人事評価システムを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。本稿では、人事評価業務の抱える課題と、人事評価システムの導入メリット・効果およびデメリット・注意点について解説します。システム導入前の確認事項についてもまとめているので、人事システム導入を検討する際はぜひ参考にしてください。
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人事評価システムとは
人事評価システムとは、従業員の人事評価や能力を可視化して継続的な人材育成や適切な人員配置を効率的に進めるためのツールです。人事考課や目標管理などの業務をシステム化することで、評価基準や評価結果を従業員に公開でき、従業員のモチベーション向上にも役立ちます。
まず始めに、そもそも人事評価業務には、どのような課題があるかを整理しましょう。
人事評価システム導入前の課題
従来の人事評価業務には、さまざまな課題があります。具体的な課題の内容を説明します。
1、人事担当者の負荷が大きい
人事評価業務は、人事担当者にとって大きな負荷のかかる作業が多い仕事です。人事評価シートの集計・取りまとめ・確認だけでも膨大な時間がかかります。さらに、毎年人事評価シートのブラッシュアップや評価ルールの見直し、人事考課表を修正する作業量も無視できません。
人事担当者は、人事評価以外にも人材育成や採用業務など、重要な業務を数多く抱えています。しかし人事評価業務の作業量が多く、なかなか他の業務に時間を割けない現場も少なくありません。
2、人事評価が属人的で不平等感がある
人事評価シートはあるものの、数値化しない定性的な評価軸では、実際の評価は上司(評価者)の主観が入る余地が大きくなります。そのため、上司の評価は不平等だと感じる従業員もいるでしょう。特に従業員の自己評価と上司の評価が大きく乖離している場合、不平等感は大きく募ります。
3、スキルと担当業務のミスマッチ
定性的な評価を行っていると、従業員の成果に対する評価が実態と乖離してしまうケースも多く見られます。そのため、従業員のスキルと担当業務との間にミスマッチが起こり、従業員の仕事に対する意欲の低下を招きます。
また、従来の人事評価制度では、従業員のスキルをExcelにはまとめていても全社的に俯瞰できる仕組みを持たないケースがほとんどです。そのため適切な人材配置ができておらず、スキルと担当業務のミスマッチを招く原因のひとつとなっています。
4、従業員のモチベーションが低い
従来の人事評価制度では、一般的に上司の評価基準や評価結果を従業員に公開しないケースが多くあります。従業員にとっては、昇格・昇給などの結果を知るだけで、評価のフィードバックがなければ、次期に何を改善すれば評価が上がるのかが不透明な状態です。
この状態に加えて、評価の不公平感やスキルと業務のミスマッチがあると、仕事に対する従業員のモチベーション低下を招きます。
5、企業理念や経営目標が浸透しない
従来の人事評価制度や目標管理制度では、企業理念や経営目標を浸透させる仕組みがないケースもよく見られます。企業理念や経営目標が単なるお題目となってしまい、従業員の業務と結びついていないと、経営目標に対して効率的に業務が進んでるかについても把握しにくくなります。
これらの課題は、人事評価システムを導入することで解消可能です。次に、人事評価システム導入の具体的なメリットや効果について解説します。
人事評価システム導入のメリット・効果8つ
人事評価システムを導入するメリットや導入効果は以下の8点です。
1、明確な評価設定を実現
人事評価システムを導入することで評価項目を詳細に設定できます。定性的な評価項目だけでなく、数値化した定量的な評価項目もバランスよく取り入れることで、具体的な評価が可能です。
また、明確な評価設定によって、評価を行う上司の主観は入り込みにくくなり、より正確な人事評価を実現できます。上司は、自分の部下同士を比較して相対評価を行いがちですが、明確な評価項目に沿って評価を進めることで、より公平な評価が可能です。
2、人事評価業務を効率化・スピードアップ
人事評価業務で手間のかかる評価シートのメンテナンスや評価の取りまとめなどの作業を効率化できる点も人事評価システムの導入メリットです。評価シートのメンテナンスは画面操作を行うだけなので分かりやすく、変更した内容は集計などにも自動反映されるため、メンテナンスの工数は少なくて済みます。
人事評価を取りまとめるための手作業はなくなり、人事評価が完了した時点でデータは自動集計されるので、評価の進捗状況も管理画面ですぐに把握できます。評価の遅れている部門や人に対して直接アラートを出す機能もあるので、進捗のフォローも容易です。
3、人事情報の一元管理により付随して得られるメリット
人事評価システムにより、従業員の評価や業務経験、スキルなどの情報を一元管理できるようになります。評価状況はリアルタイムで確認でき、評価シートを取りまとめる手間もかかりません。
これまで紙で評価シートを運用していた場合は、システム導入によりペーパーレス化や人事評価完了までにかかる時間の削減もでき、大幅なコスト削減を実現できます。
また、全社・部門別・従業員別でさまざまなデータ分析ができる点もメリットのひとつです。部門別に評価状況を確認し、評価の甘辛調整を行ってより正確な人事評価ができる製品もあります。
4、目標と人材をマネジメントできる
人事評価システムを導入することで、目標と人材をセットで管理できるようになります。
企業理念や経営目標を設定し、それらを反映した部門の目標設定、さらに従業員の目標設定も可能に。従業員が目標設定をした時点で、自動的に企業理念や経営目標を反映でき、全社の人的リソースを効率的に業務達成へ集中させる仕組みが構築できます。
予実管理をリアルタイムで行える製品の場合、現時点の目標達成度を確認し、進捗に遅れがある部門や従業員に対する迅速な対策も可能です。
5、人材採用・人材育成の質の向上
人事評価システムの導入によって、自社に不足しているスキルを精査し人材採用に活かすことが可能です。また、従業員単位で過去の評価状況やスキルを確認し、より効果的な人材育成ができるようになります。
人材採用や人材開発の質が向上することで、将来を見通した計画的な人材を調達でき、より競争力の高い組織を実現できます。
6、給与の査定や労務管理の自動化
人事評価システムでは、目標の達成度で評価を行い、給与テーブルと連携して査定を自動化できる製品もあります。製品によっては、査定後の給与額をシミュレーションする機能を提供しており、人件費の変動予測も容易です。
また、製品によっては勤怠管理や工数管理を行えるものもあり、テレワークなどに対応して労務管理まで自動化できるものもあります。
7、従業員のモチベーション向上と離職予防
人事評価システムの導入によって、より正確で公平な人事評価が可能です。システムで評価項目や評価結果を公開できるため、人事評価自体の透明性がアップ。評価結果を見て、従業員は自分の改善点に気づき、昇給・昇格のために何に注力すればいいかが理解できます。
これらによって従業員の仕事に対するモチベーションは向上し、離職率の低下も期待できます。
さらに、目標に対する達成度合いを期中でフィードバックする運用を取り入れると、従業員のさらなるモチベーション向上も可能です。目標達成をアシストする仕組みにより、従業員は仕事をきちんと評価してもらえているという安心感をもって仕事ができます。
8、企業理念や経営目標を部門・従業員の評価に反映できる
企業理念や経営目標を部門・従業員の目標設定に利用できる仕組みを作ることで、そのまま従業員の「評価」にも企業理念や経営目標を反映可能です。目標の達成度がそのまま企業理念や経営目標の貢献度になるため、評価に対する従業員の納得度は上がります。
このように人事評価システム導入にはさまざまなメリットがあります。ただ、人事評価システムにはデメリットや注意点もあるため、以降で確認しましょう。
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人事評価システム導入のデメリット・注意点6つ
人事評価システム導入におけるデメリットや注意点は以下の6点です。
1、現在の人事評価シートをそのまま使えない場合もある
現在使用している人事評価シートは、評価項目の構成や数などの影響で、そのまま反映できない場合もあります。人事評価シートをそのまま反映したい場合は、人事評価システム導入時の製品検討の段階で確認しましょう。
2、日頃の面談内容をきめ細かに反映できない場合があり
人事評価システムの多くは、面談内容を登録できる機能があります。ただ、面談内容を細かく記録できない製品もあるため、面談内容をどの程度記録できるかも要確認です。
3、人事評価や人材活用の制度・方法検討のコスト
人事評価システムは、単に導入して終わりではありません。給与テーブルと評価結果の連携といった人事評価制度自体の見直しや、人材活用に関する制度・方法の検討・決定が必要です。これらの検討にはかなりの専門知識と時間を要します。
人事評価制度などの内容によっては、選択するべき人事評価システムも変わってくるため、制度の見直しが完了してから製品選びに進みましょう。
4、人事評価のスキルが必要
人事評価システムで精度の高い評価項目は作成できますが、実際に人事評価を行う評価者のスキルが低いと、結局人事評価の品質は安定しません。評価者のスキル向上には定期的な研修やフォローが必要なため、研修コストもかかります。
5、評価が低い人にとっては不満要素となる
人事評価システムにより公平な評価が可能となるとはいえ、評価が低い人にとっては、人事評価システム導入自体が不満要素となり得ます。人事評価システムに不満を抱く従業員へのフォローは別途検討しておくことも大切です。
6、システム導入に伴う作業・予算が必要
人事評価システムを導入する際は、全従業員の情報をデータベース化する作業が必要です。
すでに人事情報をシステム化している場合は、システム連携でデータを移行するだけで済みます。しかし人事情報をシステム化していない場合は、データベース化の手間がかかるため、予算化して計画的に進めなければなりません。
また、事前に人事評価や人材活用の制度・方法を整理する作業や、人事評価シートの設定などシステムの初期設定も必要です。これらの作業もある程度コストがかかるため、スケジューリングして対応するようにしましょう。
紹介したデメリットや注意点は、いずれも事前に対策しておくことで回避できる問題です。次に、人事評価システム導入前に確認・検討するべきことを整理してお伝えします。
人事評価システム導入前に確認・検討すること4つ
人事評価システムを導入する前に確認・検討するべきことは以下の4点です。
1、導入目的
人事評価システムをなぜ導入するのか、導入目的を明確にしましょう。導入目的の例としては、以下があります。
- 人事評価に対する従業員の不満が大きいので解決したい
- 人事評価作業の負荷が大きく、採用活動や人材育成などが満足にできていない
- 人事評価全体をスピードアップしたい
- 従業員の業務を経営目標に直結させて人的リソースを効率的に活用したい
- 全従業員のスキルや能力を把握・分析したい
重視する目的により適切な製品も変わってくるため、導入目的ははっきりと定め、複数の目的がある場合は優先順位もつけてください。
2、導入時期
多くの人材評価システムはクラウド型で提供されるため、システムの導入期間は短くて済みます。しかし、人事評価制度の見直しや従業員情報のデータベース化、従業員の研修など、事前に準備するべきことが多いため、これらを考慮して導入時期を検討しましょう。
3、導入方法
人事評価は、さまざまなプロセスで構成されています。目標設定・上司と面談して目標の決定・期中の面談・評価・評価の説明など、人事評価制度によって評価プロセスは決まります。評価プロセスの中で、いったいどの範囲をシステム化するのか, または全てをシステム化するのかを明確にしましょう。
4、運用ルール
導入の目的・時期・方法が決まったら、最後に運用ルールを策定します。人事評価を取りまとめる管理部門を決め、管理者・評価者・被評価者の役割単位のアクセス権を決めるなど、運用するために必要なことは全て決め、全従業員に共有します。
人事評価システムのメリットを活かすために事前の準備を
人事評価システムのメリットは多く、業務効率化から組織強化、生産性向上などさまざまな面で効果があります。ただ、人事評価システムは、導入前に行うべき準備作業が多いため、製品選定やシステム導入時期などを決める前に準備作業の洗い出しとスケジュール化から始めましょう。
実際に製品の比較検討を行う際は、複数の製品をよく比較したうえで選定してみてください。
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