FPGAベンダであるAlteraは5月14日(米国時間)、「PowerSoC」ブランドでインダクタなどを内蔵したハイエンド電源ICなどを提供するアナログ半導体ベンダEnpirionを買収することを明らかにした。デジタルであるFPGAとアナログ半導体、かみ合わないように見える2つのデバイスを組み合わせることにどういった意味があるのか、その買収の背景をAlteraに聞いた。

FPGAのようなプログラマブルデバイスにアナログ機能を機能ブロックとして搭載し、欲しいアナログ機能を実現する、といった半導体デバイスを提供している半導体ベンダはすでに存在しているが、AlteraがEnpirionの買収でそうした方向性を目指すかというと、必ずしもそういう訳ではないという。

背景には、FPGAが搭載される各種機器の高性能化、高機能化、そしてそれに伴う電源要件の複雑化があるという。半導体商社では、自社と取引のある電源ICベンダのデバイスを用いてユーザー向けにリファレンス電源回路を提供するところも出てきた。それほどまでに電源回路の設計は複雑なものになっており、FPGAを活用する機器もその例外ではない。そうした機器の開発者向けに、FPGAだけでなく、システムトータルとしての開発容易性を提供することが今回の買収の基本的な考え方だと同社は語る。そのため、FPGA内部にアナログ機能ブロックを搭載し、1チップでロジックから電源周辺の管理まで行おうという意思は今のところはないという。

では、パートナーとして協業するという道を選択することもできたはずだが、なぜ買収という方法を選んだのか。「Alteraが一貫してターンキーソリューションとして提供することが、カスタマに対する付加価値と安心感の提供につながる」ということだという。また、「ターンキーソリューションとして、電源からFPGAまでトータルで回路を提供することで、カスタマが開発するシステムに対する電源のチューニングを不要にすることが可能になり、付加価値の向上につながるコア部分の開発に注力することが可能になる」ということもその理由だという。つまり、Alteraが、これまで上述したような商社が肩代わりしてきた電源周りの評価やサポートを内包してFPGAとセットで責任を持って提供することで、カスタマは開発容易性を入手することが可能になるとする。

Enpirionが提供してきた「PowerSoC」ブランドは、Alteraが継続して提要していき、同社が提供する各種FPGAと並んで各種の電源ICが販売されることとなる。上述したように、トータルソリューションとしての提供が考えられているが、電源IC単体での販売も行って行くとする。

EnpirionのPowerSoCは、FPGAのPoint-of-Load(POL)への適用が検討されている。また、MEMS技術によるインダクタンスの内蔵、ならびにMOSFETの5MHzの高周波スイッチングにより、90%以上の効率、低ノイズ、低消費電力を実現しているほか、ディスクリートで構成した場合のレギュレータに比べ1/7、競合他社の電源モジュールと比べても1/4~1/6に小型化することが可能となっている

また、リファレンスデータやガーバデータなどの提供も予定されており、それらも含めて、設計プロセスの簡素化が可能になるとしている。具体的には(1)Alteraの電力最適化ツール・見積もりツールを実行、(2)Alteraで検証済みのPowerSoC製品を選択、(3)検証済みのFPGA電源回路図、ガーバーデータなどを活用、といった3段階の活用により、短TAT化を果たすことが可能になるという。

Alteraが検証まで行うことで、設計プロセスの簡素化が可能となり、結果として短TAT化が可能となる

なお、同社では、できる限りEnpirion買収によるシナジー効果を出していきたいとしているが、電源はカスタマの仕様によるところが大きいので、将来的にも1チップ化を行う可能性は低いとするが、PowerSoCが対応している1.2/3.3/5/12Vの入力電圧の1つだけで問題ない小型機器などの場合には、対応する可能性もあるとしている。

PowerSoCはAlteraの各種プログラマブルデバイスのブランドと並んで、今後も提供される