労働基準法に生理休暇の制度が定められているように、働く女性にとって生理は切っても切り離せない問題と言えよう。「生理の辛さは何か」と聞かれた際、耐え難い生理痛を挙げる女性も少なくないだろうが、生理のタイミングも悩みの種となりうる。
多少の前後はあるものの、一般的に約1カ月に1回訪れるはずの生理が数日おきに起きたり、あるいは妊娠でもないのに数カ月も来なかったりしたら――。「自分の身に何が起きているのだろう」と不安に陥る女性も出てくるに違いない。そこで今回、産婦人科専門医の船曳美也子医師に「生理不順をはじめとする月経異常の種類」についてうかがった。
正常な生理周期は一般的に25~38日となっており、この日にち内であれば、6日間以内で日程が前後するのは問題ないと考えられている。つまり、30日周期の人なら、27日から32日の範囲で変動しても大丈夫というわけだ。このサイクルが前後する主因はストレスや睡眠不足などによるホルモンバランスの乱れであるが、まれに多のう胞性卵巣症候群といった疾患などが原因となっている場合がある。
また、この約1カ月のサイクルから全く離れたタイミングで生理が来るケースもある。船曳医師は、このような月経異常は月経の血量と頻度によって以下の種類に分類できると話す。
原発性無月経
18歳になっても初経が来ない状態を指す。その理由としては、「女性ホルモンの分泌をコントロールする脳の視床下部や脳下垂体、卵巣の働きの異常」「性染色体の異常」などが考えられる。続発性無月経
初経以後に月経があったものの、3カ月以上にわたり月経がない状態を続発性無月経と呼ぶ。このような無月経では排卵が行われずにホルモン機能が低下しているケースが多い。頻発月経
月経の周期が24日以下のため、1カ月に2回以上の月経が起こること。頻発月経は、卵巣からの排卵がない「無排卵性」と排卵がある「排卵性」に分類できる。前者は思春期や閉経前などで起きやすく、月経血量は少ないものの、10日以上も月経が続く点が特徴。後者は、卵胞期が短くて排卵が早く起こり頻発月経になるケースと、黄体期が短くなって起こるケースがある。黄体期の短さは黄体ホルモンの分泌量低下に関与しているため、黄体期が短い頻発月経は不妊症や流産の原因となりうる。稀発月経
月経の周期が39日以上のため、月経が2カ月に1回程度しか来ない。次の月経がいつになるか全く見通しがつかないほど不定期な場合、卵巣や脳下垂体の働きが低下している可能性があるため注意が必要となる。過多月経/過少月経
月経血が多すぎる場合を過多月経、少なすぎる場合を過少月経と呼ぶ。1周期で月経血が140gを超える場合は過多月経に該当し、1周期で夜用ナプキンを5枚以上使うかどうかが判断の目安となる。種類別の月経異常の治療法
こういった月経異常が確認された場合、まずは婦人科を受診したうえで症状にあわせた治療を行うのが一般的だ。原発性無月経の場合、子宮や卵巣、膣の異常がないかを確認したり、血液検査を行ったりする。女性ホルモンが長期にわたり分泌されないと、骨粗しょう症や心臓疾患のリスクが将来出てくるため、ホルモン補充療法を行う。
「続発性無月経、頻発月経、稀発月経の場合は、ホルモンバランスの異常がないかを確認します。妊娠を希望される場合は、排卵促進剤などで排卵を整えますし、妊娠を希望されない場合は、ピルやホルモン剤でホルモンバランスを整えます。もしも内科的なホルモン異常があれば、内科での治療が必要となります」
そして過多月経の場合は、貧血の治療や過多月経になる原因そのものの治療が必要となる。場合によっては、生理を一時的に止めたり、ピルで生理の量を減らしたりするケースも出てくるという。
これらの月経異常はそうめったに起きるものではないだけに、当事者は周りの女性にもつらさを理解してもらえずに苦しんでいる可能性がある。もしもそのような状況下にあったら、一刻も早く婦人科で受診するようにしよう。
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取材協力: 船曳美也子(フナビキ・ミヤコ)
1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、生殖医療専門医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚、43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(2013年、主婦の友社)、女性の身体について正しい知識を知ってもらえるよう執筆した「あなたも知らない女のカラダ―希望を叶える性の話」(2017年、講談社)がある。En女医会にも所属している。
En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。