死者が1,000人を超えるなど、西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱だが、とうとうアフリカ以外で初めて死者が出た。エボラ出血熱が日本に上陸するかどうか、心配な人も少なくないだろう。そこで、エボラ出血熱に関する基礎知識をまとめてみた。

昨今の動きを受け、厚生労働省は8月11日、公式サイトに「エボラ出血熱に関するQ&A」というWebページを開設した。

厚生労働省「エボラ出血熱に関するQ&A」

まず、エボラ出血熱の病状から整理しておきたい。エボラ出血熱とは、エボラウイルスによる感染症で、エボラウイルスに感染すると、2日~21日(通常は7~10日)の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛等の症状を呈する。続いて、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れるという。

現在、エボラ出血熱に対するワクチンや特異的な治療法はないため、患者の症状に応じた治療(対症療法)を行うことになり、WHOによると致死率は90%に及ぶとのことだ。

次に、最も気になるエボラウイルスの感染について見てみよう。エボラウイルスは野生動物からヒトに感染し、その後、ヒトからヒトに感染していく。WHOによると、オオコウモリ科のコウモリがエボラウイルスの自然宿主であると考えられている。

具体的には、エボラウイルスに感染しているヒトの体液(血液、分泌物、吐物・排泄物)や体液に汚染された物質(注射針など)に直接触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染する。

つまり、エボラ出血熱は、咳やクシャミを介してヒトからヒトに感染するインフルエンザなどとは異なり、簡単にヒトからヒトに伝播する病気ではないため、適切な対策を講じることで予防できるという。

厚生労働省は、エボラ出血熱が日本国内で流行するかどうかについて、エボラ出血熱が、主に患者に直接接触することにより感染すること、流行地域がアフリカに限定されていることから、通常の日本人旅行者が現地で感染するリスクは非常に低いとともに、国内の医療体制や生活環境から考え合わせると、国内でエボラ出血熱が流行する可能性は、現時点では低いとしている。

エボラ出血熱の発生 資料:国立感染症研究所

エボラ出血熱発生の分布資料:国立感染症研究所

現在、エボラ出血熱の新薬の研究が進められているが、WHOは開発中の未承認の治療薬を投与について「倫理的」とする見解を発表した。今後の動向が気になるところだ。