生成AI「ChatGPT」を活用したさまざまな取り組みに各企業が注力している。そのうちの一社が電通だ。同社は2023年5月、ChatGPTを組み込んだ「キャラクターとの自動対話サービス」のプロトタイプを開発。フリー素材を提供する「いらすとや」のキャラクターを採用した実証実験を開始したことを発表している。本稿では、このプロトタイプのデモンストレーションも披露されたメディア向け説明会(6月29日開催)の模様をお届けする。

江戸時代の武士との会話はどんな感じ?

説明会では早速、今回のプロトタイプを使用したデモンストレーションが行われた。画面上には江戸時代の武士という設定のキャラクター「武蔵」がスタンバイしている。マイクを使用し、「こんにちは」と呼びかけると、武蔵も江戸言葉で挨拶を返してくれる。筆者が「暑いですね」と言うと、江戸時代の涼の取り方を教えてくれた。一方、「東京の明日の天気は」と聞くと、「分かりかねる」と回答。江戸時代の武士の範囲で知り得ることしか回答しないようにチューニングされているのだ。電通 CXクリエーティブ・センター CXクリエーティブ・ディレクション3部 アート・ディレクター 糸乘健太郎氏と同 CXクリエーティブ・センター CXプロデュース部 CXプランナー/プロデューサー 荒木亮氏によると、今回のプロトタイプは、検索型のように適切な回答を提示することよりも、キャラクターとのコミュニケーションを楽しむ要素を重視しているという。武蔵にはうれしい、悲しい、怒りといった感情の情報も取り込まれており、「最近あった悲しいことは」と尋ねれば、「飼い犬が行方不明になっている」と泣き顔で答えてくれた。

  • 江戸言葉で返答する武蔵

  • 悲しい出来事を話す際は表情も泣き顔に

キャラクターとの対話でCXの新たな一歩に

ではこのサービスはどのような背景で生まれたのだろうか。両氏が所属するCXクリエーティブ・センターは元々、“かつてない体験をつくろう”というコンセプトを持つクリエイティブ部門だ。その活動の1つが、AI、VRなどさまざまな技術を用いたキャラクターCXソリューションである。荒木氏曰く、日本はマンガやアニメが広く愛されており、二次元のキャラクターになじみがあるという土台がある。加えて、スマートフォンなどの普及により、コミュニケーションスタイルが変化。「顧客のファン化やロイヤリティ化が得意なのはキャラクター」(糸乘氏)という背景もあり、今回、キャラクターとの対話を重視したサービスの開発に至ったそうだ。

武蔵は、家族構成や年齢、飼い犬、趣味といった基本設定をしつつ、しゃべり方や性格などを細かく学習させるプロンプトエンジニアリングの手法を採用して、つくられている。一方で、全てを決めすぎてしまうと回答が画一的になってしまうことから、ある程度AIの特性を活かし、会話が弾むことを意識したという。

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