横河電機は2月27日、細胞の塊や培養容器に貼りついた状態の細胞の画像から、個々の細胞の形態を簡単かつ高精度に定量化する共焦点定量イメージサイトメーター「CQ1」(画像1)を開発したと発表した。

画像1。共焦点定量イメージサイトメーター「CQ1」

細胞検査を初め、iPS細胞やES細胞、STAP細胞などの多能性細胞による再生医療研究、がんなどの疾患研究では、細胞の画像観察に加え、面積や形状などの形態を定量化して把握したいというニーズが高まっている。正常状態の細胞のデータと比較することで、細胞がどのような状態にあるかを簡単に判断することができるのが主な理由だ。

対象となる細胞には、培養液中の浮遊細胞、培養容器に貼りついて単層状に培養された平面培養細胞、3次元培養された細胞の塊などがある。これらを定量化するためには、これまでのところは、蛍光顕微鏡を使って目視で測定するか、細胞の形態を定量化する専用装置を利用するのが一般的だ。

それら従来の装置は、細胞の塊を1つ1つの細胞に分けたり培養容器から剥離する必要があったりすることから、データの種類や精度に限界があった。そのため研究者や検査士は、塊のまま本来の生体機能や特性を維持した状態で、形態に関する多様で高精度なデータを取得できる装置を求めていたのである。

そこで同社は、これらのニーズに応え、累計台数2200台以上という世界中の研究機関で広く使用されている共焦点スキャナユニット「CSU」を中心としたワンボックスタイプの共焦点定量イメージサイトメーターとして、「CQ1」を開発した。共焦点スキャナユニットは、通常の光学顕微鏡に取りつけて共焦点顕微鏡システムにすることができるユニットだ。

共焦点顕微鏡は、蛍光試薬などで染色した試料にレーザを照射し、励起された蛍光を観察することで、きわめてコントラストの高い鮮明な画像を、任意の焦点距離で選択的に得ることができるのが特徴である。このため、試料を切片にすることなく生きたまま断層(スライス)画像を得たり、そのスライス画像データから3次元立体像を構築したりすることが可能だ。

さらにCSUは「ニポウディスク(回転円板)」とマイクロレンズアレイを組み合わせた従来にない「マイクロレンズアレイ付きニポウディスク式共焦点光学技術」が採用されているのが特徴である。ニポウディスクには多数のピンホールが渦巻き状に配置されており、これによってマルチビームスキャンを行うことが可能だ。

さらに、このニポウディスクのピンホールに光を集中させてより明るくするために組み合わせられているのが、微小なレンズを格子状に並べたマイクロレンズアレイである。これにより、高速スキャン性能を保ったまま、光の利用効率を大幅に改善可能。この技術により、細胞を塊のまま個々の細胞の表面積、体積などの3次元形態情報や細胞の位置情報を簡単に、しかも高精度に定量化できるのである。

CQ1の特徴を改めて述べると、まず「細胞を剥離せず、形態情報を高精度に定量化」が可能な点だ。細胞の塊をバラバラにしたり、培養容器から細胞を剥離したりすることなく細胞本来の生体機能や特性を維持した状態で、高精度に定量化することができる。2次元情報である面積に加え、3次元情報である体積、表面積、細胞の個数や位置、細胞内の微小な粒子の位置、蛍光強度などの各種データを視認性よく、表・グラフ形式で表示すことが可能だ。

2点目は、生きた細胞観察機能を有している点だ。CSUについても前述の通りだが、共焦点スキャナとして、レーザ光による細胞ダメージ(光毒性)や蛍光退色を最小限に抑えながら、細胞のスライス画像を高速に得ることができる。CQ1にはCSUが搭載されているので、生きた細胞の3次元、多色観察が可能だ。研究や検査で使った細胞も破棄する必要がなく、細胞を無駄なく活用できるため、再生医療用細胞の品質管理・検査・実験に適しているとする。

3点目は、再現性の高いデータ。励起するレーザのパワーモニタ機能により、安定したレーザパワーを維持すると共に、定期的に内部校正を行い、レーザパワー以外の変動要素の影響も補正し、再現性の高いデータが取得できるようになっているとした。

そして主な市場だが、再生医療分野、医学・病理学・解剖学・生物学などの基礎研究分野、薬学、創薬研究、細胞を扱う研究・検査分野(FISH法など)やこれらに関連する分野としている。用途は、iPS/ES/STAP細胞研究、再生医療に用いられる細胞研究、創薬、疾患研究における細胞品質評価、病理切片評価などとした。

発売は2014年5月を予定しており、同社は同製品を3月4日から6日まで国立京都国際会館で開催される「日本再生医療学会総会付設展示会」に参考出品する予定とした。なお、CQ1の仕様は以下の通り。

  • 光学モード:マイクロレンズ付き広視野ニポウディスク共焦点、位相差(オプション:画像2)
  • 蛍光観察レーザ:405/488/561/640nmから2~4色選択、10穴フィルタホイール内蔵
  • 搭載カメラ:sCMOS2560x2160ピクセル、16.6mm×14.0mm (2倍対物レンズで96ウェルプレートの1ウェル全範囲をカバー)
  • 対物レンズ:最大6本 (2倍~40倍ドライのみ、位相差、長作動)
  • 培養容器:マイクロプレート(6、12、24、96、384ウェル)
  • スライドガラス、カバーガラスチャンバ、ディッシュ(35、60mm)
  • 特徴量:細胞数、細胞内顆粒数、輝度、体積、表面積、面積、周長、直径、球形度、円形度、ほか
  • データ形式:画像:16bitTIFFファイル(OME-TIFF)、表示画面をPNG形式で出力、数値:FCS形式、CSV形式
  • 本体サイズ・重量:600mm×400mm×298mm、38kg
  • ユーティリティボックスサイズ・重量:275mm×432mm×298mm、18kg

画像2。構成例 (位相差オプション付き)