Candex Japanは7月8日、日本市場への本格参入を開始するにあたり、事業戦略説明会を都内で開催した。説明会には米国本社からCandexグループ CEOのジェレミー・ラッピン氏が来日した。

  • Candexグループ CEOのジェレミー・ラッピン氏

    Candexグループ CEOのジェレミー・ラッピン氏

テールスペンド問題とCandexのソリューション

まず、ラッピン氏は同社について説明を始めた。Candexは同氏とShani Vaza氏が創業。設立から12年が経過し、現在では40カ国超で運用され、従業員数は220人。日本法人は2023年に設立された。

同氏は「設立当初はグローバル企業が人材採用を行うにあたり、リクルーターへの支払いを簡単にしようということが最初のアイデアだった。過去5~6年で8500万ドルの資金調達に成功し、日本は大きなチャンスがあると考えている」と述べた。

実際、同社は2023年にGoldman Sachs Asset Managementをリード投資家とし、JP MorganやWiL(World Innovation Lab)、Atlos Venturesなどが参画するグループからシリーズBで4500万ドルを調達している。

  • Candexの概要

    Candexの概要

同社は、現状において日本では顕在化していない「テールスぺンド問題」を解決するという。テールスぺンド問題とは、企業の支出のうち、取引先全体の80%のベンダーに全体支出のわずか5%と支出額が少ないにもかかわらず、管理が煩雑になっていることを指す。平たく言えば支払額が少ないベンダーが多数存在し、管理コストが高くなることだ。

年間取引金額が1億4000万円未満のベンダーの登録やチェックなどの管理にコストがかかり、こうしたベンダーは管理が難しいとともに単発の取引となることが多く、対応部門側にも大きな負担となることから、社内の関係者にとってストレスの原因になっているという。

  • 「テールスぺンド問題」の概要

    「テールスぺンド問題」の概要

こうした問題を解決するため、同社のソリューションが求められているというわけだ。ユーザーは、グローバルに展開する多国籍企業が多く、日本企業では日立製作所やソニーなどが導入している。

同氏は「当社のバリューは、過去何カ月も支払いに時間を要していたものを数分ですべて完了できる点にある。時間を要するベンダーのオンボーディングが不要になり、例えば欧州企業の日本企業への支払いに関して、従来であれば何度もやり取りを重ねなくてはならなかったが、ベンダーに関する基本情報を一元管理するデータベースや管理台帳などを80%削減できる。すでに135のユーザーを抱えている」と強調した。

  • Candexが提供する価値

    Candexが提供する価値

Candexが日本市場に本格参入する理由

では、なぜ日本への参入を本格化するのか。その点については顧客からの要望と国内の多国籍企業の存在があるとのことだ。

ラッピン氏は「日本にも対応してほしいというグローバルの顧客や日立、ソニーなどのグローバル企業からの要望がある。また、日本は米国に次いで多国籍企業が多い国であり、当社は多国籍企業を国内外で支援することが可能だ。また、日本は文化的に効率性や革新性、コンプライアンス、シンプルさを重視する国であり、当社はこうした価値観に適したソリューションを提供している」と説明。

同社のソリューションは、端的に言えば企業とベンダー間の請求や支払いを処理するというものだ。既存の購買システムから利用を可能としており、SAP AribaやCoupa、Oracle、Workday、Ivalua、Jaggaerなどで利用できる。

  • Candexの仕組み

    Candexの仕組み

  • 既存の購買システムから利用が可能だ

    既存の購買システムから利用が可能だ

実際の製品デモはCandex Japan 代表の北本大介氏が行った。フローの例として、ある企業の従業員がAribaで他ベンダーと同様にCandexに対して購買を行い、ベンダーのメールアドレスを入力すれば発注書の作成と請求書を発行する。

  • Candex Japan 代表の北本大介氏

    Candex Japan 代表の北本大介氏

承認されたらベンダー向けに登録依頼メールを送信し、ベンダーが注文を承認するまでは定期的にリマインダーを送付し、メールが届かなかった場合はアドレスを修正するためのリンクが送付される。

ベンダーは会社または個人で登録するかを選択し、Candexはメールドメインごとにユーザーをプライベートネットワークに統合(gmail.comなどパブリックドメインのメールアドレスは作成不可だが、追加の確認手続きでプライベートネットワーク内の個人への支払いは可能)し、例外については厳格に確認を行い、注文の承認を行う。

  • 登録依頼メールを受け取ったベンダーの登録画面

    登録依頼メールを受け取ったベンダーの登録画面

規約に同意後、ベンダーは既存のリストから支払先を選択するか新しい支払先を追加することができる。支払先を登録する際は注文内容とベンダーの所在地にもとづき、入力項目と必要条件が設定され、売り手は事業情報、財務情報、口座情報を入力し、Candexは各種の確認作業や制裁リストの確認、マネーロンダリング対策審査を実施。

その後、ベンダーが金額を入力し、請求書をアップロード・提出して納品が完了したことを確認。Candexは部分請求書や1つの発注書に対する分割請求にも対応し、一次対応サポートも提供している。

  • ベンダーからの請求書

    ベンダーからの請求書

現在、日本国内では20社超が導入しており、日本企業は4~5社、そのほかがグローバル企業の日本法人となっている。

北本氏は「よく勘違いされるが、支払い代行とは異なりプロセスそのものをコンプライアンスを担保しつつ、簡単かつ素早く取引ができることが強み。現状では日本で多くのグローバル企業が存在しているため、そうした企業をターゲットに可能な限り導入を進めていきたい」と述べていた。