データセンターは、昨今のクラウドコンピューティングの普及、発展に伴い、規模の拡大が進んでいる。さらに、ビジネスの分野でも「ChatGPT」のようなAIを活用するサービスが拡大しつつあり、高性能のGPUを多数設置する高密度なデータセンターへの投資が加速度的に進みつつある。こうした、外資系のクラウドサーバ事業者を中心に開発が進むハイパースケールデータセンターは、大規模な土地、大容量の電力・通信需要に対応したインフラを求めて首都圏の郊外を中心に立地が進んでいる。大規模なデータセンターは、これまでも莫大なエネルギー消費の場として注目されてきたが、生成AIの登場によってその危機感はまったくレベルが変わったといえる。本連載では、より高い水準での消費電力効率化が求められるようになったデータセンターの今後について、世界の事例などを交えながら紹介する。

ベンチマークで確認されるデータセンターのサステナビリティ指標

2016年から、各産業分野において事業者の省エネ状況を業種共通の指標を用いて評価してきた資源エネルギー庁が2022年4月に発表した改正省エネ法は、今後のエネルギー使用量の大幅な増加を見込み、データセンターもベンチマーク制度の対象業種として追加し、2023年4月1日より施行した。同制度のベンチマーク指標としては、データセンター施設全体の消費電力をサーバや通信機器などIT機器で利用する消費電力で割ることで算出される「PUE(Power Usage Effectiveness)」の値が用いられている。

  • 「データセンター業のベンチーク制度 制度の概要」

    「データセンター業のベンチーク制度 制度の概要」(出典:資源エネルギー庁)

資源エネルギー庁としては、現時点では2030年までに、国内事業者の上位15%程度がPUEを1.4以下にすることを目指している。データセンター事業者には、毎年度のエネルギーの使用状況などについて、翌年度の7月末日までに「定期報告書」を資源エネルギー庁に提出することが課せられ、提出された報告書によって、「S(優良な事業者)」「A(一般的な事業者)」「B(停滞している事業者)」にクラス分けされる。

Sクラスは、PUEがベンチマークに設定されている1.4(今後状況に応じて変動する可能性もある)の目標を達成するか、5年間平均で年1%以上PUEを低減することに成功している事業者が認定される。Sクラスになると、中長期計画書の提出頻度が軽減される。

まずはいかにPUEを下げるかに着手

PUEは2007年に発足された、ITとデータセンターの資源効率化に取り組む米国のグリーン・グリッドが推奨したものだ。経済産業省が2022年3月に公開したアンケート調査の結果によれば、国内のデータセンターの平均的なPUEは1.7前後であり、この数値を基準に1.4という指標が決められたようだ。ちなみに、グーグルは2008年10月に、6カ所のデータセンターの年平均PUEが1.21であると発表し、2023年第1四半期にはPUEが1.10になっていることを公開している。

PUEの理論上の最良値は「1.0」だが、これは照明や空調などの付帯設備の消費電力がゼロになることを意味し、現実的にはありえない。PUEを限りなく1.0に近づけていくために、IT機器以外の付帯設備の消費電力を減らすことが重要になる。

現在、データセンターに設置されるサーバは高密度化が進み、AIシステムによるGPUサーバの高密度化が加速することで、電力消費量は爆発的に増大すると言われている。だが、液体冷却のような新しい冷却技術や、CPU/GPUの技術的な進歩によって、今後サーバのエネルギー消費の効率化はより促進されるだろう。そのため事業者としては、まずPUEの値を下げるために、空調や照明、UPS(無停電装置)などの設備を省エネ性能の高いものに変えていく必要がある。その効果はPUEの改善だけでなく、事業所の電力消費抑制にもつながっていくので、昨今の電力料金の値上げに伴う負担を減らすことにも貢献する。

より 広くデータセンターを見渡す総合的な視点が鍵に

とはいえ、そういったファシリティ面だけの改善では、IT機器の進化のスピードに追いつかない。そこで考えなければならないのが、データセンターを管理運用するためのソリューションの導入や、太陽光や風力発電の活用など再エネによる電力効率向上の取り組みだ。例えば、近年のデータセンターにおける管理項目は、電源や温湿度、アセット、ラック搭載、フロアレイアウト、ケーブリング、IP情報、ラック荷重など多岐に渡っている。しかしながら、日本の現場では依然として、それらの情報をExcelなどのスプレッドシートを使って管理しているケースも多く、無駄な電力消費を回避するための迅速な対応に欠けている。

欧米ではこのような複雑な管理に、データセンターインフラストラクチャ管理(DCIM)ソフトウェアが積極的に導入されている。こうしたツールが、それらの情報をまとめて管理し、横断的に俯瞰しながらデータセンター全体の設備とITを統合的に見える化してくれる。それによって、ファシリティ面だけでなく、システム運用の観点から温度管理などにおいて非効率な箇所を見つけ出し、省エネを実現するヒントが得られる。

また、サステナブルなエネルギーの調達として、海外では単に一般的な送配電事業者との購買契約だけでなく、マイクログリッドや売電まで含めた選択肢が広がってきている。例えば、スウェーデンなど北欧では年間を通して周辺の自然環境を上手く活用して、高い電力効率を実現するデータセンターを作っている。

次回からは、海外において先行するサステナブルなデータセンターの具体事例を取り上げ、PUEの改善に留まらないデータセンターの省エネ化や効率的な運用の紹介から、継続的な運用につながるヒントなどをお伝えしたい。

  • 周辺の自然環境を有効活用するスウェーデンのデータセンター

    周辺の自然環境を有効活用するスウェーデンのデータセンター (出典:EcoDataCenterのWebページより引用)