Wi-Fi Alliance(WFA)は5月16日、都内で「Wi-Fi Alliance メディアブリーフィング 2011」を開き、2011年3月に発表した「Wi-Fi CERTIFIED Hotspot Program」に関する説明をWi-Fi AllianceのMarketing DirectorであるKelly Davis-Felner氏が行った。

Wi-Fi AllianceのMarketing DirectorであるKelly Davis-Felner氏

同プログラムは、サービスプロバイダのWi-Fiホットスポットへの接続をより手軽に実現しようというもので、Kelly氏は、同プログラムについて「あらゆる関係者を通じ、パブリックアクセスWi-Fiに革命を起こすプログラム」とそれがエンドユーザーやデバイスメーカーにも接続容易性の確保や開発コストの低減などのメリットがある表現する。

現在、WFAに参加する企業は400社を超えており、日本にも74社を超すメンバー企業と2カ所の認定テストラボがある。グローバルでWi-Fi認証を取得したICは2011年の1年間で10億個を超える見込みであり、その半数はスマートフォンやタブレット、コンシューマ機器である。特にスマートフォンは2010年9月から12月までで前年同期比34%の成長を見せており、Googleのレポートでは、日本からのモバイル広告サーバリクエストのトラフィックは1199%の成長率としている。

日本からも74社を超す企業がアライアンスのメンバーとして参加。Wi-Fi認証機器は、今後も携帯機器やコンシューマ機器も含めて増加していくことが見込まれる

また、3GやLTEの発展により携帯電話網が圧迫され、そのトラフィック分散の意味でもWi-Fiへのアクセスが期待されることとなり、その中核となるのがホットスポットとなる。

携帯電話網におけるデータ通信量の増大を補完する意味も含めて、Wi-Fiの活用が進むと見られる

同プログラムの主な要素としては、「ネットワークの発見と選択」、「合理化されたネットワークアクセス」、「迅速なアカウントプロビジョン」、「WPA2セキュリティ」の4つ。「ネットワークの発見と選択」は、Wi-Fi認証機器が自動的にネットワークを発見し、ユーザーの趣向や通信事業者のポリシー、ネットワーク最適化などに基づいて自動選択を行おうというもの。また、「合理化されたネットワークアクセス」は、デバイスに携帯電話のSIMカードのようなID認識メカニズムを搭載することで、ネットワークへのアクセスを自動承認しようというもので、これによりユーザーのネットワークへの設定などの関与を最小限にできるとする。

Wi-Fi CERTIFIED Hotspot Programにより、サービスプロバイダ、エンドユーザー、そして機器メーカーすべてにメリットをもたらすことが可能となる

さらに、「迅速なアカウントプロビジョン」は、ネットワークへのアクセス時の新規ユーザーアカウント作成プロセスの合理化により、ユーザーによる処理が不要になるとともに、異なるベンダ間で共通のプロビジョン手法を実装することも可能という。そして暗号化技術である「WPA2セキュリティ」については、無線伝送されるデータを最新世代のセキュリティ技術を用いることで、よりセキュアな通信が可能となるとしている。

ちなみに現在の同プログラムの状況は、「業界全体を通じてソリューションのあるべき全体像に合意し、WFAが技術仕様を定義する段階にある」とする。今後、WFAが相互運用性を検証するテストプランを策定し、最終的には2012年中頃に認定テストがリリースされる予定となっている。

Wi-Fi CERTIFIED Hotspot Programは、現在WFAにて技術仕様を定義している段階。2012年中頃に認定テストがリリースされる予定となっている

また、こうしたプログラムを進めるにあたり、その基盤となっているのが「Wi-Fi CERTIFIED」のプログラムとなっている。これにより、半導体ベンダやモジュールベンダによる差を考えることなく、サービスプロバイダやユーザーは複数のベンダから提供される機器を接続することが可能となることから、「Wi-Fiの技術が進展するにつれて、(相互接続を保証する)こうしたプログラムの重要性は増してくる」(同)とする。

IEEE 802.11nの認証を受けた日本企業は2011年5月時点で303。主にコンシューマ向けで活用されている。機器同士をアクセスポイントなしでダイレクトにつなげる「Wi-Fi Direct」デバイスについても、すでにグローバルで80を超す機器が認定されており、その大半がディスプレイ、携帯電話、無線LANモジュールとなっており、2012年にかけてその適用機器の数は増加していく見込みとなっている。

Wi-Fi機器同士をアクセスポイントなどを介さずにダイレクトに接続することができるWi-Fi Direct認証機器の種類

このほかWFAでは「Wi-Fi Display」の仕様策定を進めている。2012年の初期にリリースする予定のプログラムで、これにより映像や音声を無線LAN上に乗せて、安全にWi-Fi機器同士でやりとりすることが可能となるという。また、5GHzの超高スループット(VHT)の実現に向けた仕様策定も進められている。11nの補足プログラムで、通常のWi-Fi範囲内で最大1Gbpsを実現し、IEEE802.11acに対応し、2012年下半期にリリースされる予定。そして、60GHz帯のWi-Fi対応仕様の開発も進められている。これは、これまでの通常のWi-Fi技術と異なり、屋内用だが、最大7Gbpsの送信レートを実現できるもので、非圧縮HDビデオストリーミングなどの活用に威力を発揮するとしており、IEEE802.11adに対応し、こちらも2012年下半期にリリース予定としている。

このほか、リリース時期は未定としながらもスマートグリッド向けプログラムとして、「Wi-Fi CERTIFIED Smart Energy Profile(SEP)2.0」の仕様策定を進めており、「今回の"Wi-Fi CERTIFIED Hotspot Program"の策定も含めてWi-Fiの適用分野が広がりが見えてきている。今後もWi-Fiの適用分野は拡大を続けるはずであり、我々としてもそうした活用シーンが増えるよう、より一層の使いやすさを目指した取り組みをすすめていく」(同)と、今後のWi-Fi機器のさらなる活用に向けた取り組みを参加企業全体で行っていくことを強調した。