台湾の半導体市場調査会社であるTrendForceによると、複数の米国の半導体製造装置メーカーが、SMICに対して14nmプロセス以上の成熟プロセス向け半導体製造装置、ならびに部品、顧客サービスを輸出するべく、米国政府へのライセンス申請を進めているという。

それによると、SMICへの輸出ライセンスを申請している米国装置メーカーとしては、少なくともApplied Materials(AMAT)、Lam Research、KLA、およびAxcelisが含まれるという。これが事実であれば、SMICは14nmプロセス以上の成熟したプロセスであれば、こうした米国製造装置各社からのサポートを受けることができるようになるため、ファウンドリ市場でのシェアを維持できる可能性がでてきたとTrendForceでは見ている。

  • ファウンドリシェア

    2020年ならびに2021年のファウンドリ各社のシェア (出所:TrendForce)

また、SMICが順調に稼働できれば、世界的な半導体の供給不足を少しは緩和されることが期待されるが、需要の高まりを踏まえれば、ファウンドリ業界全体の生産能力は依然として不足気味であると言えるという。さらに、米国政府は引き続き、10nm以下の微細プロセスの製造を可能とする製造装置の輸出については禁止しており、SMICの事業拡大は依然としてリスクを抱えたままであるともしている。

米国メディアはSMICへの輸出許可が停滞と報道

TrendForceとは逆に米国の一部メディアは、米国商務省のライセンス交付の手続きは停滞していると報じている。それによると、一部の装置には許可は出たものの、多くの装置に関しては、装置メーカーに追加の質問状が送付され、SMICが装置や部品、材料を購入後に、10nm以降の微差プロセスに転用できないことを担当者が見極める作業が進められており、それが難航しているためだという。

このため、米国の半導体業界関係者の一部からは、商務省がSMICへの装置輸出許可を遅らせていることが、世界的な半導体不足の一因になっているという批判がでている。これに対して商務省は、需給のひっ迫は、レガシープロセスを活用する車載半導体が中心であり、同省が問題にしている10nm以下の先端プロセス用半導体製造装置はほとんど影響していないと反論しているという。

SMICの事業の主力は40nm以上のレガシープロセス

SMICは世界で5番目の規模、割合としては4~5%のシェアを有するICファウンドリで、米国のファブレスからも生産受託している。その主力プロセスは0.18μm、55nm、40nmで、ロジックのほか、BCD、eFlash、センサ、RF、高耐圧などのデバイスも製造している。

米国商務省の禁輸措置は、SMICの生産能力と今後の微細プロセス開発の計画に影響を与えており、TrendForceでは、SMICは2021年、設備投資を前年比で25%削減すると予測している。具体的には、予算の多くを既存プロセスの能力拡充と、北京での新たな合弁工場の建設に割り振る見通しで、FinFETをはじめとする先端プロセス技術に対する投資には慎重であるという。

なお、TrendForceでは、SMICの売り上げの多くが中国内からのものであるが、主要なグローバルクライアントが、さまざまな要因を踏まえ、SMICに注文をし続けるのかどうかが今後、注視すべきポイントになると指摘している。