ドローンのポテンシャル - メーカーやキャリア、ユーザー企業はこう見る

「ドローンを活用しよう」という話題が聞かれる昨今、波に乗り遅れまいと、さまざまな企業が活用を目指して実証実験を行っています。しかし、「波に乗る」ことが目的になっていないでしょうか?

法規制や現在のドローンのスペック、将来的な可能性、自社事業へのインパクトなど、本当にその事業にドローンが必要なのか、精査できているのでしょうか?

実際にドローンをサービス内で活用しているセコムとコマツ、LTEを活用したセルラードローンの実現を目指す携帯キャリア3社、実際にドローンを提供するDJIとACSL、業界団体のJUIDA、担当官庁の一つである国土交通省に、石川 温氏と中山 智氏が話を伺いました。

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セコムは2015年12月にドローンを使った防犯システム「セコムドローン」を発表、約1年半が経過した。民間用としては世界初と謳う自立型飛行監視ロボットを使用している。

従来のシステムでは、設置したセキュリティシステムが異常を検知すると、コントロールセンターへ通報があり監視員を派遣するため、異常検知から実際に現場で状況を確認するまでラグができてしまう。このラグを解消するために導入されたのがドローンだ。

このドローンシステムについて、セコム サービスロボット開発G統括担当 兼 開発統括担当 ゼネラルマネージャーの尾坐 幸一氏に話を伺った。

セコム サービスロボット開発G統括担当 兼 開発統括担当 ゼネラルマネージャー 尾坐 幸一氏

立体セキュリティを担うドローン

セコムドローンは従来の監視サービスにオプションとして追加する形となる。監視敷地内に設置されたレーザーセンサーが異常侵入を検知すると、専用のドローンポートからドローンが離陸。ドローンには監視用のカメラとレーザーが搭載されているので、そのデータがコントロールセンターに送られるというシステムだ。

従来であれば不審なクルマが侵入したとしても、監視員が到着する前に逃げられてしまえば、どんなクルマだったかやナンバープレーを確認することもできなかった。これが侵入を検知すると同時に、その不審なクルマをセコムドローンが捕捉してクルマやナンバープレート撮影できるというわけだ。そのほか異常を検知しなくても、定期的に巡回パトロールする機能の拡張も予定している。

尾坐氏はドローンによって「上空からの監視で、立体セキュリティが構築できる」とアピールする。従来のような監視カメラでは死角ができてしまい、死角を消すためには多数のカメラを設置するなどコストもかかってしまう。こうした問題点をドローンによって解決でき、総コストの削減にもつながっている。

ちなみにドローンの運用は完全にオート。監視する範囲はあらかじめプログラミングされており、監視が終了すると自動でポートに戻る。専用のポートは充電システムや故障などを検知する機能も備わっているので、一度設置すればユーザーがメンテナンスに気を遣う必要もない。

雨天などでも安定した飛行を実現できるように雨よけカバーを備える。防犯ドローンである以上、人に近づく必要があるため、万が一不審者でない人物に近づいて落ちても怪我しないように機体は軽量化を図り、安全に作られている

映像データは盗難防止のため、ドローン内に保存しない。それでも高画質の映像伝送を実現している

こうした点が評価され、多数の顧客から問い合わせがありすでに導入も進んでいるという。特に大規模な敷地・施設の管理を必要とする工場や物流倉庫のニーズが高いそうだ。これは、前述の監視カメラを多数設置しなければならない点が、ケーブルの配線やコストの観点からドローンに置き換えることでメリットがあると判断されているのだろう。

安全を守るために必要なドローンの機能定義とは?

セコムがドローンを使ったセキュリティシステムの研究開発を発表したのが2012年12月。実際にスタートしたのは「そのおよそ1年前」(尾坐氏)とのこと。警備会社と聞くとガードマンなどマンパワーを使った企業というイメージが強いが、実はセコムには「グループ全体で約2500人規模」(尾坐氏)の研究開発部署を有している。そのためセコムドローンは、ほかのメーカーとの協業ではなく、ドローンや専用ポートなどがすべて自社開発となっている。