コンタクトレンズの製造と販売を手掛けるシードは、東京都文京区の本社ビルを建て替え6月より業務を開始した。2022年に創立65周年を迎え、次なる100周年とその先の事業を見据えた礎となるべき拠点として設計したそうだ。

今回、竣工したばかりのシード本社ビルを見学してきたので紹介したい。驚くべきことに、オフィス内で最もこだわりを感じたのは「トイレ」だった。さらに、スカイツリーや東京ドームなどランドマークを見渡せる見晴らし良好な屋上テラスも必見だ。

  • シード社屋エントランス

    シード社屋エントランス

以前のオフィスでは雨漏りも

丸ノ内線 本郷三丁目駅の改札を出るとすぐに、シードの本社ビルが見えてくる。旧本社ビルも同じ場所に建っていたそうだ。建設から40年ほどが経過し、場所によっては老朽化が進み、雨漏りなどが課題になっていた。激しい雨が降ると社員がバケツと雑巾を持ってオフィス内を奔走する様子まで見られたという。

老朽化が進んだオフィスの影響は、現場の社員だけにとどまらない。採用面接の際などに旧本社ビルを訪れた候補者が、老朽化したビルの様子を見て選考を辞退するといった例もあったという。そうした状況の中、およそ10年ほど前から少しずつオフィス建て替えの話が出始めた。

本格的に建て替えプロジェクトが始まったのは2021年から2022年ごろ。新型コロナウイルスの影響を受けてはいたものの、代表取締役社長である浦壁昌広氏の強い希望により、フリーアドレスでありながらも全員が出社して座れる席数を確保したという。コロナ禍を経験したことで、むしろ人と人が対面で会話するという行動を重視したそうだ。

フリーアドレスの導入に際しては、不安の声が社内から多く集まったという。ところが、フリーアドレスでの稼働を開始したところ、これまで運用に関する不満の声は寄せられていない。「想定していたマイナスの影響はなく、むしろプラスに社内に受け入れられている」と、オフィス建て替えプロジェクトの担当者はコメントしていた。

会社側で決めたルールは「出社時に自分の席を決め、帰宅時にはきれいにすること」という至ってシンプルなもの。その他は各現場が最も使いやすいように個別に運用を決めている。

屋上からの眺めを堪能

では、ここから8階建ての新オフィスの中を紹介しよう。まずは屋上階の開放的な屋外テラス。ウッドデッキの落ち着いた雰囲気と共に開放感のあるテラスは非常にリラックスできる。視力検査に使われるC字型の「ランドルト環」モチーフが使われている。

  • 屋外テラス
  • 屋外テラス
  • 屋外テラス

    屋外テラス

こだわりのトイレを紹介

ここからは、シード自慢のトイレについて紹介したい。特に同社は20~30歳代の女性社員が多いことからも、きれいで清潔感のあるトイレ作りにこだわったとのことだ。8階には「だれでもトイレ」として、プライバシーに配慮しながらもジェンダーにかかわらずに使えるトイレを備える。通路を含め、ゆったりと使えるスペースが確保されている。

また、子供連れで参加できる交流会など育休中の社員が来社する際にも利用できるよう、ベビーケアルームも設置。授乳のためのソファだけでなく、おむつ交換台があるので安心だ。これらの設備は将来的には社員家族や地域住民向けのイベント開催時にも開放する方針だという。

  • だれでもトイレ
  • だれでもトイレ
  • だれでもトイレ

    だれでもトイレ

  • ベビーケアルーム

    ベビーケアルーム

他の階のトイレも、「山」「森」「川」など自然をテーマとしたさまざまなデザインがあしらわれている。いくつかご覧いただきたい。

  • トイレ
  • トイレ
  • トイレ
  • ここにも「ランドルト環」が

    そして、ここにも「ランドルト環」が

もう一つのこだわりポイントは、1階から8階まで続く階段。ヨーロッパの建築物にありそうな幾何学模様の階段だ。フロア間の往来を促すために、あえてオフィスの中心に近い位置に設計した。

  • こだわりの階段

    こだわりの階段

5階には部署を問わずに利用可能なオープンスペースを配置。交流や新たなイノベーションの創出を狙ったとのことだ。

  • オープンスペース
  • オープンスペース

    オープンスペース

コンタクトレンズ事業を手掛けるシードは、オフィスの機能はもちろんのこと、トイレにまで思わず出社したくなるようなデザインが施されていた。また、今後同社はオフィスの一部を地域住民にも開放する予定があるのだという。社内外のコミュニケーションを重視し信頼関係の構築を目指す同社の思いが感じられた。