外壁の劣化症状と原因を知って賢くメンテナンス
外壁のメンテナンスを行う際には劣化症状を正しく理解してメンテナンスの時期を決める必要があります。本項では外壁に発生する劣化症状について詳しく解説します。
外壁の劣化症状
- 色褪せ
- チョーキング
- クラック・ひび割れ
- 塗膜の剥がれ、浮き
- カビや苔
- シーリングの痩せ、ひび割れ
- 雨漏り
色褪せ
外壁の色褪せは最も初期の劣化症状として挙げられます。毎日家を見ているとなかなか気づきにくいですが、外壁の塗料に含まれる顔料は紫外線によって劣化して分解されます。分解された顔料は粉状になって雨などによって流されて徐々に色褪せていきます。
完全に塗膜がなくなってしまうほど色褪せていなければすぐに塗装をする必要はありませんが、色褪せている状態は美観という観点でも良くないため塗装を検討する段階に入ったと考えてよいでしょう。
チョーキング
チョーキングとは外壁を触ったときに白い粉のようなものが手に付着する現象で、白亜化現象とも呼ばれます。手についた白い粉は上で説明した顔料です。手につくということは簡単に落ちてしまう状態ということであり、塗膜による保護効果はほぼ失われてきていると考えて問題ありません。
チョーキングが更に進行すると白い粉ではなく塗料そのものの色が手に付着します。この状態であれば外壁塗装業者に連絡をして状態を診てもらうことをおすすめします。
クラック・ひび割れ
クラックとは外壁に入ったひび割れのことを指し、ひび割れの大きさによって呼び方も異なります。
ヘアクラックと呼ばれるひび割れはその名の通り髪の毛のように細いひびで、0.3mm以下の幅で深さも浅い状態です。ヘアクラックは固まった塗膜に入ったひび割れなので初期症状として経過観察の判断をされることが多いです。
構造クラックは建物の構造部分である下地にまで及んでいるひび割れを指し、ヘアクラックより幅も広いのが特徴です。塗膜の劣化よりも地震などが原因でズレが生じて発生したひびなので悪化する前に対処をするようにしましょう。
乾燥クラックはモルタル外壁のようなが壁材に発生するひび割れで、水分の蒸発によって外壁材が収縮し、それによって塗料がひび割れしている状態です。外壁材にひびが入っているわけではないため内部に水が侵入するケースは少ないですが下地の乾燥前に塗装をしたために発生するひび割れです。
塗膜の剥がれ、浮き
塗膜の剥がれや浮きといった症状は外壁材と塗膜との間に湿気が溜まることで発生します。塗装から2年ほどで発生するようであれば下地処理が不十分であったり、下塗りをした塗料の乾燥が足りなかったりなどの施工不備が疑われます。塗装から5年以上が経過しているようであれば塗膜の劣化により生じた亀裂や穴から雨水が侵入したことで発生した経年劣化と考えられます。
いずれの場合でも湿気がたまることで外壁材が傷む原因となるため早めに塗装専門業者に相談することをおすすめします。症状の進行具合や原因から対策を練ってもらい、正しい補修をしてもらいましょう。
カビや苔
外壁に生えたカビや苔は日当たりの悪い北側の壁や、近くに植物が生い茂るような多湿な場所でよく見られます。塗膜による保護効果が弱まることで防水機能が失われた結果、外壁の表面に水分が付着し続け、さらに風通しの悪さなどが重なることでこれらの症状となってあらわれます。
初期の状態であれば柔らかいブラシで擦ることで落とすことができ、定期的に掃除を行うことで予防も可能ですが防水機能が切れているため早めの再塗装をおすすめします。一度カビや苔が生えてしまうと常に湿度が高い状態となるので放置すると外壁材が腐食するなどの被害が発生します。外壁材が傷む前に施工をしましょう。
シーリングの痩せ、ひび割れ
シーリング(コーキング)とは外壁のパネルとパネルの目地(隙間)に充填する変成シリコーンなどを原料としたクッション材です。サイディング系の外壁は複数のパネルを張り合わせて作られるので目地が存在します。目地から雨水が侵入しないよう隙間を埋めるのがシーリング材です。また、地震などで建物がズレてもシーリング材によるクッション性によって外壁材同士がぶつかって劣化しないためとしても有用です。
そんなシーリング材ですが紫外線などの影響で5年~10年で寿命を迎えます。劣化症状としては温度変化による伸縮によるひび割れや成分が外や流れ出てしまうことによる痩せで、シーリング本来の役割を果たせない状態です。この状態では前述したような機能がないのでシーリング工事を依頼しましょう。
シーリング工事は古いシーリングを撤去せず上から充填をする増し打ちと既存のシーリングを撤去して新たに充填する打ち替えの2工法があります。基本的には打ち替えで対応しますが防水シートに傷をつけてしまう可能性のある場所などでは増し打ちで対応することもあります。
雨漏り
雨漏りは住宅に発生する症状としてはかなり重度な症状で早急に対応をする必要があります。雨漏りの原因としては塗膜による防水が切れた結果、雨水が侵入して外壁材を劣化させているパターンとクラックなどから侵入した雨水が内部へ侵入している状態が考えられます。
天井や壁にシミのようなものを確認したら早い段階で専門業者へ連絡をして原因調査を行い、正しい対処を行いましょう。雨漏りの原因調査は大工や塗装業者に依頼することもできますが、なかでも雨漏り診断士の資格を持っている業者に依頼すると安心です。
外壁塗装で使われる塗料の特徴と選び方
外壁塗装で使用する塗料は色や性能など幅広く開発されており迷ってしまうことが多いです。本項では塗料ごとの特徴と自分に合った選び方を詳しく紹介します。
外壁塗装でよく使われる塗料とその特徴
外壁塗装で使用される主な塗料に絞って解説します。これ以外にも塗料はあるので欲しい機能がある方は職人に相談してみてもよいでしょう。
塗料の種類一覧
- アクリル塗料
- ウレタン塗料
- シリコン塗料
- ラジカル制御型塗料
- フッ素塗料
- 無機塗料
- 高機能塗料
アクリル塗料
アクリル塗料の特徴
- 色のバリエーションが豊富
- 比較的安価に施工できる
- 耐久性が低い
アクリル塗料は1950年代以降、外壁の塗装剤として長年使われてきた塗料で、他の塗料と比べ安価で購入できます。また大きな特徴として、発色が良くカラーバリエーションが豊富なためデザインを楽しむことができます。
アクリル塗料の耐用年数と費用相場
- 耐用年数:5年~7年ほど
- 塗装単価の相場:1㎡あたり1,200円~1,800円ほど
ウレタン塗料
ウレタン塗料の特徴
- 耐薬品性が高く、工場などに最適
- 伸縮性があるため木材に適している
- 耐久性がやや低い
ウレタン塗料はアクリル塗料に比べると耐久性はありますが、主流の塗料と比べると低いため最近は取り扱いが減少傾向にあります。商品によって防汚性、防カビ、断熱などの機能に特化したものがあるため、塗装される材質・環境に適したものを選べばコストパフォーマンスが高いです。塗りやすい反面、耐久性の観点から定期的な塗り直しが必要です。
ウレタン塗料の耐用年数と費用相場
- 耐用年数:8年~10年ほど
- 塗装単価の相場:1㎡あたり1,800円~2,200円ほど
シリコン塗料
シリコン塗料の特徴
- さまざまな機能に特化した商品が多い
- カラーバリエーションが豊富である
- コストパフォーマンスに優れる
シリコン塗料は最も一般的な塗料として使われ、多くの業者で取り扱いがされている塗料です。価格と性能のバランスが良く、一般的に求められる基準をクリアしているため多くの家庭で採用されています。引っ越しや建て替えなどの現代のライフサイクルを踏まえるとコストパフォーマンスが高いです。
シリコン塗料の耐用年数と費用相場
- 耐用年数:7年~15年ほど
- 塗装単価の相場:1㎡あたり2,500円~3,200円ほど
ラジカル制御型塗料
ラジカル制御型塗料の特徴
- 耐候性が高く、紫外線による劣化に強い
- 劣化原因を対策することで耐用年数が長い
- カラーバリエーションがやや乏しい
ラジカル制御型塗料は塗料が紫外線によって分解される際に発生するラジカルの発生を抑える機能をもった塗料です。ラジカルによって塗膜の破壊が進むため、これを発生させないことで塗膜の劣化速度を抑え、長い耐久性を実現しています。
ラジカル制御型塗料の耐用年数と費用相場
- 耐用年数:12年~15年ほど
- 塗装単価の相場:1㎡あたり2,500円~3,500円ほど
フッ素塗料
フッ素塗料の特徴
- 高い耐久性・防汚性を誇っている
- マンションなど大きな建物だとコスパが高い
- 塗装費用はやや高め
フッ素塗料は美観のまま長期間品質を保つので、なかなか塗り直しがしにくい大型施設に向いています。メンテナンスの手間がかからないため新築物件を建てた際に使用されることが多いですが、その分費用が高額になりがちです。
す流であるシリコン塗料よりも長持ちする塗料のため屋根塗装で主に使用されることが多く、屋根をフッ素塗料、外壁をシリコン塗料で塗装することで同時期に再塗装ができるといった利点があります。
フッ素塗料の耐用年数と費用相場
- 耐用年数:15年~20年ほど
- 塗装単価の相場:1㎡あたり3,500円~4,500円ほど
無機塗料
無機塗料の特徴
- 耐久性・防汚性が非常に高い
- 艶のある外観を保つことができる
- 柔軟性に乏しくひび割れが起こる可能性がある
無機塗料は無機物を混ぜて作られた塗料で、紫外線によって劣化しないため15年以上の耐久が期待できます。塗装サイクルを大きく伸ばせることから注目されている塗料ですが、完全に艶のない無機塗料がないことから、マットな質感を求めている人には不向きです。
無機塗料の耐用年数と費用相場
- 耐用年数:20年前後
- 塗装単価の相場:1㎡あたり4,500円~5,500円ほど
高機能塗料
高機能塗料の特徴
- 耐候性や断熱など特化した性能を持つ
- 求める機能によって費用や耐用年数はさまざま
- 対応できる職人が少ない塗料もある
高機能塗料と一括りにしていますが、光触媒によって汚れを対策しているものや断熱、遮熱性能を活かして省エネができるものなど用途に応じてさまざまな塗料が開発されています。こういう塗料があればいいのにと思った方は塗料メーカーや塗装業者に確認してみると自分に合ったものが見つかるかもしれません。
高機能塗料の耐用年数と費用相場
- 耐用年数:塗料によって異なる
- 塗装単価の相場:塗料によって異なる
自分に合った塗料の選び方
上記の主要な7つの塗料を踏まえたうえで、自身の目的に沿った塗料を選びましょう。ここでは自分に合った塗料の選び方を解説します。
塗料の選び方の一例
- メンテナンスを極力減らしたい
- 頻繁に塗り替えしたい
- 出費をなるべくを抑えたい
メンテナンスを極力減らしたい
メンテナンスの手間を減らしたいのであればフッ素塗料や無機塗料のような耐用年数の長い塗料がおすすめです。現在住んでいる家に今後も30年以上住むのであれば塗装の回数を減らすことも可能です。これらの塗料での外壁塗装は1回あたりの塗装費用は高くなりますが、塗装の回数を減らすことで足場のような固定費用の分お得に工事ができるのも事実です。
また、日々の掃除の手間まで考えるのであれば高性能塗料の中でも光触媒機能を持つものがおすすめです。光触媒塗料は付着した汚れを光の力で分解し、雨によって洗い流すといった効果を持ちます。日当たりの良い場所である必要はありますがこのように手間を減らすことができる塗料も存在します。
頻繁に塗り替えしたい
家は住むためのものですが、周囲の家と比べて目立たせることである種のファッション的側面を持ちます。頻繁に塗り替えをして気分を変えたいという方であればウレタン塗料のような塗料がおすすめです。
ウレタン塗料は色の種類も多く、自分の理想の色で塗装をしたいという夢を叶えやすいです。定期的に塗り替えを行うのであれば短めの耐用年数も気にする必要もあまりなく、塗装費用も安価に抑えることができます。
出費をなるべくを抑えたい
極力出費を抑えたいという方にはシリコン塗料がおすすめです。塗装は前述通り何度も行うものなので単純な施工価格だけでなく耐用年数とのバランスも考える必要があります。長く住むことを前提とした場合、ある程度の耐用年数で塗装サイクルを減らしつつも費用を抑えて塗装をする場合はシリコン塗料がコストパフォーマンスに優れます。