宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月29日、国際宇宙ステーション(ISS)でアジア初の船長(コマンダー)を務める若田光一さんの記者会見を行った。会見で若田さんは「日本の宇宙技術に対する信頼感は非常に高まっている。科学技術立国として、技術と人材の両方の面からプレゼンス(存在感)を高めたい」と抱負を語った。

ISSで船長を務める若田光一さん

若田さんは、8月2日までつくばの「筑波宇宙センター」で訓練を行い、その後もロシア、アメリカ、ドイツなどでISSクルーとともに訓練。11月に、ロシアが保有する宇宙船「ソユーズ」を利用して出発し、ISSに半年間滞在して、後半の2カ月間をコマンダーとして指揮する予定だ。

今回の長期滞在に使用されるミッションワッペンには、若田さんが好きな「野球」のボールをイメージしたデザインを取り入れ、野球が持つ「お互いに支え合い、個を磨きながら共通の目標に向かう」というチームワークの精神を表現。それに合わせて漢字の「和」も刻むことで、コマンダーとして多くのミッションをまとめることへの期待が込められている。

そのチームワークを深めるために、「何か用意しているものはあるのか」との記者の質問に若田さんは「夕食はみんなで一緒に過ごすことで、リラックスできる場にしたい。各国のクルーから好評な日本食、例えばサバの味噌煮やカレーライスは持って行こうと思っている。食事だけではなく、休憩時間が確保できる日曜日には、日本の文化を紹介する映画もクルーに見せたい」と笑顔で答えた。

若田さんは、今回のミッションで「きぼう」やISSシステム全体の維持・保全業務を行う。また、ISSコマンダーとしての業務では、ライフサイエンスや宇宙医学の実験操作、技術開発の実証といった幅広い研究を行う。中には、若田さん自身が被験者となる「宇宙空間における筋力トレーニング」の研究や、日本とベトナムが共同で開発した10cm四方の超小型衛星の放出といったミッションも予定されている。

記者からISSコマンダーとしての意気込みを聞かれた若田さんは、「宇宙飛行士は適性テストを通して飛行資格をいつ逸してしまうか分からない。だから、毎回『これが最後』と考えてミッションに臨んできたし、今回も特別な感情はない。日米人工衛星の回収やISS長期滞在といった課題と同様に、ISSコマンダーという新たな課題を乗り越えるための活動を頑張っていく」と答えた。