セイコーインスツル(SII)は7月23日、受光素子としてフォトダイオード(PD)や発光ダイオード(LED)などの光発電素子と組み合わせて消費電力ゼロ(nW:ナノワット級)の明暗検知スイッチを可能とするゼロパワー光検出IC「S-5470」シリーズを発表した。

同製品は、受光素子としてPDやLEDといった光発電素子を組み合わせ、明暗検知や遮光検知を行うもの。PDやLEDは光を当てると発電する性質があり、この光発電特性をセンシングに利用した。しかし、これらが光を受けた時の発電量は小さいため、従来の方法で検出するにはIC内に増幅回路を組み込む必要があり、常時電流を消費していた。今回、独自の極低消費電力のCMOS技術により、増幅回路なしで検出を可能としながら、消費電流は電源電圧5.5V時に0.1nA(Typ.)、消費電力は1nW(Typ.)以下と事実上のゼロパワーを実現した。これを応用することにより、1個の光発電素子を用いた明暗検知スイッチだけでなく、2個の光発電素子を用いた照度差による遮光検知スイッチなどを応用することで、各種電子機器の待機電力ゼロ化が可能となる。

アプリケーションとしては、明暗を検知して電源を自動的に切るオートパワーオフ機能、周囲が暗くなると自動点灯するオートライト機能、受光素子に手をかざして影を作るだけでオン/オフする非接触スイッチなどが想定できるとしている。具体的には、手を添えると動作するワイヤレスマウス、ケースの取り外しでオン/オフが可能なスマートフォン、夜間の時計の鳴り止め、梱包箱を開けると自動でオンになる機器などが考えられる。

また、家庭で使用されている電子機器の消費電力の6~10%程度が待機電力であると言われている。リモコンで電源をオフした状態のテレビやエアコンは、リモコン信号を受信する回路が常に動作しているため、数mWの待機電力を消費する。AC/DCアダプタを内蔵する電子機器では、電子機器の電源がオフ状態でも、AC/DCアダプタで数mW以上の待機電力を消費している。電池で駆動する携帯機器も同様で、待機電力は環境問題、省エネルギーの視点からも課題となっている。今後、SIIでは各種電子機器メーカーへ提案を進め、待機電力削減に寄与していきたいと考えているとコメントしている。

なお、動作電圧範囲は0.9V~5.5V、乾電池1本の低電圧(0.9V)から5.5Vの高電圧まで広範囲の電圧で動作する。パッケージは2.9mm×2.8mm×1.3mmのSOT-23-5。価格は200円。同社では、2013年度で年間500万個の販売を目標としている。

ゼロパワー光検出IC「S-5470」シリーズ