「無線LANならともかく、有線LANなら機器もケーブルも物理的に存在するのだから、ことさら「見える」とうたう必要はないのではないか」と言われそうだが、そんなことはない。ネットワークの運用管理を経験したことがある方なら容易に理解していただけると思うが、実は目で見て確認すること自体が容易ではないし、目で見て確認できることには限りがある。

「見える化」のメリット

 

ネットワークのトラブルシュートに際しては、ネットワークの構成を把握していることが前提になる。ここでいうネットワークの構成とは、使用している機器の種類・配置・結線といった目視可能な情報だけでなく、MACアドレスのような情報も含まれる。

しかし、その「ネットワークの構成把握」が簡単な仕事ではない。そもそも、ネットワーク機器というのは机の下や棚の裏側といった「見えない場所」に押し込まれることが多く、それを目視で確認するのは簡単ではない。

それを解決するには、ネットワーク構成図を作る必要がある。しかも現実問題として、ネットワーク構成図を作る手間もさることながら、それを保守し続けることが相応に手間がかかる。そのため往々にして、構成図を作っていなかったり、作ってもアップデートを怠っていたりして、いつの間にか実情に合わなくなっているものだ。そうした経験は、多くの方がお持ちではないだろうか。

専任管理者がいる場合はまだしも、兼任管理者しかいない場合には、ついつい日常の業務に追われてしまい、構成図の作成や保守まで手が回らないことが多い。そしてある日、ネットワーク構成図が必要になったときに慌てたり、とうの昔に内容が陳腐化してしまった構成図と実情のギャップに愕然とさせられたりするのである。

また、ハードウェアの機種を調べるだけならともかく、MACアドレスまで調べるとなると、目視確認して回るのでは手間がかかりすぎる。しかし、ネットワークモニタがキャプチャしたデータを調べるとか、MACアドレスの情報を使ってクライアントごとに固有のIPアドレスを割り当てるという話になると、MACアドレスの把握まで必要になるのは自明の理だ。

ネットワークモニタの画面で把握できるのは、MACアドレスの情報である。これを実際に存在するコンピュータやネットワーク機器と紐付けるには、機器構成に関する情報が必要だ

そうなると理想的なのは、いつでも最新のネットワーク構成を、しかもリアルタイムで把握できる仕組みがあることだろう。ネットワーク統計情報の把握までできれば、なおよい。

ヤマハが推進する「見える化」

それを可能にしてくれるのが、ヤマハのネットワーク製品群である。その皮切りとなったのが「スマートL2スイッチ SWX2200」シリーズだ。これと、対応するルータ製品を組み合わせることで、ルータの管理画面から機器の構成・設定だけでなく、ネットワークの構成把握までを一括して実現できる。

ヤマハの「見える化」は、ここから始まった。SWX2200シリーズと対応ルータの組み合わせによる、ネットワーク構成表示画面の例

そこでポイントとなるのは、ひとつの管理者向け画面だけですべての用が足りることであろう。いくら「見える化」する機能を備えていても、複数の管理者向け設定画面を行ったり来たりしなければならないのでは効率が下がってしまう。その点、ヤマハ製品ならルータの管理画面にアクセスするだけでネットワーク構成まで把握できるので、ワンストップで用が足りる。

さらに、無線LANアクセスポイントWLX302を加えると、電波状況からクライアントに関する情報まで、無線LANについても「見える化」を実現できる。

ヤマハの「見える化」は無線LANにも広がった。WLX302の管理画面では、電波の状況を容易に把握できるので、電波干渉の有無を知るのに具合がよい

また、WLX302の管理画面では端末ごとの状況把握も容易である

そして、そのラインナップをさらに強化するべく、ヤマハは2014年11月にRTX1200の後継機として、新製品・RTX1210をリリースすることになった。この製品は従来と比べて、さらに「見える化機能」を強化している点が特徴となる

こうした製品群と、それらが提供するメリットは、専任管理者を配置する余裕がない中小企業において、特に心強い味方となる

「見える化」は資産管理にも効いてくる

ネットワークの構成をリアルタイムで把握できるだけでも便利だが、この「見える化」はさらに進化している。ルータの最新モデル「RTX1210」では、ネットワーク構成図の表示機能が「LANマップ」に進化した。

「LANマップ」が従来と異なるのは、ネットワーク構成だけでなく、その先につながっているコンピュータなどの端末機器についても、可能な限りの情報を収集・表示している点だ。

RTX1210で新たに導入した「LANマップ」の画面例。ネットワーク構成だけでなく、その先につながっている機器の情報についても、可能な限り把握を試みるようになったのが目新しい

「どのスイッチのどのポートに、どういうコンピュータ名を持つコンピュータがつながっていて、MACアドレスは何か」ということだけでも把握できれば、ずいぶんと助かるはずだ。つまり、ネットワークの「見える化」は、ネットワーク構成を見えるようにするだけでなく、ネットワークを構成する資産の構成をも見える方向に向けて進んでいるということだ。

さらに、その情報を外部に書き出すことができれば、資産管理台帳作成のベース資料にもなる。同じことを、1台ずつ調べて手作業で入力していたのでは大変で、その後の情報更新を遅滞なく行うのも骨が折れる。それを、ネットワークの「見える化」によって画面上からパッと処理できれば、管理者は負担が減って幸せになれる。

実際に作業を経験したことがある方なら深く納得していただけると思うが(筆者自身も経験がある)、PCをはじめとするコンピュータ機器・ネットワーク機器の資産管理、あるいは資産の棚卸しは、実に骨の折れる作業である。少なくとも、機器の一覧と所在を迅速に取得できるだけでも、その作業の負荷はかなり軽減できるはずだ。

また、ヤマハではルータ製品やセキュリティ製品の管理者向け画面に「ダッシュボード」を導入し始めている。機器の動作状況を集約表示して、「とりあえず、ここを見れば全体状況の認識が可能」というものだ。細かい情報については個別のページをあたる必要があるが、多忙な管理者がワングランスで状況を把握するには、ダッシュボードのような機能は助かるだろう。