総合市場動向調査会社である英IHS Markitによると、2019年上半期(1~6月)の半導体売上高は前年同期比13.9%減の2037億ドルで、リーマンショックの影響を受けた2009年に記録した同26.5%減に次ぐ落ち込みとなったという。

主要な半導体サプライヤの2019年上半期業績を見ると、過去数年、場合によっては10年来の最悪のマイナス成長を記録したところが多いほか、主要な半導体製品分野でも、2009年以来の大規模ば需要低下に見舞われたとIHSは指摘している。

IHSのシニアリサーチアナリストであるRon Ellwanger氏は、「半導体サプライヤにとって2019年上半期の業績は最悪の状態と言っても誇張しすぎることはないほど悪かった。この期間に、すべての地域で、ほぼすべての製品カテゴリで、そしてほぼすべてのアプリケーション市場でマイナス成長に陥った。この結果、上位10社のチップサプライヤのうち9社、上位20社のサプライヤでみても17社が前年同期比でマイナス成長となった。ほぼあらゆる観点から、半導体市場にとって、2019年上半期は、過去10年で最悪の6か月間となったといえる」と述べている。

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    2019年上半期における半導体企業売上高ランキングトップ10 (出所:IHS Markit)

メモリ市場の大減速でトップに返り咲いたIntel

IHSの調べによる2019年上半期の半導体サプライヤトップは、2018年の同期トップのSamsung Electronicsがメモリバブルの終焉に伴い、同33.4%減の252億ドルと売上高を大きく減らした結果、通信やデータセンターで堅調な業績を達成したことで、同1.7%減の320億ドルとわずかなマイナス成長で切り抜けたIntelが返り咲いた。

3位はトップ10社中最大のマイナス成長となる同34.7%減を記録した韓SK Hynixとなったが、この値は同社にとっても過去10年でもっとも大きな下げ幅となったほか、4位のMicron Technologyも、売上高を同29.2%減とするなど、3大メモリベンダが軒並み30%前後のマイナス成長となった。この結果、2019年上半期のメモリ分野の成長率も、前年同期比36.4%減と、主要製品カテゴリにおいて、もっとも大きく、かつ2009年以来最悪の下げ幅となった。

トップ10社の中でももっとも注目すべきはNVIDAが非メモリ企業として唯一、前年同期比20.6%減と、20%を超すマイナス成長に陥った点であろう。主力のAI向けGPU製品がアクセラレータの多様化などに伴い、競争が激化したことが要因の1つと考えられる。また、同じく非メモリ企業として同10.5%減と2桁のマイナス成長を記録したQualcommは、スマートフォン(スマホ)市場の在庫が飽和状態にあり、過剰在庫となったことが要因とみられる。同社の在庫日数は2018年第2四半期比で10日ほど増加した状況だという。

すべての国・地域で2桁のマイナス成長を記録

また、日系メーカーのトップとなる東芝が日米韓コンソーシアムに売却した東芝メモリの業績は4195億ドルで、トップ10入りは果たせなかった。主要製品カテゴリ最大のマイナス成長となったメモリの中でもDRAMの同35.7%減と比べて、NANDは同29.6%減と、若干、下げ幅的には良い結果であったが、それでも3割近い下げ幅であり、その影響をもろに被った格好となった。

メモリ市場の大減速を引き起こした要因の1つが、データプロセッシング市場にあるとIHSでは見ている。同市場そのものが前年同期比21.9%減と、アプリケーション市場別における最大の下げ幅であり、それに伴い、同市場向け半導体製品売上高も前年同期比19.5%減と大きく下げており、主要最終製品であるクラウド、データセンター、エンタープライズサーバ、いずれもが市場で過剰在庫を抱える状態に陥っているとする。

また、スマホの需要が弱いことも背景にあるとしており、これらの市場で用いられるロジック、センサ、アクチュエータなどは過去10年を振り返って、もっとも下げ幅が大きかった製品分野となっているという。ちなみに売上高がプラス成長となった製品カテゴリは、オプティカルデバイスのみであるが、その増加率は1%未満であったという。

データプロセッシング市場以外のアプリケーション市場も、ワイヤレス通信が同15.6%減、家電が同14.7%減、産業用電子機器が同8.6%減、自動車が同4.4%減、有線通信が同0.3%減と軒並みマイナス成長に陥ったほか、地域的でも米州が同20%減、アジア太平洋地域が同14.4%減、日本が同13.3%減、欧州が12.6%減とすべての地域で2桁のマイナス成長となっている。「世界のすべての地域の中でも、米国がデータプロセッシングおよびワイヤレス通信市場の影響をもっとも受け、それがメモリの需要に大きな影響を及ぼした」とIHSでは説明している。

半導体市場の回復はどうなるのか?

第2四半期における半導体各社の業績に関するニュースの多くが悪いものであったが、IHSによれば、半導体市場規模そのものは、前四半期比で1%ほど伸びており、季節要因のため、と言えるものの、それでもすべてが悪い方向に進んでいないことを示す明るい兆しと言えると説明している。

なお、IHSでは、2019年第3四半期の半導体市場規模について前四半期比で6%ほど増加すると予測している。