IEEE802.15.4/ZigBee RF4CEソリューションを提供するGreenPeak Technologies。同社Founder&CEOのCees Links氏は、RF4CEは従来のZigBeeのような産業分野でのメッシュネットワークではなく、そのターゲットは家庭の中にあるという。今回、同氏に同社がRF4CEでどういった分野を狙っているのか、などの話を聞いたので、その様子をお伝えしたい。

GreenPeak TechnologiesのFounder&CEOのCees Links氏

現在、家庭で用いられているリモコンの基本概念は30年以上昔に作られて以降、大きな変化はない。そのため、伝送距離や速度、方向、そしてリモコンと機器との双方向通信といった次世代家電などで求められる性能を達成できず、代替として無線の活用に期待されている。

家庭内で使用できる無線規格といえば、無線LANが現在、一般的だがリモコン利用では無線LANほどのデータ転送量は不要だし、そこにかかる電力消費も馬鹿にならない。また、Bluetoothも対応機器が着実に増えつつあるが、障害物が間に入るとリンクが切れたりするし、Bluetooth Low Energy(BLE)が規定されたと言っても、それでもやはり電力の消費量はリモコンとして考えれば多い。

「我々は家庭内の機器すべてをメンテナンスフリーにしたい。そうした意味では数パケット程度の通信で済む家電機器はかなり多く、リモコンだけでも照明、テレビ、エアコンなどなど多岐にわたる。また、スマートホームの実用化が期待される将来、人感センサや温度センサ、ドアセンサなどいたるところにセンサが配置されることが予想されるが、そうしたセンサの電力消費量は抑えたいと住む人は思うはずだ」(同)とのことで、同社のRF4CEチップはボタン電池(CR2032)1個で1日500回のデータ送信を行っても10年以上の寿命を実現することができる低消費電力をうたっている。

GreenPeakのZigBee RF4CEチップを搭載したリモコン。2×2のMIMO技術を採用しており、リモコンをどの方向に向けても、通信が損なわれない工夫が施されている

現在同社が提供しているチップは3種類

また、競合他社のRF4CEチップと比べて1000倍以上の受信性能となる+30dBを実現しているほか、RF4CEプロトコルも16KBと小さく、チップに搭載するにしても1~2カ月程度ででき、かつリモコンの場合のトータルのBOMコストも2ドル未満に抑えることができるという。

すでに一部のテレビでは同社製ZigBee RF4CEチップを搭載したリモコンをセットで販売しており、今後、STBでも搭載する準備を進めているという。こうした状況で鍵を握るのは日本だと同氏は語る。「日本は無線技術で先行している。ZigBee RF4CEもパナソニック、Philips Electronics、Samsung Electronics、ソニーのファウンダ4社により設立されたRF4CEコンソーシアムが元になっている。そうした意味では日本の家電とスマートフォン、タブレットなどがRF4CEで連携し、スマートフォンやタブレット上のアプリからTVのコントロールなどもできるようになる」というのが同氏の見解だ。

また、同社はZigBee RF4CEチップの提供は行っているが、このほか、エネルギーハーべスティングによる電池レスでの無線が可能な"ZigBee GreenPower"、および従来のZigBeeが対象としていた産業機器などによるメッシュネットワーク向け"ZigBee SE2.0(IPv6)"向けのチップの開発を進めているとするほか、「無線LANとBluetoothはPCやスマートフォン上で競合しないで共存している。BLEとANTは競合しようとしているが、BLEとRF4CEは適用されるレイヤが異なっていると私は思っている。そのためBLEとZigBee RF4CEを1チップ化した製品なども検討している」と、他の無線規格との統合チップの開発も示唆する。

IEEE 802.15.4規格をベースにして「ZigBee GreenPeak」「ZigBee RF4CE」「ZigBee SE2.0(IPv6)」の3種類のラインアップを最終的に提供する計画(左)。中央と右はエネルギーハーベスティングへの応用で、電池が入っていないスイッチの押したときのエネルギーで電球のオン/オフを行うデモ

なお、同社ではZigBee RF4CEが対象とする市場を600億ドルと見積もっている。「ZigBee RF4CEが本格的に家庭に入り始める2013年にはその市場規模が見えてくる。将来的には一軒あたり、50個のセンサが用いられると言われており、世界規模で考えれば世帯数は膨大な数におよぶ。我々としては、そうしたセンサ同士のやり取りなどで求められるシンプルかつ低速度、シンプルな無線通信は、無線LANによる音声、データなどの送信よりも数としては圧倒的に多く、そうしたコンシューマ、ホームオートメーションを最初のターゲットとして行き、その後、ビルオートメーションやFA、農業などへの進出を狙っている。最終的には自動車や輸送分野といった分野まで領域を広げられればベストだ」と、その市場規模の背景と、適用アプリケーションを考えており、日本のカスタマに対しても、「リモコン1つ取っても、単なる独立したものに見えるかもしれないが、我々の技術を用いることで、それらがつながりネットワークとして成り立つようになる。そうしたことに興味を持ってくれる企業と一緒に新しい市場を作って行きたいと思っている」と新たな市場を生み出す協力体制を築いていければとしている。

家庭内におけるZigBee RF4CEの適用アプリケーション例

同社が考えるZigBeeの適用アプリケーションのロードマップ