自社内でのDXを強化し、その事例の社外への売り出しを強化

OKIは6月21日、記者会見を開催し、同社のDX新戦略を発表した。

同社が策定した新たなDX戦略は、同社が中期経営計画2022において掲げたキーメッセージ「社会の大丈夫をつくっていく」の実現するためのものとなる。新DX戦略では、「新ソリューション創出」「組織の変革」「業務プロセスの変革」「既存ソリューションの強化」の4象限に注力していく計画だ。

  • OKIが発表した新DX戦略の4象限

    OKIが発表した新DX戦略の4象限(出典:OKI)

OKIはこれまでにもDX戦略を掲げてきた。同社の専務執行役員 デジタル責任者の坪井正志氏は「これまでのDX戦略と新戦略の異なるポイントは3つ。1つ目はこれまでは、ソリューション事業をDX戦略の中心としてきたが、今回は全事業を対象とする。2つ目は内部でのDX事例を外部に売り出していくという戦略を含めたこと。3つ目はこれらの戦略をより分かりやすく外部に発信していくために4象限で示したということが新たな部分となる」と説明した。

  • OKIの専務執行役員 デジタル責任者の坪井正志氏

    OKIの専務執行役員 デジタル責任者の坪井正志氏

4象限のうち、「新ソリューション創出」「既存ソリューションの強化」は対外的な強化となり、「組織の変革」「業務プロセスの変革」は自社内の強化戦略となる。

今回の新戦略の目玉の1つは、坪井氏も述べたとおり「内部でのDX事例を外部に売り出していくこと」を大々的に発表したこととなるだろう。

では、それぞれ、どのような強化を行っていくのか見ていこう。

社内でのプロセスを秘密にせず、外部に出すことでビジネスにつなげる

同社では、プロジェクションアッセンブリーシステムのように、自社で生まれたDXソリューションを自動車メーカーなどに対外的に販売するといった事例が以前からもあった。

  • プロジェクションアッセンブリーシステム

    プロジェクションアッセンブリーシステム。組み立て順などを作業台に投影し、ガイドすることで、作業の効率化やミスの防止を図るシステム。OKIの生産現場で開発された同システムは、OKIの富岡工場で約200台以上が稼働しているほか、自動車メーカーなどの他社工場にも多数導入実績があるという

なぜ今、社内の事例の対外的な販売を強化していくことを発表したのだろうか。

同社の執行役員 イノベーション責任者 兼 技術責任者の藤原雄彦氏は「OKIは、国内外に多数の工場を有しており、工場では従業員をエンドユーザーとして、実際に新システムなどの検証を行い、社内のDXを進めてきた。そういったDXの成功事例がたまってきたので、今回、社外での販売を強化していくこととなった」という。

4象限で掲げたうちの1つ、モノづくり基盤の強化では、OKI自体が製造業として工場を多数持つことを強みに、社内のノウハウを蓄積、共有していくという。

例えば、同社は国内外に工場を持つが、工場間をオンラインで接続し、作業教育や工程確認のリモート化を進めていき、ポータビリティ(生産移行性)を高め、代替生産や相互補完ができる環境の構築や、工場のスマート化を進めていく計画だ。

工場のスマート化にあたっては、ロボットを単に導入するだけでなく、高度技能者とロボットが協働する仕組みを作り、AI活用で検査の効率化や自動化も進めていくという。

そして、そういったスマート工場のフラグシップとして、同社は2022年7月にAI、IoT、ロボティクスを駆使し、60億円を投資した本庄工場の新棟を稼働させる予定だ。

こうして社内に蓄積されたナレッジを共有し、社内DXの強化を図るとともに、対外的なソリューションの売り出しの礎としていく方針だという。

また、社員がDXに積極的に参加できる仕組みづくりも強化していく。経営層と社員のランチ対話や、責任者・推進者による講話「Yume Pro フォーラム」、イノベーション創出活動「Yume Pro チャレンジ」、eラーニングなどを用いたイノベーション研修といった取り組みだ。

加えて、同社は社内でイノベーションを加速させていく取り組みとして、イノベーションマネジメントプロセス(IMS)の国際標準「ISO 56002」を全社で推進していくという。

アジャイル型のISO 56002とウォーターフォール型の品質マネジメントシステム「ISO 9001」を組み合わせることで品質保証と迅速な対応を両立させていくという。

藤原氏は「アジャイル型のアプローチがイノベーションを起こすための切り札と考えている。DXが進まない企業の問題はここにあると考えている。OKIでは、コンセプトの創造や検証をアジャイルで何度もやっていき、その経過を秘密にせずに外に出していくことで、協創パートナーを増やしながらビジネスにつなげていけると考えている。その過程が内部から外部への発信ということにつながると考えている」とした。