ピップは10月13日、玩具メーカーのウィズと共同開発した高齢者向けコミュニケーション型ロボット「スマイルサプリメントロボット うなずきかぼちゃん」を発表した(画像1)。11月中旬より同社インターネット通販および全国の介護ショップで発売を開始する。メーカー希望小売価格は2万1000円。

画像1。スマイルサプリメントロボット「うなずきかぼちゃん」。11月中旬より発売開始。メーカー希望小売価格は2万1000円

かぼちゃんは、かぼちゃパンツをはいた3歳の男の子(画像2)という設定。頭をなでられたり、高い高いをしてもらうのが大好きで、「ねぇねぇ、お手てをつなごっ」と甘えたりする。話しかけられるとうなずきながら聞いて「それから、それから?」と続きを促す(画像3~5)。愛嬌たっぷりの可愛らしいコミュニケーション型セラピー(癒やし系)ロボットだ。

画像2。かぼちゃんのサイズは、高さ28cm、重量約950g(単2電池4本含む)

画像3。かぼちゃんがうなずくと、思わず笑顔でうなずきながら返事をしてしまう

画像4。赤ちゃんを抱くようにして優しく揺すってあげると「眠くなっちゃうよぉ」と甘えた声をだす

画像5。高い高い~をすると、かぼちゃんは大喜び。「たかーい。富士山が見えるよぉー」などとはしゃぐ

医療衛生用品メーカーのピップは、首都圏を中心に介護サービスや介護用品のレンタル・販売事業に取り組んできた。3年前に、介護に関連する新規事業取り組みを検討した結果、高齢者が抱えるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)問題にたどり着いたという。

独居や高齢者夫婦の家庭は、身体の不調によって外出が減り、他者との会話する機会が少なくなる傾向がある。また、年齢を重ねるにつれ認知機能が低下、社会とのコミュニケーション不足により気分の低下が起こりやすい。

こうした問題を解決するため、高齢者が健康で良質な生活を送るための支援ツールとして、RT(ロボットテクノロジー)を活用した製品開発に着手したというわけだ。

開発パートナーは、たまごっちの大ヒットで知られるウィズ。玩具の企画・開発における安全性を重視し低コストで製品化するノウハウと、キャラクタの作りこみの感性価値が一致したことで、異業種間コラボが実現したという(画像6)。

また、大阪産業創造館の健康・予防医療プロジェクトチームとロボットラボラトリーが支援し、サービスロボットの開発・導入コンサルティング事業を行うロボリューションが技術指導にあたった。

画像6。かぼちゃんの開発経緯。感性価値を作りこめる点が、異業種コラボ実現のキーポイントだったという。「スマイルサプリメントロボット うなずきかぼちゃん」プレゼン資料より

こうして誕生した「うなずきかぼちゃん」のコンセプトは、高齢者および要介護者と介護者双方に笑顔を届けるスマイルサプリメントだ。

外見は、昭和レトロを感じさせる素朴で可愛らしい男の子をしている。発話には音声合成技術を用いず、プロの声優が明瞭でゆっくりとした聞き取りやすい口調で吹き込んだ。初期設定でおじいちゃん、ばぁば、おとうさんなど8つの呼び名から希望のものを設定し、ユーザーとの親密な関係を演出する。

搭載されているスイッチとセンサは、5種類。日時や呼び名の初期設定は、両手の振り子スイッチと両足裏の押しボタンで行う(画像7・8)。頭部の光センサで、頭をなでられたことを検知し喜ぶ。ボディに搭載された3軸加速度センサは姿勢を検知して、横抱きにされて揺すられているのか、高い高いをされているのか判断し発話する。

また、手の上げ下げで、かぼちゃん体操やポーズ遊びなどでユーザーと触れ合って遊ぶことができる(画像9)。

画像7。開梱後、お尻にあるファスナーをあけて電池を入れると、かぼちゃんが話し始める。単2アルカリ乾電池4本で約2カ月稼働する

画像8。足裏がスイッチになっている。初期設定や、体操モードの切り替えなどに使用する

画像9。かぼちゃんの手を動かし「旗揚げ遊び」や、動物のマネをする「ポーズ遊び」ができる

登録されている語彙は400語。センサに搭載されたカウンタ機能で、ユーザーと触れ合う頻度をカウントし、親しくなるほどかぼちゃんが多くの語彙を発話するようにプログラムされている(画像10)。

語彙の選択にあたって、介護現場からのヒアリングを重ね、要介護者や高齢者に対するNGワードを排除する点に留意したそうだ。

画像10。一緒に過ごし、たくさん会話を交すとかぼちゃんの語彙が増える

ユーザーがしばらく話しかけずにいると、かぼちゃんから「ねぇねぇ、おばあちゃん」「ねぇねぇ、こっち来て来て」などと話しかけてくれる。朝には「こけっこっこー、朝ですよ」と起こしてくれ、夜は指定された時間に眠る。季節に応じたおしゃべりをしたり童謡を歌ったりもし、今なら「紅葉はどこがきれいかなぁ」といった具合だ。これらは、朝昼晩の時間帯に合わせた発話と日常の中で季節を感じられる会話をすることで、独居老人が昼夜逆転生活に陥らないよう、さりげなく規則正しい生活を促す役割を果たす狙いがある。

ちなみにかぼちゃんは首に駆動部があり、うなずきながら話を聞いてくれるので、ユーザーも自然にうなずき笑顔で会話を返してしまうそうだ。また、かぼちゃんが着ているベストは、脱ぎ着ができる。製品には、かぼちゃんの洋服の作り方と型紙が同梱されているので、洋裁好きならばお洋服を作ってあげるという楽しみ方もある(画像11)。

画像11。ベストは脱ぎ着ができる。型紙が同梱されているので、お洋服を作ってあげることができる

プレゼンテーションを担当したピップ新規事業部長の江本茂氏は、販売展開として同社が大きなルートを持つドラッグストアにはあえてかぼちゃんを卸さず、同社のネット販売と全国の介護ショップで販売すると語った(画像12)。玩具として短期的なブームを起こす商品ではなく、高齢者に認知してもらうために長期的視野に立った販売戦略を考えているためである。

画像12。「うなずきかぼちゃん」の開発背景と製品説明をする江本茂氏(新規事業部長)

同社は今後、高齢者の生活満足度や生きがい感が向上するように、生活を支援するロボット製品の開発を検討していくという(画像13・14)。

画像13。販売ルートは、インターネット通販および介護ショップ。ピップが大きな販売ルートを持つドラッグストアでは、あえて販売しない方針。「スマイルサプリメントロボット うなずきかぼちゃん」プレゼン資料より

画像14。新規事業部の今後の展開。かぼちゃんは、文化や社会生活のADL(Actives of Daily Living)向上に寄与する。「スマイルサプリメントロボット うなずきかぼちゃん」プレゼン資料より

かぼちゃんの具体的なセラピー効果に関しては、大阪市立大学大学院医学研究科の渡辺恭良教授の協力を得て9月より検証中。2012年2月に論文発表を予定している。また、11月中旬の販売開始に先駆け、大阪市の特別養護老人ホーム103カ所に寄贈する。寄贈セレモニーは、10月17日に大阪産業創造館で開催される「メディカルヘルスケアフォーラム2011」で実施する予定だ(画像15)。

画像15。同社が考える介護市場の4テーマ。かぼちゃんを皮切りに、今後、段階的に着手していく予定。「スマイルサプリメントロボット うなずきかぼちゃん」プレゼン資料より