相続した土地などを手つかずで持て余していませんか?「土地は手放したくないけれど、活用の方法がわからない」ときに活用できるのが定期借地を利用した土地の貸し出しです。定期借地は、土地を貸し出すことで利益を得る不動産運用の一つで、使わない土地を有効活用できます。
借地にするためには、いずれかの定期借地権から選択が必要で、自身が望む土地の使用用途に適した条件のものを選ぶ必要があります。
この記事では定期借地権についての基礎知識から、活用方法まで詳しく紹介します。実際に活用するためにも、借地によるメリットやデメリットを理解し、自身にどのような利益がもたらされるものなのか、よく検討するようにしましょう。
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定期借地に関する基礎知識
定期借地とは、あらかじめ決まった期間を過ぎると、借地権が消滅する土地のことです。「普通借地権」との違いを踏まえながら、まずは定期借地について詳しく見ていきましょう。
定期借地権とは
定期借地権とは、一定期間だけ借りられる土地の権利のことを指します。期間が過ぎたら土地を借りられる権利がなくなり、借地権の効力が失われます。借地権が消滅したら、借主は土地を貸主に返還しなければなりません。貸し出す期間があらかじめ決まっているため、土地の貸主は計画した期間のみ不動産運用ができるというわけです。
また、定期借地については以下のように法律において定められています。
存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
普通借地権との違いは?
普通借地権とは、契約に対して更新があります。定期借地権との大きな違いは、契約の更新があるかどうかという点です。普通借地権では、土地を借りている借地人の権利が強く守られており、土地のオーナーの方から契約を解除したい場合には、正当な事由が必要となります。さらには莫大な立ち退き料を支払わなければなりません。
つまり普通借地権で1度契約してしまうと、借地の解約が極めて困難となり、半永久的に土地の利用権が戻ってきません。普通借地権と定期借地権の違いをよく理解し、普通借地権は非常にリスクが高いことを知っておきましょう。
定期借地権の種類
定期借地権には以下の3種類があります。
- 一般定期借地権
- 建物譲渡特約付き借地権
- 事業用定期借地権
貸主は一般的な「長期間の定期借地権」か「建物付きで買い取る借地権」または「事業に貸し出す借地権」のいずれかを選ぶ必要があります。どれを選ぶかは貸主の運用方法次第で変わってくるため、それぞれの特徴をよく理解して選択するようにしましょう。
一般定期借地権とは
一般定期借地権は、あらかじめ決められた一定期間だけ、土地を貸すことを条件とした借地権です。条件として借主は契約満了時に、土地を更地にして返還しなければなりません。
一般定期借地権の概要は以下のとおりです。
残続期間 | 契約更新の有無 | 契約方式 |
50年以上 | なし | 公正証書(特約の合意含む) |
建物譲渡特約付き借地権とは
建物譲渡特約付き借地権は、借主が土地に建てた建物を最終的に買い取ることを約束する借地権です。
建物譲渡特約付き借地権の概要は以下のとおりです。
残続期間 | 契約更新の有無 | 契約方式 |
30年以上 | なし | 建物譲渡特約 |
この借地権は契約期間が若干短めで済むため、契約終了時の年齢に関する心配は低めといえます。ただし契約終了時に、貸主が建物を買い取れないと借地権が消滅しないため、その点は注意しましょう。
事業用定期借地権とは
事業用定期借地権は、事業用途のみに限定した借地権です。
事業用定期借地権の概要は以下のとおりです。
残続期間 | 契約更新の有無 | 契約方式 |
10年以上50年未満 | なし | 借地権設定契約書を公正証書にして契約 |
この借地権は、コンビニや工場などの事業に使う場合の借地権なので、あらかじめ決められる残続期間も10年~50年未満と、事業に合わせて柔軟に設定されています。
ただしマンションといった住宅の事業では、対象外で使うことができません。またこの事業用定期借地権も、返還する際は土地を更地にすることが条件になっています。
借地の賃料の決め方
借地の賃料を決めるにはある程度の相場を知っておく必要があります。それぞれに以下のような相場があるので、把握しておきましょう。
借地の種類 | 賃料相場 |
普通借地 | 固定資産税の3倍程度 |
一般定期借地権 | 路線価の2%程度 |
建物譲渡特約付定期借地権 | 路線価の2%程度 |
事業用定期借地権 | 路線価の6%程度 |
さらに、4つの賃料相場の調べ方があります。以下の項目でそれぞれ説明します。
積算法
不動産の専門家でない人が賃料を算出するのに適した方法です。以下の計算式で求められます。
積算法で必要なのが期待利回りで、投資額に対し年間収益が占める割合のことです。とはいえ、一般的には概算で「2%」として計算するといいでしょう。また、必要経費は「固定資産税+都市計画税」としてください。
さらに更地価格は更地にして売却したらいくらかという価格のことで、公示地価や一括査定などで調べられます。
積算法は、土地から得られるであろう利回りから賃料を算出するので、精度も高いというメリットがあります。
取引事例比較法
賃料を決めたい土地と類似した利用をされている土地を参考に、賃料を算出する方法です。建物込みで貸しに出ている物件があれば、建物分の賃料を引いて土地だけの賃料を算出します。
しかしながら、この方法は参考事例となる物件を見つけるのが難しいというデメリットがあります。
収益分析法
借主が借地で事業を行う場合にできる算出方法で、土地が将来生み出すであろう収益を元に価格を決めます。
ただし、土地に建物を建て、そこから土地の貢献度を分析して差し引く必要があり、不動産のプロでなければ算出は難しいでしょう。
公租公課倍率法
公租公課とは、固定資産税と都市計画税のことです。これに一定の倍率をかけて賃料を求めます。土地の所有者なら固定資産税と都市計画税は自治体から送られてくる納付書で調べることができます。倍率は、厳密に計算すれば非常に複雑で、地域によって違うこともあるのですが、およそ3倍で計算するとよいでしょう。
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定期借地権を設定する土地活用のメリット
定期借地権を設定するメリットは、土地を決まったタイミングで取り戻せるだけでなく、税金対策もできる点です。借主都合の延長などもなく、将来的な運用計画を組むことができます。
さらに借地としている間は、固定資産税が安くなることも考えられるため、税金の負担も軽減できるでしょう。貸主は土地を貸し出すだけなので、事業リスクも比較的少なく済みます。定期借地権で土地活用をする各メリットを、詳しく見ていきましょう。
土地が確実に戻ってくる
土地を所有しているなら、将来マイホームを建てたりマンション経営を考えたりしている方も多いでしょう。しかしながら、仕事の都合や資金の面ですぐに実行に移せないこともあります。
そのような場合に、定期借地として予定のタイミングまで土地を貸せば、地代収入を得て資金を増やすことが可能です。
また子孫に土地を相続させたい際にも大きなメリットがあります。今は具体的に活用の予定がなくても、定期借地にしておけば地代を得ながら子どもや孫に確実に土地を残すことができるからです。将来的に土地の活用を考えているのであれば、返還期間が定まっている定期借地のメリットは大きいと言えます。
相続税対策ができる
定期借地とした土地は、権利の残続期間に応じて土地の評価額が減額されるため、結果的に相続税を抑えることができることもメリットです。
定期借地権の残続期間による評価額への影響については、以下をご覧ください。
残存期間 | 評価額 |
15年以上 | 20% |
10年以上~15年以下 | 15% |
5年以上~10年以下 | 10% |
5年以下 | 5% |
具体的にいえば、もし定期借地として場合は評価額を55~75%まで抑えられるため、大きな相続税の対策となるでしょう。
固定資産税・都市計画税の節税ができる
住宅地を定期借地とした場合は、小規模宅地の適用により固定資産税や都市計画税が大きく軽減されます。固定資産税は更地の6分の1、都市計画税は3分の1になることがあります。
土地の評価額について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
借入金なし、ノーリスクで地代が得られる
定期借地権は事業などを自身で行うわけではないので、ノーリスクで地代を得られることもメリットといえます。定期契約で土地を長期間貸し出すだけなので、例えば事業を起こす、マンションを建てるなどのために借入する必要がなく、安定的な地代だけが得られます。そのため定期借地権は、事業リスクを負うことがない資産運用方法であるといえるでしょう。
定期借地は初期費用も必要ではないので、借地化を始めるために借り入れをする必要もありません。例えば、不動産運用では賃貸経営をするとなると、建築費等に初期費用がかかってしまいます。
このように定期借地は初期費用や維持費も必要としないため、借り入れをすることなくノーリスクで安定的に運用することができます。
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定期借地権を設定する土地活用のデメリット
定期借地権を設定するうえでのデメリットは、土地活用の方法が少なく途中解約もすることができない点などです。もし、途中で土地の運用方針が変わっても、契約終了までは借地を辞めることはできないので、決断する際にはそのことをよく検討する必要があるでしょう。
ここからは、そのような定期借地化によるデメリットを紹介します。
中途解約することができない
借地権においては期間が定められており、途中で解約することはできません。そのため、例えば病気などで土地を子供に今すぐ相続させたいと思っても、途中解約はできないのです。
さらに、契約時の条件も地主都合で変更はできません。最長で50年は借地以外には使用ができなくなるので、定期借地にする前にリスクをよく計算する必要があります。
土地活用の幅が制限される
定期借地としている間は、自身の土地であっても自由に扱えなくなるため、土地活用の幅が制限されることもデメリットです。貸主にとって定期借地はある意味、土地を凍結されてしまうことともいえるでしょう。
地代の安定収入は得ることができますが、貸主は自身の資産を自由に扱えないリスクを負うことになるのです。
賃貸と比較して収益性が低い
地代を安定的に得られる一方で、賃貸経営などと比較すると収益性が低いこともデメリットです。もし人の流動性が高い土地であるなら、定期借地として得られる地代より、どうしても賃貸の賃料のほうが収益率は高いという場合もあります。
特にそのような土地の場合には、地代収入と賃料収入では利益に差が生まれてしまうでしょう。そのため、どちらの土地活用方法がより収益性が高いのか、リスク問題も加味しつつ検討する必要があります。
事業用定期借地権として選ばれる可能性が低い
定期借地権の中でも、事業用定期借地権は残存期間に選択肢があり、比較的地代も高く得られる傾向にあります。しかし、事業用定期借地権は立地条件の要件が厳しい場合も多く、借主が見つかる可能性が低いです。
事業内容にもよりますが、例えばコンビニなどの集客力が必要な事業の場合には、人通りの多い交差点や駅前などの立地が求められます。そのため、よほど立地条件がしっかりと揃っていない限りは、事業用借地権として選ばれるのは難しいでしょう。
定期借地の土地を活用するときのポイント
定期借地を上手に活用するためにはいくつかポイントがあるので、事前に把握しておくことが大切です。また、定期借地として需要がない土地の場合であった場合は、最終的に売却するという手立てもあります。それぞれの土地活用ポイントを確認していきましょう。
地代の値上げをしたいなら交渉する
定期借地権の唯一の収入である地代を値上げしたい場合は、借主に交渉することをおすすめします。あらかじめ定める契約内容は変更できませんが、地代は借主に交渉して双方が合意すれば、値上げすることが可能です。そのため、もし収入を上げたいなら値上げしたい理由を明確に示し、借主に交渉を持ちかけてみましょう。
また値上げの交渉材料として、似ている土地案件の査定相場を持っていくのもおすすめです。相場より現在の地代が安い場合は、土地の相場価格を提示することで、値上げは正当なものであるという印象も強まります。交渉する際は、あくまで相手方が承認しなければ成立しないため、礼儀を欠くことがないようにやり取りをしましょう。
定期借地権の地代相場については、こちらの記事でも詳しく説明しています。
査定サイトで地代を把握する
地代の相場を把握するためにも、査定サイトを活用することがおすすめです。特に一括査定サイトなら、さまざまな不動産業者の査定を見比べることができるため、より詳細な情報を集めることができます。
査定サイトを利用して地代の相場を知ることができれば、これから定期借地にする方も、地代などの値上げ交渉をしたいという方も、地代を決める判断材料が増えます。自身の収入に関わる部分なため、土地の価値をよく把握しておくことは大切なことです。
また一括査定サイトでは、複数社の不動産業者に電話したり公式サイトにアクセスして、必要情報を入力したりするなどの手間もかかりません。土地の定期借地化や売却などを検討している方は、一括査定サイトをうまく活用することは、さまざまな観点からもおすすめといえます。
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その他の一括査定サイトや選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
「【2024年2月】不動産一括査定サイトおすすめランキング|20社分の評判を徹底解説」
借地として活用できない場合は売却を検討する
もし将来的な活用や相続との問題に悩む場合には、無理をせずに潔く売却を検討することもひとつでしょう。定期借地は地代が稼げるといっても、立地条件があまりよくない土地だと、よい契約に結びつかないことも考えられるからです。
また高齢になり相続が迫っている方は、借地にしてしまうと、存命中に資産を子供に受け渡すことができないことも考えられるでしょう。定期借地は、あくまでも不動産運用の一つではありますが、唯一の選択肢ではありません。土地を売却すれば、純粋な資産として換金することも可能です。
さらに売却で得たお金で不動産を購入して、より有益な資産運用に転換するという選択肢もあります。受け継いできた土地だとしても、それが重荷になるよりは、所有者の幸せを優先できる選択肢を選ぶことが大切です。借地として活用することが難しい場合には、土地売却を検討してみてはいかがでしょうか。
土地売却の手続きについて詳しく知りたい方は、こちら記事もご覧ください。
「土地売却の手続きはややこしい?流れと必要物を知ってスムーズに売却」
定期借地の土地の活用に関するQ&A
定期借地について概要やメリットについて見てきましたが、最後に定期借地の土地活用に関するQ&Aを紹介します。
定期借地権を設定するのにおすすめな要件や、実際にどうやって定期借地権を設定するのかなど、よくある疑問について見ていきましょう。定期借地についての疑問を解決して、土地活用に知識を生かしてください。
定期借地権を設定する土地活用がおすすめの人は?
定期借地権を設定するうえで特におすすめな方は、例えば安定的な収入を手に入れたい方や、決まった期間だけ土地活用を行いたい方などです。
定期借地権は、低リスクで長期間安定的な収入を得られるという特徴があるため、そのうまみが大きい人がよりおすすめといえるでしょう。そのため、自身の土地の条件や資産計画などをよく考慮して、多くの意味で利益があるかを見極めることが大切です。
具体的に定期借地権を設定するのがおすすめな方は、以下の要件に該当する方です。
- 安定的な収入を低リスクで得たい方
- 土地の管理を任せながら収入を得たい方
- 土地を手放さずに活用したい方
- 決まった期間の間だけ土地を活用したい方
- 事業リスクは負いたくないが不動産を運用をしたい方
- 土地のために借り入れをしたくない方
- 資産を手元に残すために税金対策をしたい方
定期借地権の設定方法は?
定期借地権は、契約書にそのことを記載することで、初めて定期借地として設定できます。その際に、正確には賃貸借契約書という契約書内で、定期借地としての契約であることを明記し、契約終結をする必要があるでしょう。
その賃貸借契約書内では「賃貸人は賃借人に所有している土地を定期借地とし、契約を締結する」というような文言で、定期借地としての契約を両者が了承したことがわかる形で残されます。さらに、定期借地の契約に関する詳細な条件を記しておくことも、忘れてはなりません。お互いに契約内容を確認し、了承すれば定期借地としての契約が終結します。
また事業用定期借地権などの場合は、公正証書で契約する必要があります。借地借家法という法律でも、契約の際は必ず公正証書を使用することを定められているので、事業で活用することを考えている方は必ず確認しましょう。
前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書で、その文書には執行力と証明力を有します。文書通りに契約がなされなかった場合には、裁判所を通して強制執行などが行われる場合があります。
期間中に相続が発生した場合は?
万が一、定期借地として契約している期間中に貸主が亡くなり、相続が発生した場合には契約の名義が相続人になります。定期借地権は、土地の権利を捨てる契約ではないため「契約者である貸主=名義人」が亡くなったあとも、権利は正当な資産として相続されるのです。
また定期借地とする時点で、土地の面積や境界線などの測量を行うため、ある意味相続の下準備も行われています。そのため、土地をスムーズに受け継いでもらえるでしょう。
まとめ
定期借地は、長期間土地の主導権を失うなどのデメリットもあります。しかし税金を払うだけだった土地も、収入を得ることができるようになります。そのうえ、一定期間で原状回復した土地が返還されるという確約があるため、その後に土地を活用することの障害にならないことは、大きな利点と考えられるでしょう。安定的な収入にもなるので、老後のための資産運用にも期待が持てます。
さらにはリスクも少なく、コツコツと資金を増やすことができるので、土地を持て余している方は検討する価値が十分あります。本記事で紹介したメリットとデメリットを比較し、自身の所有する土地が借地に向いているのかを考えてみましょう。
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