日本HPは3月26日、法人向けHP EliteBookシリーズ、個人向けEnvyシリーズ、プロフェッショナル向けモバイルワークステーションHP ZBookシリーズにおいて、AIテクノロジーを内蔵したPCを発表した。

今回発表された新製品は以下の通り。

法人向けノートPC「HP EliteBookシリーズ」の新製品

  • 左から、HP EliteBook 1040 G11、HP EliteBook 635 Aero G11

  • 左から、HP EliteBook 830 G11、HP Elite x360 830 G11

個人向けノートPC「HP Envyシリーズ」の新製品

モバイルワークステーション「HP ZBookシリーズ」の新製品

  • AIテクノロジーを内蔵したノートPC、ワークステーションのラインアップ

AIとライフワークバランスのニーズに応えるノートPC

執行役員 パーソナルシステムズ事業本部 本部長 松浦徹氏は、昨今のトレンドとして、AIとライフワークバランスを挙げ、今回、この2点に応えるノートPCを発表したと語った。

「AIは生産性を根本的に変える可能性があり、企業はすぐにAIを導入する必要があると考えている」(松浦氏)

  • 日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部 本部長 松浦徹氏

さらに、松浦氏はAIテクノロジーを内蔵したPCによって、「生産性、創造力、ユーザーエクスペリエンスを向上する」と訴えた。

生産性を引き上げる3つのAIテクノロジー

新製品に搭載されている主要なAIテクノロジーは3つある。これは、法人向け、個人向けに共通している。

1つは、AIの推論演算に特化したNPUを内蔵したプロセッサだ。具体的には、インテル Core Ultra 5および7プロセッサーまたは次世代AMD Ryzen プロセッサーを搭載している。

AI処理をNPUに割り当てることで、PCのパフォーマンスとバッテリー効率の向上を実現する。

  • AIのワークロードに対応するCPU、NPU、GPUで生産性を向上

2つ目のAIテクノロジーは「HP Smart Sense」だ。これは、AIを活用してデバイスのノイズ、温度、パフォーマンスなどの要素をワークフローに合わせて自動的に最適化するツール。

3つ目は、マイクロソフトのWindowsによるAIアシスタント「Copilot in Windows」だ。新製品は「Copilot in Windows」専用のキーを搭載しており、このキーを1回押すだけでAI対応のインテリジェントアシスタントにアクセスできる。

パーソナルシステムズ事業本部 CMIT製品部 部長 岡宣明氏は、法人向けPCの新製品の目玉として、約1キログラムと軽量ながらNPUを搭載している「HP EliteBook 635 Aero G11」を紹介した。

同製品は日本のスペックに合わせて開発してもらったもので、日本で先行して発売されるという。

  • 日本HP パーソナルシステムズ事業本部 CMIT製品部 部長 岡宣明氏

さらに、岡氏は「当社はコラボレーションに力を入れている」と述べ、コラボレーション関連の機能拡張を紹介した。例えば、同社の傘下のPolyのヘッドセットについては、ペアリングが面倒という意見もあることから、ワンクリックでできるようにしたという。画像補正においては、昨年に光の調整を可能にしたが、今回、色の調整もできるようになった。

ESCの刷新で量子コンピュータの脅威を防御

同日、ビジネスPCのセキュリティの基盤となるHP Endpoint Security Controller(ESC)チップの刷新も発表された。これにより、量子コンピューティングによるハッキングからファームウェアを保護する。

ESCとは、物理的に隔離され、常に動作を続けるセキュリティ専用のマイクロプロセッサだ。ESCはCPUの軌道を許可する前に、BIOSやその他のファームウェアがマルウェアに感染していないことを検証し、侵害が検知されたら、保護されたフラッシュに保持しているBIOSのクリーンコピーで復旧する。

今回、ESCに、量子コンピュータを悪用した攻撃からファームウェアを保護する耐量子暗号が搭載された。

エンタープライズ営業統括 営業戦略部 プログラムマネージャー 大津山隆氏は、「まだ量子コンピュータは実現していないが、専門家は今後10年以内にデジタル署名が破られるリスクがあると予測している。これにより、PCが危険にさらされることになるので、量子コンピュータの脅威に備える必要がある」と指摘した。

  • エンタープライズ営業統括 営業戦略部 プログラムマネージャー 大津山隆氏

大津山氏は、「各国で、政府が量子暗号の導入に向けてセキュリティスタックを入れ替えるタイムラインを決め始めている」として、量子暗号対応に向けて、移行計画を立てておく必要性を強調した。

ハードウェアを入れ替えるとなると時間、手間、コストがかかる。こうした負担を回避するため、ESCでは将来の脅威に備えて耐量子暗号を搭載しているというわけだ。