お金の話の中でも、特に切り出しにくいのが「相続」問題。しかし、相続問題を放置したままでいると、いざという時、家庭内のトラブルにつながることもあります。また、「うちは資産家でもないし、相続は関係ない」と考える人も多いですが、相続は意外と多くの家庭に関わる問題です。
そこでこの連載では、『ぶっちゃけ相続』(ダイヤモンド社)の著者で税理士の橘慶太氏に、家族と一緒に相続の知識を身に付ける方法や相続のトラブル事例、最新の相続ルール変更について詳しくお話を伺います。第2回は、トラブルになりやすい相続問題の事例について。
生前贈与の有無がトラブルの原因に
━━普段お仕事をされている中で、最もトラブルになりやすいと感じる相続問題の事例を教えてください。
まず思い浮かぶのが、亡くなった方が生前中にお金を贈与していた子どもと、贈与していなかった子どもがいるケースです。
贈与されなかった子どもは「兄弟(姉妹)に贈与された分は、相続の時に調節するべき」という意見を持つことが多いです。一方で贈与されていた子どもからすると、「贈与と相続は別問題、贈与を受けていたのにはきちんと理由があるから、調節する義務はない」という言い分があります。その結果、双方がぶつかってしまうことがよくあるのです。
あとは、「そもそも贈与なんて受け取っていない」と、うやむやにしてしまう方も多いですね。
法律的には、贈与を受けた分は調整するのが正しいです。しかし、現金での贈与の場合は記録が残らないので、「もらった・もらっていない」で水掛け論になりがちです。銀行振込の場合は記録が残りますし、不動産の贈与の場合も登記簿謄本に履歴が残るので、これらは立証ができるのですが。
介護の「寄与分」認定にはかなり高いハードルがある
━━他に何かトラブルになりやすい事例はありますか。
あとは、介護をした子どもと介護をしなかった子どもの間で争いが発生することが多いです。やはり高齢になってくると認知機能が低下してしまいますが、一方で、集団生活に抵抗があったりご自宅にとても愛着があったりする方は、「施設に入りたくない」と考える方も非常に多くて。
しかし、1人でトイレに行けない状態になったら、誰かしらが付きっきりで見なくてはいけないですよね。 たとえば高齢夫婦の場合、どちらかが先に亡くなると「1人だと心配だから」と、長女や長男が一緒に住み始めることがよくあります。すると、長年介護をしてきた長女(長男)と介護をほとんどしなかった次女や三女(次男や三男)と争いが起きるというのは、けっこう典型的なケースです。
亡くなった方の介護を献身的に行った人は、「寄与分」といって多く相続できる制度があります。ただ、寄与分は認められるハードルが非常に高いですし、認められたとしてもほんの少し増える程度なんです。
寄与分は、「介護をしていた時間数×ヘルパーに依頼していた場合の時給」のような形で計算します。しかも、介護をしていた人はプロのヘルパーではないという理由で、「ヘルパーの時給が2,000円ならその60パーセントくらいの時給だろう」と判断されてしまいます。
さらに、寄与分の主張をするには介護の記録をしっかり残していることが条件です。トイレやお風呂の記録を細かく残している人は少ないので、そうなるとやはり寄与分は認められにくいですね。
『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】 相続専門YouTuber税理士がお金のソン・トクをとことん教えます!』(橘慶太 著/ダイヤモンド社 刊)
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