大成建設とソフトバンクは6月5日、第5世代移動通信システム(5G)を用いて、大成建設が開発中の遠隔操作と自動制御が可能な建設機械システム「T-iROBOシリーズ」を5G環境下で稼働することに成功したと発表した。

建設機械の自動運転では、制御システムとの間で多くの情報が送受信されるため、無線通信システムの構築が必要だが、従来の無線通信システムではWi-Fiを利用するケースが多く、必要な通信速度・容量の不足や多くのアンテナを設置する必要があるなどの課題が生じていた。

そこで今回、課題を解決する方法として、ソフトバンクが開発した、局地的に電波品質の高い5Gを提供できる可搬型設備「おでかけ5G」を建設現場で初めて活用し、建設機械の実証実験を行った。

具体的には、三重県東員町の実験場において、「おでかけ5G」の可搬型5G基地局(1基)を設け、局地的な5G環境を構築するとともに、自動制御式のバックホウ(土砂掘削、積上)およびクローラーダンプ(運搬、排土)に「おでかけ5G」の送受信装置を搭載した。

実験場の現場操作室と、建設機械の操作拠点である大成建設技術センター(横浜市戸塚区)を有線ネットワーク(VPN)で接続し、現場操作室および大成建設技術センターのそれぞれから、建設機械の自動運転操作のほか、建設機械に搭載したカメラ映像の伝送状況を確認した。

  • 実証実験の概要

今回の実証実験では、「おでかけ5G」の可搬型5G基地局を用いることで、従来の無線通信システムに比べて広範囲となる、基地局から直線距離で100~200mの範囲で建設機械の稼働と映像の伝送が実現でき、より大容量の映像および制御データをスムーズに処理し、4Gに比べて映像の遅延時間が約10分の1以下と大幅に短くなったことを確認したという。

この結果、建設現場における土砂の掘削、積上、運搬、排土に至る一連の作業について、精細映像で状況を把握し、建設機械間の制御と同時に安全も監視しながら、現場作業を実施することに成功したとしている。