長らく続く古着&ヴィンテージ人気。実はこれ、日本だけでなく世界的なトレンドだったらしい。しかもなんと、日本こそが今もっともホットなヴィンテージ市場として注目を集めているのだという。まさに灯台下暗し。
目の前に広がる世界的ムーブメントの正体を知るべく、表参道にオープンした注目ショップ「KOMEHYO VINTAGE TOKYO」を訪問。このコメ兵が手掛けるヴィンテージ専門店で店長を務める小野瀬健佑さんに話を聞いた。
日本のヴィンテージが人気なワケは「バブル」と「国民性」
――今、日本のヴィンテージ品が訪日外国人に大人気だそうですが、どういった背景があるのでしょう?
やはり世界的に90年代ブームやY2Kファッションといったトレンドがあるので、その影響が大きいですね。よく「ファッションは巡る」といわれますが、今はまさに昔流行っていたアイテムの人気がヴィンテージとして再燃しているんです。
――このトレンドの発信源はどこなんですか?
今のヴィンテージ人気のキッカケはアメリカ西海岸だと思います。セレブやラッパーたちがコーディネートに取り入れてSNSにアップする、それを見たファンたちが買いに行く……というお決まりの流れがあります。
――なぜ海外の方が日本へヴィンテージアイテムを買いに来るのでしょう?
海外の方が、日本には状態の良いヴィンテージの在庫が豊富にあると感じていらっしゃるからです。バブル期前後に、ブランド物のブームがありました。円高の影響もあり、多くの人が海外に渡航して、ブランドアイテムを買って帰ったという経緯があります。
しかも日本人は物を大事にする人が多いから、コンディションのいいアイテムもたくさん残っているんです。それと「チェックド・イン・ジャパン」と我々は言っているのですが、日本で培われた高い鑑定技術によって提供できる安心感もあります。
人気はシャネルのバッグ、30年前の3倍以上の値段で展開も
――「KOMEHYO VINTAGE TOKYO」では、どれくらいの数のヴィンテージアイテムを扱っているんですか?
現在は1500点以上といったところですね。バッグだけで約1300品あって、シャネル、エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチ、ディオール、ロエベ、フェンディ、セリーヌ、カルティエ、フェラガモあたりを中心に、人気の高いブランドを集めています。
――具体的に、どういったブランドやアイテムが特に人気なんですか?
シャネルのバッグなどはやはりすごく人気が高いですね。特に「1112」という定番の型。デザインも昔から変わっていないのですが、30年前は定価が15~20万円だったのに、今は定価が170~180万円まで値上がりしているんですよ。なので、「それだったら、ユーズドで60~70万円くらいで買いたい」と考える方が増えているようです。
――確かにそう考えると、ヴィンテージはお得感がありますね。
あとはやはり有名人が着用したアイテムは人気が高く、当店ですと『プラダを着た悪魔』でアン・ハサウェイさんが着たシャネルのツイードジャケットなども人気ですよ。定価はそこまでではなかったと思いますが、映画で着用した影響で、現在はヴィンテージで150万円くらいまで値上がりしています。
あとはシャネルに「サーフライン」というコレクションがあるのですが、ジャスティン・ビーバーさんの奥様のヘイリーさんがこのタンクトップを着用したことで価格が跳ね上がりました。
――なるほど。そもそもそういったセレブたちがこのヴィンテージブームの火付け役ですもんね。
そうなんですよ。セレブたちがシャネルのバッグを斜めがけして使った影響で、バッグの中でもショルダーストラップが長いものは特に人気となっています。
――ちなみに、定番の人気アイテムだとどういったものがありますか?
やっぱり圧倒的に人気なのはバッグですね。洋服と違い、体型を意識しなくていいという強みがあります。特に脇の下に収まるくらいのショルダータイプがここ10年くらいのトレンドかと思います。
ブランドについてはシャネルのほかに、いわゆる「オールド・セリーヌ」「オールド・グッチ」あたりが人気ですね。当時流行ったキャンバス地を使ったアイテムが多く、価格も高騰しているとはいえ、まだ手頃なほうではあるので、お買い求めやすくなっています。
――そもそもヴィンテージの“定義”というのはどうなっているのでしょう?
弊社では「製造から20年が経過したもの」と定義をしているのですが、これは基本的にはバッグを中心とした考え方です。例えば腕時計だと1960年代くらいまで遡らないとヴィンテージとは呼べず、1990年代くらいだと「ネオヴィンテージ」「ネクストヴィンテージ」という呼び方になってきます。
ただ、20年経っていなくても、すでに販売が終わっている限定アイテムなどはヴィンテージとして展開しています。例えば、村上隆さんがデザインしたルイ・ヴィトンのバッグなどは、20年の経過を待たずに店舗で取り扱ってきました。
ヴィンテージの定義は徐々に変わりつつあって、他社さんの中には2010年代のアイテムでもヴィンテージとして認定するショップもあるみたいです。そのあたりはあまり頑なにならず、お客さまのニーズに合わせて柔軟に変えていく必要があるのかな、とも考えています。
表参道は"ヴィンテージの聖地" 出店の狙いと今後の展望
――「KOMEHYO VINTAGE TOKYO」には、どういったお客さんが来られるんですか?
もともと売上の8割はインバウンドを想定していたのですが、やはり外国人の若い女性のお客さまが多いですね。ただ実際にオープンしてみると、今のところ来店客の約3割が日本人です。あまり国内で大々的に宣伝してこなかったので、これは嬉しい誤算ですね。日本人の男性客からは、特にエルメスのシルバーアクセサリーの人気が高い傾向にあります。
――なぜ、表参道というエリアにオープンされたのでしょう?
表参道エリアは"ヴィンテージの聖地"として海外でも有名で、「AMORE」さんや「VINTAGE QOO TOKYO」さん、「CASANOVA VINTAGE」さんといったヴィンテージショップの名店が多く出店しているんです。私たちのターゲットであるインバウンドのみなさんもこの地に集まってこられるので、やはり新規出店は表参道がいいだろうということになりました。
それに、コメ兵はヴィンテージ分野での知名度がまだ高いとは言えません。認知度を高め、より多くの集客につなげるためにも、一番需要が高いエリアに出店するのが最適だと思ったんです。コメ兵がヴィンテージに力を入れているということがもっと広く知られれば、ヴィンテージ市場のさらなる発展に繋がるのではないかとも期待しています。
――オープンしてからの反響はいかがでしょう?
11月30日にオープンしたばかりですが、「内装が可愛い」といってSNSにアップしてくださるお客さまも多いですね。従来の店舗では基本的に店内の写真撮影は禁止させていただいていますが、「KOMEHYO VINTAGE TOKYO」は"ぜひ撮ってください"というスタイルで、外装も内装もかなりこだわって設計しています。
それと、取扱商品は基本的に、法人からオークションなどで上質なものを選んで仕入れています。例えば市場では、バッグの色の剥げた部分を塗り直していたりする商品も出回ってはいるのですが、私たちは人の手が加えられているものは扱いません。オリジナルで、キレイで、上質である、そういったコメ兵クオリティはとてもご好評いただいています。
――最後に、今後の展望についてのお考えを教えてください。
コメ兵はヴィンテージ分野ではまだまだビギナーですが、お客さまのニーズに応え、「ヴィンテージでもコメ兵」と思っていただける店舗作りに励みたいと思います。そしてまだ検討段階ですが、市場がさらに発展すれば2号店、3号店の展開も視野に入れていきたいと考えています。
おそらく、これからもヴィンテージ人気は高まっていくと思います。これからも国籍関係を問わず、ヴィンテージ好き、ファッション好きな方々に刺さるMD作り、店舗作りをしていきたいですね。