プログラミングのすばらしいところのひとつには、変数や条件やループなどの基本的な文法を使って自分の身の回りのことを解決できることにある。日鉄ソリューションズ(NSSOL)は、埼玉県三芳町と共同で地元に密着した環境テーマでプログラミング学習に挑める教材を開発している。
データからルールをつくり、設計書を書いてプログラミング

「パン屋さんのこまったを解決しよう」ルビをふったやさしい日本語で解説されているが、パン屋さんの課題をヒアリングやデータから抽出し、設計書を書いて、プログラミングで解決する工程すべてを実践できる(同社資料より)
NSSOLが開発・運営するプログラミング学習サイト「K3Tunnel\ケイサントンネル」はブラウザ上でブロックを並べてプログラミングを実行できるビジュアル・プログラミング・アプリケーションで、実社会での課題解決をテーマに据えた教育コンテンツとして公開している。小学校中学年向けの教材「パン屋さんのこまったを解決しよう」では、日によって売り切れや売り残りの課題を持つパン屋さんからヒアリングし、データからルールをつくり、設計書を書いてからブロックでプログラミングを通して解決する。ルビをふったやさしい日本語で説明しているが、問題点や課題を浮き彫りにしてから、プログラミングで挑むという流れを備えることでシステムエンジニアの体験ができる点に特徴がある。
今年の11月末からは、同様に架空の町(全国汎用版)を舞台にCO2排出量シミュレーターをプログラミングし、カーボンニュートラルをシミュレーションすることで自身のアクションに取り組める環境教育教材「めざせ!カーボンニュートラル!」(小学校6年生〜)を公開しているが、埼玉県三芳町と共同で開発した自治体版として新たに加わった。
プログラミングを通してより身近なカーボンニュートラルに取り組める自治体版
三芳町のカーボンニュートラルを実現するためのアクションを自治体のCO2排出量データ、特色を反映したマップなどのカスタマイズにより行えるもので、今年の10月には三芳町立藤久保小学校の6年生計105名に向けた実証授業を実施。カーボンニュートラルの時代に中心となっていく世代が、実現するためにどんなアクションが必要かについて自身がプログラムするCO2排出量シミュレーターを通じて、より地域に身近な視点で向かい合っている。
同校では、環境課題やカーボンニュートラルの情報収集など探究的な学習で得た知識の発展のための教材として活用されているが、NSSOLと連携を図り環境学習を進めてきた三芳町教育委員会 教育長の古川慶子氏は、"実際に自分たちの町の特色を認識しながらカーボンニュートラルをシュミレーションする仮想空間での体験と結び付け、見通しをもって思考する学習活動を展開できました。引き続きこの取り組みを基盤に、児童はCO2排出量削減の取り組みを実社会や実生活の中で実践したり、町全体へ施策を提言したりする活動を行い、実践化へと繋げていきます。"と述べる。環境省では2050年カーボンニュートラル/2030年度削減目標の実現に向けた国民運動として「デコ活」を推進しているが、地球規模の大きな課題にも、個々がプログラミングを通じた身近なところから解決を目指す取り組みでもある。