本田技研工業(Honda)は12月20日、二輪車のクラッチにおける手動操作とモーターによる電子制御を両立したコントロールシステムとして11月に開発を発表している「Honda E-Clutch」に関する技術説明会を開催。同システムの開発責任者などが登壇し、開発の狙いや技術の特徴について語った。

  • Honda E-Clutchに関する技術説明会が行われた

    Honda E-Clutchに関する技術説明会が行われた。登壇者のHonda 二輪・パワープロダクツ事業本部の坂本順一氏、小野惇也氏、竜﨑達也氏、伊東飛鳥氏(左から順)

クラッチ機構の技術開発を長年続けるHondaの道のり

「利便性に優れ、より簡便な操作で扱える、より安全で楽しい二輪車」の実現を目指して二輪車開発を長年続けるHonda。その製品群は、日常の移動手段としての利便性や快適性を重視した「COMMUTER」モデルと、スポーツ向けをはじめとした趣味性が重視される「FUN」の2ジャンルに大別される。

日常での使い勝手を考慮した扱いやすさが求められるCOMMUTERモデルの開発では、1958年発売の「スーパーカブC100」に搭載された、発進・変速・停止などをクラッチレバー操作なしで行える「自動遠心クラッチ」を皮切りに、無段変速機構をもつVマチック、それを電子制御化した独自技術の「Honda Sマチック」など、技術を進化させることで初心者でも扱いやすい二輪車の実現へと貢献してきたとする。

一方でFUNの領域では、走行性能における圧倒的な個性に対するニーズなどに応えるため、走りを進化させる変速機構・クラッチ機構の開発が求められてきたとのこと。手動クラッチ操作を必要としないトルクコンバータ式オートマチック機構を採用した「EARA」の発売(1977年)以来、より効率性を高めた「HFT」(Human-Friendly Transmission)を経て、2009年に二輪車初となるオートマチック機構「DCT」(Dual Clutch Transmission)を開発した。このDCTは、簡単な操作によるスポーツライディングの質向上と、日常生活における扱いやすさ・利便性という相反する2条件を両立しており、2010年に「VFR1200F」に初搭載されて以降、現在でも幅広い車種で採用され続けている。

そして今回発表されたHonda E-Clutchは、これまでFUNモデルで追求してきた“二輪車を操る楽しさ”という側面をさらに向上させながら、日常での扱いやすさなどのメリットも併せて付与することで、オートマチックトランスミッション(AT)とは異なる操縦の楽しさを実現することを目指して開発されたとのこと。そのコンセプトについて、Honda 二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪事業統括部 事業企画部 大型モーターサイクルカテゴリーの坂本順一ゼネラルマネージャーは、「マニュアルトランスミッション(MT)の進化」と表現する。

  • Hondaの坂本順一氏

    Hondaの坂本順一氏

MTを進化させる新たな発想のクラッチ制御システム

Hondaが開発したHonda E-Clutchは、二輪車用有段式MTのクラッチコントロールを自動で電子制御するシステムで、ライダーの手動によるクラッチレバー操作を必要とせず、最適なクラッチコントロールを実現するもの。また大きな特徴として、電子制御によるクラッチコントロール中であっても、ライダーがクラッチレバー操作を行うことで、通常のMT車と同様に手動でのクラッチコントロールを行える点があるとする。

  • Honda E-Clutch

    Honda E-Clutch

Honda E-Clutchの開発責任者を務める小野惇也氏は、新システムで提供したい価値として、人の可能性を“拡張”させることを挙げる。二輪車での走行は、人馬一体となって走ること自体を楽しむFUNライディングであることが求められる。さらに二輪車ならではの“操る喜び”も不可欠であり、特にMTのFUNモーターサイクルでは、クラッチやスロットルなどの操作の手間までもが醍醐味であり面白さであり、楽しさにつながることになる。

  • Honda E-Clutchの開発責任者を務める小野惇也氏

    Honda E-Clutchの開発責任者を務める小野惇也氏

しかし一方で、単調な操作やエンストにつながる発進・停止時のクラッチ操作など、ライダーにとって「やりたくない操作」というのも存在する。これらの操作を省くことができれば、二輪車の利便性が向上するとともに、ライダーに余裕が生まれてより走りに集中できる。

そのためHonda E-Clutchは、車両の状態に応じた適切なクラッチ自動制御を実現しながらも、MTクラッチやミッションギアの機構は残し、手動による制御も車両に反映できるシステムとして開発された。これにより、車体操作に集中でき、運転の疲れが低減され、ライダーの不安を払拭することで、「幅広いライダーにワンランク上の走りを提供する」としている。

  • Honda E-Clutchの開発コンセプト

    Honda E-Clutchの開発コンセプト(提供:Honda)

2023年12月22日訂正:記事初出時、登壇者のうちの1名の方のお名前を「竜崎達也氏」と記載しておりましたが、正しくは「竜﨑達也氏」となりますため、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。