『感情の可視化』から学ぶ「感情に振り回されない人生の過ごし方」

仕事、結婚、からだのこと、趣味、お金……アラサーの女性には悩みがつきもの。人生の岐路に立つ今、全部をひとりじゃ決め切れない。誰かアドバイスをちょうだい! そんな時にそっと寄り添ってくれる「人生の参考書」を紹介。今回は、『感情の可視化』(岡城良太著・徳間書店)をライターのミクニシオリさんが書評します。

自分のことは、自分が一番よく分かっているはず……ですが、自分のことを客観視できているかと聞かれたら、堂々と「はい!」と答えられますか?

多くの人は自分の内と外に二面性を持っています。何か行動した時に、それが「相手のためなのか、自分のためなのか」が分からなくなったり、やろうと決意したことができなくなったり……それが“なぜ”なのか、上手く説明できますか?

そんなことできなくても困らない、そう思ったことすら、本当の自分の声ではないのかもしれません。もしも、自分の気持ちや行動、不安や喜びに一つひとつラベルがつけられたら、生きていくのはもっと簡単になると思いませんか?

▽この本を読んで分かること
・自分でも気づいてない自身の行動原理や価値観
・感情に振り回されず生きていく方法
・理想の人生をジャーナリングで手繰り寄せる方法

ワークに沿ったジャーナリングで「感情を可視化」する

『感情の可視化(岡城良太著・徳間書店)』は、都心の本屋でビジネス本コーナーのランキング1位を取っていたのが、気になったきっかけだった。怒っているつもりはなくても、家族やチームに「今日イライラしてない?」とツッコまれたこともあり、帯の“感情の声を聞け”という一文が気になった。感情表現が豊かな人は、時に自分の感情に振り回されすぎてしまう。自覚があったこともあり、本を読んでみることにしたのです。

本は6つのチャプターに分かれており、例に沿ってジャーナリングを行うことによって、自身の感情や価値観を可視化しながら、理想の人生に向かって行動していこうという内容です。ジャーナリングのやり方は色々あって、ネットでも出てくるのだが、この本でのジャーナリングはまとめ方がビジネスより。だけど、記入例で気をつけるポイントなどに触れられており、自分でも実践しやすそうです。

まずチャプター1〜2で、自分の「感情の可視化」を行っていきます。自分がどんな時に嬉しい、楽しい気持ちになり、どんな時に不快感を覚えるかを、ジャーナリングによって探ってみます。これが意外と面白く、実際にジャーナリングしてみることの重要性を感じさせられました。

喜びや不快感で感情が波打っている時には、感情の本当の名前が見えてこないのかもしれません。ひとたび冷静になって、ジャーナリングというワークに取り組んでみてはじめて「あ、自分はこれにストレスを抱えていたんだ」「本当はこうしたかったのかも」と、客観的に考えることができました。

人が感じる快・不快には組み合わせや構造があることを知って、納得感を持ってワークに取り組めました。これが、ジャーナリングの第一歩です。

完成されたワークで「振り返り」に意味があるジャーナルに

自分の感情を可視化・整理できたら、どうしたら不快な感情に振り回されずに済むか、より快の多い人生に向かうためにはどうすればいいのかを掘り下げていきます。チャプター3〜5では、感情という曖昧なものを、理想の人生や具体的な行動に落とし込んでいくのです。達成感や楽しさなど、快感につながらない行動はなかなか続かないということも学び、自分にとっての無理のないペースを考えていきます。

ジャーナリングは日々行うだけでも意味がありますが、振り返りを行うことでより客観的に自分の感情を観察できるようです。自分の健康状態や仕事、お金の使い方などを書き出しておいて振り返ることで、例えば目標が達成できていない時に「なぜ行動できなかったか」を探ることができるそう。

毎日書き溜めていくと、1週間、1ヶ月、1年と、自分の過ごしてきた日々を大枠で捉えて、見直すことができます。これを繰り返していけば「あの時こうしておけばよかった」「知らないうちに機会を損失していた」という後悔がなくなるのかもしれません。

昔、会社で細かめの日報・週報を書かされていたことがあったのですが、その時はその使い道や振り返り方がイマイチ理解できておらず、日々「なんのためにコレ書いてるのかな」と面倒くさがっていました。ジャーナリングは自分の中でなんのために行うかを明確にして、そのアジェンダが整っていると、さらなる真価を発揮するということが分かりました。

「感情を可視化」することのメリットが、継続の理由になる

私自身、これまで何度かジャーナリングに取り組もうとしてみたことがあります。例えば、毎日一言ずつの日記を書くのも、ジャーナリングの一種です。だけど、自分の中で「何を書いておくべきか」が明確になっていないとなかなか続かず、何冊もノートや手帳を無駄にしていました。

「感情の可視化」を目的にジャーナリングをしてみてまだ日が短いものの、日記を続けようと考えていた時よりはかなり続けやすさを感じています。続けた後にどんなものが手に入るか、なんの役に立つのかが理解できたことで、自分の中でジャーナリングと、感情に向き合う理由をしっかり作ることができました。

つくづく、何事も「納得感を持って行う」という快があることが大切なんだな、と気づくことにもなりました。なんとなく始めるダイエットが続かないのと同じように、何かを始める時には理由付けが必要なのです。本を読んだことで、自分がジャーナリングに向き合う理由がはっきりしたので、これからは無理なく続けられそうな気がしています。

感情を可視化し、コントロールできるようになるということは、我慢をするということではないことも知りました。感情的な人間が感情の起伏や爆発を我慢しようとしても、さらなる大爆発を起こすだけ。それよりも、自分が楽しい・嬉しいと感じること、快楽がなんなのかを知り、快楽の多い人生を過ごすために、日々微調整していくことが大切です。

理想の人生は、急ハンドルを切ってやってくるわけではありません。だけど、着実に手繰り寄せていくものなのだということなのでしょう。

(ミクニシオリ)

※この記事は2025年04月19日に公開されたものです

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