富士通研究所は6月6日、GaN HEMTを用いてC帯、X帯、Ku帯(C~Ku帯)の3帯域である6~18GHzの帯域で、10Wの出力を有する送受信モジュールの開発に成功したことを発表した。2010年に開発した世界最高クラスの性能を有する送信増幅器と、新開発の受信増幅器を搭載したことで、小型かつ高出力の送受信モジュールを実現したという。

広帯域の多機能レーダーを実現するために必須となる送受信モジュールには、複数の周波数で動作する広帯域特性と、広いエリアをカバーするための高出力特性が求められている。C~Ku帯のような広帯域で10Wクラスの高出力の送受信モジュールを実現するためには、広帯域の送信増幅器と受信増幅器を利用するほか、高出力であればあるほど発熱する送受信モジュールの放熱性を向上することも必要となるほか、送受信モジュールでは高い周波数において信号を入出力する端子部分で損失が大きくなるため、18GHzまでの広帯域を確保するために入出力端子での損失を低減することも必要となっていた。

GaN HEMT送受信モジュールの写真と構成

今回、富士通研究所が開発したGaN HEMTモジュールでは、高出力化に伴う発熱を効率よく逃がすヒートシンク埋め込み構造を開発、多層セラミックス基板を送受信モジュール内に作り込むことで、放熱性を従来に比べ5倍に向上させ、10Wクラスの出力を扱うことを可能とした。

また、入出力端子の高周波での損失を低減する広帯域端子構造を考案。同端子構造は、モジュールに入出力される高周波の信号を、従来に比べ3倍の周波数40GHzまで伝送可能だという。

さらに、2010年に開発した世界最高クラスの出力を実現するGaN HEMTを用いた送信増幅器に加え、新たにGaN HEMTを用いた受信増幅器を開発。受信増幅器は2.7mm×1.2mmと小型で、3~20GHzで信号増幅率16dB、雑音指数2.3~3.7dBの世界最高クラスの性能を達成したという。

GaN HEMT送受信モジュール写真と断面摸式図

これらの技術による送受信モジュールを用いることで、12mm×30mmと小型ながら、6~18GHzの広帯域で出力10Wを実現することに成功した。これにより、単一の送受信モジュールで複数の周波数を使用することが可能となり、周波数を使い分けるレーダーや広帯域通信などのシステム統合が進み、機器の小型・軽量化が可能となると同社では説明しており、今後は広帯域にわたり、高出力で小型化が要求されるワイヤレス機器やレーダーなどに幅広く適用していく計画としている。

なお、同成果の詳細は6月5日から米国ボルチモアで開催されるマイクロ波の国際学会「IEEE MTT 2011 International Microwave Symposium(IMS2011)」にて発表される予定となっている。