仏シュナイダーエレクトリックは10月16日、都内で記者会見を開き、IT事業戦略説明会を開催した。同社は9月末に香港において「Innovation Summit 2017」を開催し、新たに3つのソリューション「EcoStruxure IT」「EcoStruxure Building」「EcoStruxure Industrial Software」を発表。今回、EcoStruxure ITを軸にした日本における事業展開について説明した。

同社は「ビルディング」「インフラ」「インダストリー」「データセンター(DC)」と4つのビジネス領域に対してアプローチしており、ビルディングでは受配電機器やBMS(Building Management System)/EMS(Energy Management System)、セキュリティ、インフラでは変電設備、プロセスオートメーション、グリッドマネジメント、インダストリーでは産業用制御機器、ファクトリーオートメーション、データセンターではUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)/PDU(Power Distribution Unit:電源コンセント)、ラック/空調製品/電源製品を、それぞれ提供している。

先日の香港におけるイベントでもSchneider Electric Chairman CEOのJean-Pascal Tricoire(ジャン=パスカル・トリコワ)氏が言及していたが、今後40年のグローバルにおけるエネルギー需要は1.5倍、CO2の削減は半減、これらを実現するために3倍以上の効率性を担保しなければならない。そこで、同社ではIoTに対応したプラグアンドプレイ機能を備えるオープンアーキテクチャ「EcoStruxure」を核に事業を展開する方針を示している。

シュナイダーエレクトリック 代表取締役の松崎耕介氏は「われわれはIoTのパイオニアを自負しており、IoTの導入でITシステムが重要になりつつあるほか、DCのエネルギー消費削減などの電源管理が一層求められ、ITに対する要求が増加することでIT環境はハイブリッド化が進む。これにより、ハイブリッドITの運用効率化には従来からの可視化、インサイト、オープンがさらに必要になってくる」と指摘した。

シュナイダーエレクトリック 代表取締役の松崎耕介氏

同社では、9月末にDCIM(Data Center Infrastructure Management)向けフレームワークのEcoStruxure ITを発表。これは、クラウドとエッジ環境にまたがるハイブリッドITおよび、DC環境に特化したクラウドベースのアーキテクチャを提供する。

また、サードパーティー製品も含めたベンダーを問わないアーキテクチャとなっており、インフラ性能の最適化とリスクの軽減を実現するための実用的でリアルタイムな情報を提供することができ、重要な情報資産に関するインサイトを提供するという。

EcoStruxure ITについて松崎氏は「『EcoStruxure IT Expert』と『EcoStruxure IT Advisor』の2つで構成しており、エッジで取得したデータをExpertでコントロールし、Advisorはサイトロケーションの管理、プランニング、予測ができる。日本では2018年末に提供を開始し、ハイブリッド化していくDCに拡販していく」と、説明した。

「EcoStruxure IT」の概要

日本での事業戦略とは

IDCの調査によると、日本におけるDCマーケットのトレンドとして2016~2021年のCAGR(Compound Annual Growth Rate:年間平均成長率)は1.6%となり、超大規模DCの拡大が見込まれているほか、電力密度については高密度DCの2016~2021年のCAGRは5.7%と、低密度DC、中密度DCと比べ、拡大することが想定されている。

さらに、同社が独自調査した2016年のUPS市場規模は680億円となり、うち単相が350億円、三相が330億円、IT向けが450億円、ノンIT向けが230億円と予測しているという。

これらの調査結果から同社では、ノンITセグメントへの拡販、4月に設置したグローバルな専門組織「データセンター・リージョナルアプリケーションセンター・インターナショナル(DC RAC)」の日本向け組織「DC RAC Japan」の推進、エッジコンピューティング向けアーキテクチャへの対応を推進していく。

ノンセグメントITへの拡販については、通信機器や医療現場、駅務システム、POSレジ・周辺機器、監視カメラPoE HUBなどサーバ以外の機器への電源保護に対するニーズに応える。

ノンセグメントITへの拡販の概要

DC RAC Japanに関してはグローバルの知見を日本の顧客に提供し、顧客にDCの一元窓口を提供していく。

DC RAC Japanの推進

エッジコンピューティング向けアーキテクチャでは、ハイパーコンバージドインフラストチャ(HCI)を提供する企業の製品に対応する。すでにNutanix Readyの動作検証を終了し、認定を取得しているほか、富士通のHCI管理ソフト「ISM for Primeflex」により、シュナイダーのUPS/PDUの管理が可能になっている。そのほか「Cisco Hyperflex」「Dell EMC XCシリーズ」などのシステムとの適合性をテスト済みだという。

エッジコンピューティング向けアーキテクチャへの対応の概要

松崎氏は2020年に向けた戦略として「ここ2~3年は中小規模DCとITセグメントにフォーカスしていたが、これを継続しつつグローバルクラウドや大規模コロケーションなど大規模データセンターにフォーカスし、ハイタッチアプローチに取り組む。また、IIoT/IoT市場に対し製品拡充と他事業との協業をはじめ、ノンITセグメントに注力する」と、意気込む。

2020年に向けた戦略

さらに、同社では同年までに小型UPSシェアを1.3倍(2016年の小型UPSシェア基準)、DCマーケットシェアを2倍(2016年のシェア基準)にそれぞれ拡大し、IoT関連市場では2桁成長(2016年の売上基準)を目指す考えだ。

2020年の数値目標