ステージデモその2 - IoT@Home

2つ目は「IoT@Home」である。家庭に向けたIoTをどんな形で示すのか、というのは常に難しい課題であるのだが、ルネサスは今回ここに「IoTコンシェルジェ」というコンセプトを掲げて示した(Photo17)。今回は左半分のコンシェルジェの提供する内容の紹介である。

Photo17:IoTを使ってこの6人の仮想コンシェルジュが暮らしを守る、というストーリーだが流石にシナリオが複雑すぎ、Part 1(左半分)とPart 2(右半分)に分けて2回のステージで実演する形になったのはややマイナス要因だったか

といってもストーリーそのものは比較的シンプルである。朝、あわてて出かけようとするお父さんは、いろんなものを忘れそうになる(Photo18)。ところが忘れ物コンシェルジェが出かける際に必要なものをチェック、忘れ物があるとそれが「どこにあるか」まで教えてくれる(Photo19)ので、忘れ物をしたまま出かけずに済むという仕組みだ(Photo20)。

Photo18:余談だがこのお父さん役はお一人で3日間、30セッション近くをこなされた模様で、ご苦労様である

Photo19:出かける際に必要なもの(定期・財布・スマートフォン、傘)をお父さんが持っているか、もし持って居なければどのロケーションにあるかをチェックする。傘に関しては、事前に天気予報サービスから本日の天気予報を取得するというシナリオ

Photo20:忘れ物を知らされたお父さんが全部もって出かけたあと、忘れ物が無い事を確認するシーケンス

この後は自動施錠がなされ、留守番コンシェルジェに作業を引き継ぐと共に、最適省エネコンシェルジュにエアコンや照明を落とさせたりるといった通知を行う訳だ。余談だが、「忘れ物を知らせる」方法にはドアホンを使うシナリオなのも面白い。スマートフォンを忘れて出かけた経験がある人は少なくないだろうし、その場合でもドアホンなら確実に通知ができるからだ。

次にお父さんが帰宅する時は、留守番コンシェルジェがセンサによりお父さんが戻った事を確認し、タッチキーを浮かび上がらせる(Photo21)。部屋に入ると自動的に室内照明やエアコンをオンにするといった事が自動で行われる。これは留守番コンシェルジェが最適省エネコンシェルジェに通知する形だ(Photo22)。

Photo21:特定の人間が来ない限りタッチキーが有効にならない、という見せ方も面白い

Photo22:帰宅すると照明やエアコンが動き始めるのがわかる

シナリオとしてはこの程度で、比較的シンプルであるが、構成は結構大変である。忘れ物コンシェルジェ(Photo23)、位置検出(Photo24)、音声合成(Photo25)、入退出検出(Photo26)、電源省エネコンシェルジェ(Photo27)、インテリジェント照明(Photo28)、タッチキー(Photo29)、マイクロサーバ(Photo30)と8つものソリューションやサービスが複雑に組み合わされる形である。

Photo23:忘れ物コンシェルジェはこんな感じ。キーは、発表されたばかりのBlueToothソリューションを使った位置検出である

Photo24:その位置検出ソリューションは、基調講演でも出てきたRL78/G1Dを使ったもの。小型化することで、傘とか定期入れなどにも搭載できるというあたりがポイント

Photo25:HMIはRZ/Aシリーズを利用している。RZ/Aについては後でちょっと触れたい

Photo26:入退出管理は省電力性に優れたRL78/I1Dで構成

Photo27:電力省エネソリューションのコンポーネント。USBパワーデリバリーは今回のデモでは触れず

Photo28:インテリジェント照明ソリューションはRL78/I1AにDALIのLEDドライバを組み合わせる形

Photo29:タッチキーはRX113ベースのものとなる。今回のデモでは触れなかったが、実はテーブルにもタッチキーが仕込んであった

Photo30:Photo22で大きなスクリーンは説明用に設置されたものだが、その左脇のタブレット風のものがμサーバ。今回のIoT@Home全体の管理やHMIをまとめて担うものになる

実のところ説明時間の半分がこのソリューション/サービスの紹介に費やされてしまった(それゆえIoT@Homeはシナリオ2本立てになってしまった)のはちょっともったい無い気がするが、それだけ昨今のIoTのソリューションは複雑化している、という裏返しでもある。今のところ、これを単一のシステムでワンストップで提供できるものはなく、基本各社とも複数のデバイスを組み合わせ様々な用途に向けたソリューションを充実させる(=様々なシステム構成になる)から、やむを得ない。むしろ今の時点ではどれだけソリューションを提供できるかという数の勝負に近い事になっているから、これだけラインアップできるというのはむしろポートフォリオを充実させていることの裏返しと言っても良いのかもしれない。

2つのデモで感じたものは、これまでのルネサスよりもずっと「判りやすく提案する」事を掘り下げた事だ。これまではもう少し技術寄りというか、「これも出来ます、あれも出来ます」とやや盛り沢山だったのが同社の傾向であるが、今回はブースの展示も含めて、ピンポイントに絞ってアピールという方向が進んだ気がする。良し悪しはともかくとして、そういうあたりに「一歩先の未来」を提案するという同社の昨今の姿勢が感じられるものだった。