荷する本数も限られているそうです。そのため、発売から約4年が経過した今でも店頭ですぐに買うことは難しく、タイミングによっては注文してから数カ月、長ければ数年待つ可能性があるようです(正規販売店スタッフ談)。
こうした背景もあって、二次流通市場(いわゆる中古品や国内正規販売店を介さない新品)では定価よりも若干高く販売されています。実際に調べてみると、2024年12月現在で正規販売店の定価は237万6,000円であるのに対し、二次流通市場では新品で260万円前後、中古品でも250万円前後で取り引きされているようです。
このキャリバー321を搭載し、時計のケースにホワイトゴールドを採用した「スピードマスター キャリバー321 カノープスゴールド」も2022年に登場しました。こちらは1957年に登場した初代スピードマスターをより忠実に再現した希少モデルで、その価格はなんと驚きの1,408万円(!)に達します。
先日、都内の正規販売店のスタッフに話を聞いたところ、このゴールドを採用したモデルは日本国内にほとんど入ってくることがないらしく、「注文のタイミングにもよりますが、数年単位で納品をお待ちいただくことになるかもしれません。お渡しできるのは10年後といっても過言ではないかもしれませんね」と、半分冗談のような、あるいは本気のようなトーンで話していて、とても驚きました。
10年も待つというのはオーバーな表現だとしても、お金があっても買えないとなると、ひたすら待つしかありません。いま手元に自由に使える1,000万円があったとしても買えないのですから、時計の世界は奥深いと同時に恐ろしい限りです。