米HPは9月8日、アジア・パシフィック地域のプレス向けイベント「INNOVATION IMPACT HP」を上海で開催。その中で、企業向けソリューションとして、「HP FutureSmart」、「HP OXP(Open Extensibility Platform)」という2つのソリューションを説明し、今後はプリンタマネージメントにとどまらず、企業のワークフローの改善にも取り組んでいくことを表明した。

HP FutureSmartは、新しいファームウェア技術のこと。これまで、ファームウェアは機器固有のソフトウェアと考えが方が主流で、ファームウェアの更新は機器ごとに行う必要があったが、HP FutureSmartでは、1つのファームウェアですべての機器に対応するユニーバーサルファームウェアという考え方を採る。そのため、ハードウェアに依存しない機能であるワークフローやセキュリティの強化などの新機能を、新たな機器を購入することなく、ファームウェアをアップデートすることで提供できる。

また、スキャン機能を持つ複合機においては、スキャンした画像のプレビューや編集、順序変更、削除、追加、ページ回転のほか、カラー印刷の可否、USBメモリの使用の可否など、ユーザーやグループごとにセキュリティ設定も行える。そのほか、一連の定型業務を「Quick Sets」に登録し、ワークフローの手順のすべてを自動化することも可能。

スキャン画像の編集

ファームウェアの配布については、「HP Web Jetadmin」というツールを利用すれば、1つの操作で、ネットワーク上の機器のファームウェアを一括で更新することが可能だという。

一方HP OXPは、サーバベースの共通プラットフォームで、デバイスに依存しないソリューション開発をサポートする。このプラットフォームを利用してソリューションを開発すれば、HP OXPに対応した機器であれば、1つのソリューションですべての機器に対応でき、一貫性のある操作性を担保できる。

HPではこのプラットフォームにより、HP製のプリンタや複合機の機能拡張を実現するソリューションをパートナーに数多く開発してもらい、HP製品の付加価値を高めていこうという狙いがある。

1つのソリューションで複数の機器に対応

HP FutureSmartとHP OXPでパートナービジネスを促進

ワークフローの改善も行い、コスト削減を最大化

また、イベントでは、プリンタのマネージメントに留まらず、今後は業務ワークフローの改善にまで踏み込み、企業のコスト削減を最大化していくという方針も示された。その背景には、企業コストの大部分をワークフローが占める点があるという。

HPによれば、印刷コストに内訳は、10%がプリンタなどハードウェアに関するもの、15%が機器のマネージメントに関する部分、残りの75%が業務ワークフローに関するものだという。つまり、企業コストを大きく削減するためには、ワークフローの改善まで踏み込む必要があるというわけだ。

印刷コストの内訳と顧客ニーズ

米HP シニア バイスプレジデントBruce Dahlgren氏

米HP シニア バイスプレジデントでManaged Enterprise Solutionsを担当するBruce Dahlgren氏は、コスト削減には4つのプロセスがあると語った。最初は、プリンタや複合機、コピー機などの出力機のコストを可視化すること。次に、これらデバイスを統合し、最適化すること。そして、3つ目がネットワークツールなど管理ツールを活用し、効率的な管理を実現すること。そして最後が、企業の業務ワークフローを自動化し、最適化することだという。同氏は、ほとんどのエンタープライズのワークフローは、8~10ステップで構成されているが、これらを最適化によって半分程度まで削減できるとした。

そして、これらの作業の中核になるのがMPS(HP Managed Print Services)だ。MPSは、プリンティング環境に関するコストを、生産性を向上させながら削減するために各種分析・提案を行うコンサルティングソリューション。Bruce Dahlgren氏は、MPSが成長の原動力だと述べた。

HPはwebOSからの撤退、パソコン事業売却の検討を発表するなど、よりエンタープライズ向けのソリューション事業にシフトしていく姿勢がうかがえるが、Imaging and Printing Group(IPG)でも、そういった流れがあるようだ。Bruce Dahlgren氏は、オートノミーの買収は、よりワークフローに注力するためだとも述べ、来年後半には、SAS製品と連携したソリューションを提供する予定があることを明らかにした。今後1~2年は、HPの変化に注目していく必要がありそうだ。