日本アイ・ビー・エムのサーバやNASというと、「高額」というイメージをお持ちの方も少なくないだろう。実は、中小企業でも導入しやすい安価ながら、"IBMクオリティ"を有するモデルが存在する。なかでも、コンパクトでお手頃価格なのが「IBM x3100 M4 Express NAS」だ。今回、同製品がどれだけコンパクトで、どれほどの性能を有しているのか、試用してみたのでお伝えしたい。

[前編]では、製品を箱から出して、外観(前面、背面)の詳細やフロントパネルを外した内部を紹介した。後編となる今回は、プリロードされているWindows Storage Server 2008 R2の設定を行い、ベンチマークテストを実行してみたい。

ケース内部へのアクセスもツールレスで楽チン

サイドパネルの開閉に手回しネジを採用しているx86サーバは多い。「IBM x3100 M4 Express NAS」も同様なのだが、開閉ポイントであることを示す青色を使うためか、ネジにプラスチックのカバーが取り付けられている。これが実際に使ってみると、なかなかよい。金属よりも手への当たりが柔らかく、楽に回せるのだ。

サイドパネルを開いて見ると、内部が整理されているのがわかる。ケーブル類がまとめられているのはもちろん、フロントからリアに向かってCPUを十分冷やせるようにエアダクトが取り付けられているのだ。サイドパネルを開いただけではエアダクトがあるために中身はほとんど見えないが、このダクトはネジ止めされているわけではなく、簡単に取り外せる。

この先のパーツ着脱にはドライバーが必要になる部分もあるが、通常ユーザー自身がそこまで触ることはないだろう。マザーボードが見渡せる状況を作ることができれば十分だ。ポイントは、ここまでツールレスで開けられるのはもちろん、各作業にほとんど力を要さないことだ。これなら女性でも、年配者でも使いこなせるだろう。

手回しネジに取り付けられたプラスチックのおかげでわかりやすく回しやすい

黒いエアダクトも簡単に取り外せる

ケース内部は非常にすっきりしている

「診断LED」があるから故障個所の特定が一目でOK

ユーザーがマザーボードを露出させた状態にするのは、不具合が出た時だ。問題があるとケースフロントの警告ランプが点灯するから、電源を落とした後でケースを開ければよい。もちろん、この先のパーツ交換などまでユーザーがやる必要はない。やらなければならないのは「光探し」だ。

実は、「IBM x3100 M4 Express NAS」では基板上の各所にLEDが埋め込まれている。通常時はわかりづらいが、メモリスロット横などは見やすい。この小さな四角が、トラブルが発生したら光る。つまり、ユーザーは光っている個所を探すことで、トラブルが発生している場所を特定できるのだ。

ハードウェアに詳しくなくて、光っている部分が何なのかわからない時も心配する必要はない。サイドパネル内側には説明書が貼り付けられているので、必要に応じて確認してみよう。マニュアルもあるのだが、普段の利用範囲ならばこの説明書で十分だろう。トラブルが出た時にマニュアルを慌てて探す必要がないのはありがたい。

マザーボード上には各パーツに対応するLEDが埋め込まれている

サイドパネル内側の簡易マニュアルがあれば普段は困らないはず

Windows Storage Server 2008 R2もプリロードで簡単

電源を投入した後の簡単さもうれしい。「IBM x3100 M4 Express NAS」はOSとしてWindows Storage Server 2008 R2がプリロードされているため、ユーザー自身でOSのインストールを行う必要がない。電源投入後、まずは言語選択を行い、あとはウィザードに従って初期設定を行うだけだ。

パスワードを設定してログインしなおすと、初期構成タスクが表示される。この時点で仮に内容がわからなくとも、このウィンドウを閉じてしまえば、デスクトップはおなじみのWindowsだから安心して設定できるはずだ。この後、ネットワークの設定やHDDの追加、ボリュームのプロビジョニングなどを行うわけだが、これもある程度PCが使える人なら画面を見ながら進められてしまう。

もちろん、詳細なマニュアルもある。画面ショットを添えた丁寧なマニュアルを追って行けば作業は完了するから、ユーザーが気にしなければいけないのは普段使っているワークグループ名くらいだろう。その設定が終われば、すぐに利用できるようになる。

ウィザードに従って作業すると、標準構成タスクまですぐにたどりつける

ボリュームのプロビジョニングなどの初期設定を終えれば利用を開始できる

ベンチマークで快速ぶりを実感

「IBM x3100 M4 Express NAS」はPentium G850と4GBのメモリを搭載している。このNASの実力がどれほどのものなのか、ネットワーク内のクライアントPCから「IBM x3100 M4 Express NAS」に作った共有フォルダをネットワークドライブとしてマウントし、ファイル転送速度を計測するベンチマークテストを実施してみた。

クライアントPCはCPUにAMD Phenom II X4 820を採用し、12GBのメモリを搭載したモデルで、OSはWindows 7 Professional 64bit版をインストールしている。ネットワーク環境は1000BASE-Tだ。ファイルは比較的軽い100MBのものと、1GBのものを用意。CrystalDiskMark 3.0.1で計測した結果、かなりよい結果が出た。以下の値は、それぞれ3回実施したうちの中央値のものだ。

実際に使っていても速い。特に100MBの転送では、ネットワーク越しの作業という感覚を感じないだ。一般的なビジネスでは大容量ファイルよりも、低容量ファイルを大量に扱うことが多いだろう。この軽快さなら、快適に利用できるはずだ。

サイズが100MBのファイルを転送した時のベンチマークテスト」の結果

サイズが1GBのファイルを転送した時のベンチマークテスト」の結果

IBMの技術がしっかり詰まったコンパクトNAS

前編でも紹介したように、「IBM x3100 M4 Express NAS」は非常に小さく、安価だ。1TBのHDDを2本搭載し、RAID 1が構築済みで実効容量1TBという手頃なNASが、IBMダイレクト価格で18万9,000円。電源の冗長化には対応しないものの、HDDは最大12TBまで搭載できる。

先に述べたように、本体には故障部がLEDで確認できる「診断LED」が搭載されているが、このほかに障害を予知する「PFA機能」も備えている。壊れる前に察知する、不具合が出た時にどこが悪いのかを迅速に特定するこの機能は、IBMがすべてのサーバに搭載している機能だ。これに24時間×365日の保守サービスを組み合わせたり、自動監視ツール「IBMエレクトロニック・サービス・エージェント」を利用したりすることで、IT部門を持たない中小企業でも快適に使い続けることが可能だ。

上位モデルに限定されがちなスナップショットによるファイル復元や分散ファイル・システム・レプリケーションといった機能も搭載している。つまり、安価ではあるがIBMが上位モデルに対して提供しているサービスをそのまま受けられる、とてもお得なモデルなのだ。

「エンタープライズNASなんて高そう」「IBMのマシンは高機能かもしれないが高額に違いない」という思い込みは捨て、ぜひ活用してみてほしい。